息子が経験した病気 | どしゃ降りの雨の日に

どしゃ降りの雨の日に

朝からどしゃ降りの雨が降っている。
今日は外に出る用事がなくてよかった。
移動手段は原付スクーター。
どしゃ降りの中をずぶ濡れになりながら風を切って走る。
できれば避けたいことだけれど、そんなに気分の悪いことでもない。

5歳の冬、息子が40度近い熱を出した。
毎年誰かが風邪をひく。いつものことだと思っていた。
かかりつけ医で受診をし、風邪の薬を処方してもらい、いつもの通りこれで終わりと思っていた。
次の日、薬の効き目はみられない。今回は厄介な風邪みたいだな。
オレはそう思っていたが、母親は何か異変を感じたらしく、ちょっとおかしいから病院に行くという。
とりあえずかかりつけ医に母親が状態を訴えて診てもらったところ、肺炎の可能性があるということで総合病院を受診した。
息子はフラフラでレントゲンも立ってできない。
ずっと抱っこで移動しているので、オレの腕もいい加減パンパンだ。
結局、肺に若干影があり肺炎が疑われるということでそのまま入院となった。
詳しい検査は翌日行うとのことだった。
今まで親から離れたことがない子だ。病院のベッドでおとなしく眠れるのだろうか。
少し感情が激し目な子だから、親を恋しがって叫んだりするのではないか。
そんなことを思いながら、眠れぬ夜を過ごした。
翌朝一番で病院に行った。早く息子に顔を見せてやらないと。
息子は大きなベッドにちょこんと置かれたように眠っていた。
まだ具合が悪いようだが、ひとまずは眠れたのならよかったと安堵した。
すぐに医師に呼ばれ、病状の説明を聞いた。

血液に異常があり、この病院では対応ができません。大学病院に転院してもらいます。
救急車を手配しますので、すぐに支度してください。

肺炎であれば1週間ぐらいの入院か。かわいそうに。できるだけそばにいてやろう。
朝はそんな風に思いながら家を出た。
1週間入院させるだけでも気が気ではないのに、この病院で対応できない?
息子に何が起きている?

ちょうど連休中で、大学病院でもすぐに詳しい検査ができなかった。
ただ、白血球数が非常に少ないので、保護隔離のため個室への入院となった。
連休明け、詳しい検査の結果が医師から告げられた。

血球貪食症候群という病気だと思われます。
今は極度の貧血状態で、骨髄内にも造血細胞がほとんどありません。
肺の炎症もひどく、肝臓の状態も悪くなっています。
進行が早く、全身の状態が急激に悪くなっています。
既に治療を始めていますが、抑えるのが大変難しい病気です。
最悪の場合、数日から1週間程度で死亡する可能性があります。
難しい病気ですが、とにかく、病院を挙げて診ていきます。

 

これはドラマかなんかの話か?

息子が1週間でいなくなる?
こんなことが自分たちの身に降りかかるとはとても信じられない。


それから大変な毎日が続き、最終的には慢性活動性EBウイルス感染症と診断され、
何年もこの病気と闘うことになるが、息子は勝つことができた。
病院スタッフには本当に感謝している。
息子の発病当初は周りが全て敵に見えるような精神状態にもなった。
病院からみればモンスターペアレンツだったかもしれない。
そういうオレたちの状態も理解して、病院は対応してくれていたのだと思う。

さて、MDSは息子の場合ほど急激に進行しない。
今のオレの状態だって、息子の時なら「回復したねー」と喜んでいる数値だ。
それでも異常は異常。息子の時同様、造血機能を回復させる決定的な治療はない。

息子は血球貪食症候群、父親は骨髄異形成症候群。
そんな親子、やっぱり珍しいんだろうな。