【登場人物】


【原作】裸足の大将 放浪日記 第1話 設定資料
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【おはなし】


以下の続き。


【原作】裸足の大将 放浪日記 第1話 その8
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◇ 旅館「東野」の男用の露天風呂。


出番を待つさやか。やがて、東野の人たちがしんみりしてくる。


さやか 「いよいよ、出番ね。」


合田番頭 「なあ、さやか。


いまさら、こんなことを言うのも何なんやが。


今日の撮影、やっぱり中止にせえへんか。」


さやか 「今さら何を言うの。」


合田番頭 「冷静に考えてみたら、こんなことで客を呼ぼうなんて、間違ってるんやないか。


俺たち、こんなことをしなくても、コツコツやってったらええんやないやろうか。」


さやか 「もういいのよ。番頭さん。


これからしばらくの間、私があのカメラマンの人たちに囲まれて、あれこれ撮影されて、


あのケダモノのような3人に、嘗め回されるように見つめられて、


『よう、よう、姐ちゃん。いい体、してるじゃねえか。』


『よっ、大統領。待ってました。』


『ヒューッ、ヒューッ、もっと見せろよ。』


なんて、情欲にまみれた下品な言葉を吐きかけられて、


場末の温泉芸者みたいな恥ずかしいポーズをさせられれば済むことなんだわ。」




◇ 旅館「東野」の男用の露天風呂。


服部以下、三名。


服部 「それにしても、撮影が始まらねえな。」


とん吉 「なんでも、カメラの調子が悪いらしいっスよ。」


服部 「まあ、何でもいいけどよう、もうさっさと帰りたいぜ。


おりゃあよう、こんな水着撮影会なんて、何の興味もねえんだよ。


いい歳して、自分の娘と変わらねえ小娘の水着姿見て喜ぶわけねえじゃねえかよ。


それより、家族団らんで鍋でも囲んで、『水戸黄門』でも見ながら、熱燗でキュっと一杯、やりてえじゃねえかよ。」


とん吉 「アニキ、そりゃあ、俺だって、おんなじですよ。


俺だって、あんなガキに何の興味もねえし、さっさと帰りてえですよ。」


服部 「しかし、まあ、これも仕事だしよう。


ところでなぁ。さっきの絵里の話に戻るんだがよう。」


とん吉 「はあ。」


服部 「実はよう、今日、アイツの誕生日なんだよな。


でな、先週、かみさんにさりげなく欲しいものを聞きだしてもらってよう。


午前中に街まで行って、買ってきたんだよ。


なんでも、なんとかってとこのドレスが欲しいなんて言ってやがるらしいからよう、


俺もよく分からねえんだが、街まで行ってきてよう、


店員のお姉さんに聞いてだなあ、なんとか、それらしいのを買ってきたんだよ。


だからよう、こんな仕事、さっさと済まして、帰りてえんだよな。」


とん吉 「いつもながら、アニキは娘想いなんですね。」



◇ 旅館「東野」の男用の露天風呂。


再び、東野の人たち。


合田番頭 「やっぱり、あかんわ。


今日の撮影会は中止や。


俺が今から服部に掛け合って、話をつけてくるわ。」


さやか 「番頭さん。」


合田番頭 「俺はなあ、この旅館にやってきて、最初はただの修行のつもりやったんやが、


親方の人柄に惚れ込み、さやかや他の従業員たちと一緒に働くうちに、


いつか、この旅館に骨をうずめたいと思うようになったんや。


それを、このぐらいの経営危機で簡単に尻尾を巻いてしまうなんて。どうかしてたわ。


このぐらいのこと、命がけで頑張れば、なんてことないやないか。


なあ、さやか。もう一度、やり直そう。


みんなでがんばって、この旅館を立てなおすんや。


俺はこの旅館のためにも、親方のためにも、


そして、お前のためにも、もう一度頑張りたいんや。」


さやか 「番頭さん・・・。」


目が潤むさやか。



そのとき、ひとりの中年男性がこの温泉に駆け込んでくる。


男はいかつい顔をしており、ライトグレーのダブルのスーツに派手な柄のネクタイをしている。


浜津 「ちょっと、お客さん、困りますよ。


今、関係者以外立ち入り禁止なんですから。」


男 「いいのよ、どいてちょうだい。」


それから男は周りを見渡し、服部を見つけると、駆け込んでいく。


男 「服部さん、探したわよ。ようやく見つけたわ。」


服部がその男に気がついて、驚く。


服部 「おお、あなたは。どうしてここに。」



(以下に続く)


【原作】裸足の大将 放浪日記 第1話 その10
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