【登場人物】


【原作】裸足の大将 放浪日記 第1話 設定資料
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【おはなし】


以下の続き。


【原作】裸足の大将 放浪日記 第1話 その1
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◇ ある昼過ぎの旅館従業員室。


さやかが昼食のために戻ってくる。


他の従業員たちが食事をしている。


浜津 「それにしても、あの鷹司ってお客さん、かっこいいですよね。」


森川 「そうだな。背も高いしな。お嬢さんも熱を上げるわけだ。」


通りがかりに二人の会話を立ち聞きして、気に留めるさやか。


さやか 「あら。そんなことないわよ。


あの方が腰を痛めてらっしゃるって仰るから、お世話をさせていただいているだけよ。」


森川 「またまたぁ。じゃあ、俺も今度腰を痛めちゃおうかなあ。ははは。」


さやか 「もう。森川さんたら。」


浜津 「それにしても、鷹司って珍しい名前ですね。初めて聞きましたよ。」


森川 「確かに、あまり聞かない名前だよなぁ。」


小松 「なんだぁ。てめえら、鷹司家も知らねえのかよ。


鷹司家っつうたら、近衛家とか、九条家なんかと並ぶ、五摂家のひとつじゃねえか。」


森川 「五摂家! つまり、公家の出ってことですか。」


小松 「おおよ。その公家の中でも、五本の指に入る、由緒ある家柄ってわけだぁ。」


森川 「さすがは小松の親分さん。よくご存知だ。」


小松 「当たり前じゃねえか、おだてんなよ。ワハハハ。」


冷静に側耳を立てるさやか。


さやか 『鷹司家? 五摂家の一つ? 由緒ある家柄?


それもまた悪くない。』


天を見つめ、目が輝くさやか。


(これ以降、さやかがさらに旬に親切にするようになる。)


小松 「しかしまあ、家柄がいいからって、大金持ちとも限らねえがよ。没落貴族っつうこともあるしよぉ。」




◇ さやかが旬のお供をして庭を散策している。


すっかり仲のよさそうな雰囲気。



それを遠くから番頭さんが苦々しげに眺めている。


トラジ 「お似合いのふたりなんだなー。」


合田番頭 「何やってやがんだ、てめえは。仕事しろ、仕事。」


トラジ 「へい。」




◇ この頃、さやかが旅館で、子供たちと遊んだり、老人に親切にしたり、トラジの手伝いをしているところを、旬が遠くから見ているシーンもいくつか挿入される。




◇ その数日後、ふたたび、旅館の前に、服部たちがやってくる。


追い返そうとする東野主人。


東野主人 「てめえら、何しにきやがった。二度と来るなって言っただろ。この旅館は絶対に売るつもりはねぇからな。」


服部 「まー、そうカッカしないでくださいよぉ。ねえ。 (手を揉む服部)


今日はその件で来たんじゃないんですからねぇ。


(イヨッ) 今日はね、みなさんにとってもいい話があったもんですからなあ。わざわざこうしてやって来たんですぞぉ。」


頷く手下たち。


合田番頭 「誰がそんな話、信じるかい。」


服部 「まあ、東野さん、少しばかり、話に付き合っちゃもらえませんかね。


この件はね、みなさんだけでなく、この鬼根川温泉郷で働く人たち全員にとって、ありがたーいお話なんですぞぉ。」


東野主人 「また、黒岩の野郎の差し金だな。」


服部 「察しのいいことですなあ。それなら話は早いでしょ。


私はねえ、先生からいただいたお話を伝えに来てるだけなんですよ。


私のことはともかくとしても。 あの先生のことは、邪険にされないほうがあなた方のぉ、 後々のぉ、 たぁーめ(為)。


なんじゃないですかねぇ。」


手もみしていた両手を打つ服部。


東野主人 「またつまらねえ話だったら、ぶっ飛ばすからな。」


首で「来いっ」と合図する東野主人。


そのあとをついていこうとする合田番頭たち。


東野主人 「てめえらは外で待ってろ。」




◇ その後、東野主人の部屋で話しこむ、東野主人と服部の一味。


部屋の外で、合田番頭、さやか、トラジが側耳を立てている。


ややあって東野主人の怒鳴り声が響く。


あわてて、服部一味が飛び出してくる。


服部 「おお、怖い怖い。


今日の東野さんは一段と恐ろしいですなぁ。迫力が違いますぞぉ。」


東野主人 「黒岩に伝えろ。ふざけんなってなぁ。」


こぶしを振りかざす東野主人。


服部 「まあまあ、民主的に行きましょうよ、民主的に。


暴力はいけません。暴力はいけないんだなぁ。いけませんぞぉ。


まあ、とりあえず、さっきの件ですがね。先生にお答えする前に、今晩、じっくり考えてみちゃくれませんかね。


先生への回答はそれからってことにしておきましょうよ。


何度もいいますがね、私ゃあ、地元の名士であらせられる黒岩先生から頼まれたことをあんたがたに伝えてるだけなんですからねえ。


まあ、よろしく頼みますよ、ひとつ。」


東野主人 「けえれ。」


服部 「(手下たちに真剣な表情で) 今日の仕事はこれでしめぇ(仕舞い)だ。おぅ、行くぞ。」


手下たち 「へい。」


肩で風を切って去っていく服部たち。


不安そうに見守る従業員たち。


東野主人 「おう、合田。厨房の塩、全部、ぶちまけとけ。」


合田番頭 「へえ。」



(以下に続く)


【原作】裸足の大将 放浪日記 第1話 その3
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