西澤保彦の『夢は枯野をかけめぐる』、初めて読む作家です。

 50歳を前にして早期退職をした主人公は、独身で両親も亡い。昔の同級生の女性や、近所の一人暮らしの老人とかかわりながら、身近な人々の抱える事件や謎を解いていく、というお話。

 一人の暮らしがしっくりと身に付いた主人公の日常が、老いという崖っぷちの手前にあることを常に意識している、人生とは何ぞやというような大袈裟な表現ではないけれど、謎解きよりは人間の老いや死についての寂寥感が主題に近い気がしました。体力だけでなく「暮らすこと」への気力の衰え、ごみを捨てない老夫婦の話がリアル。自分の母親にも当てはまる気がします。

 芭蕉の句を題名にしたのは、人の一生は死に向かう旅だというメセージなのでしょうか。もっとお気楽なミステリー短編集だと思ったのになぁ・・・(´_`。)