その6 からの続き)


それからあっという間に三学期が終わり、僕たちは小学校を卒業した。卒業といっても、ほとんどの生徒はそのまま同じ町内の中学校に通うわけだから、校舎が移るだけの話で、それほど淋しい気持ちもなく、お互いにふざけあったりしていた。藤本ともふざけて遊んで、いつものように手を振って別れた。


四月になり、初めて地元の中学に登校した。その初日は、一旦、小学校に集合し、小学校の先生の引率でそのまま中学校まで歩いて行くことになっていた。


しかし、なぜか、その集合の中に藤本の姿がなかった。彼以外にも、中学受験に成功した者や、以前から親が地元の中学を嫌がっていると伝えられていた生徒の姿もなかった。平均的な者たちだけが大勢残っていた。


僕は中学まで歩いていく途中、誰かに話しかけた。


「藤本、知らんか。」


「お前こそ、知らんのか。」


「いや。」


「お前が知らんのなら、わしらも知らんわ。」


「ほうか。」


それから、中学に入ると、僕たちは、入り口の立て札に張り出されたクラス表を見て、自分が何組になったのかを確かめた。その際、何となく気になって、藤本の名前を探してみたが、見つけることができなかった。それから、教室に入る前に、先月まで小学校で同じクラスだった者同士で集まって、お互いに何組になったかを確かめ合った。その際にも、もう一度、僕は同じことを聞いてみた。


「藤本の名前がなかったんじゃけど。」


「おお、あいつだけ、なかったのう。」


すると誰かが言った。


「ほいじゃあ、今日の帰り、あいつのうちに行ってみようで。」



その8 に続く)