ウメハラ To live is to game

限界は自分が勝手に決めていることを知った
どんな状況でも諦めなければ必ず道はある
僕をゲームに駆り立てるものは自分へのチャレンジ
次の限界



格闘ゲーマーならば、或いは少しゲームに詳しい者ならば知らない者はいない「梅原大吾」という生きる伝説の男。

ウメハラ伝説は枚挙に暇がないですが……

排水の逆転劇
http://www.youtube.com/watch?v=LhF6WCfUn4k
本編でも紹介されたこの伝説の一戦は、ゲーマーならばシステムなど解らなくても魂でその熱さが伝わる筈です。


そのウメハラの小中学生時代を描き、性格を形成する原体験や、深遠なる格闘ゲームの魔力・熱狂に身を投じるに至るプロセスを描いて行く漫画です。

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90年代、まだゲームセンターがアングラな雰囲気に包まれていた頃。
そんな場所でプレイするゲーム、ましてや筐体を突き合わせての対戦格闘ゲームには、100円を投入する時に特別な昂揚があったものです。
「ストII」のエピソードを中心として、その魔的な魅力やゲーセンに通うようになる切っ掛けも存分に描かれて行きます。

帯の押切蓮介先生の『ハイスコアガール』と同じく、あの時代のワクワクを思い出させてくれる作品です。


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「ガイルの中足を見てから狩ることのできるザンギエフ使いがいる」
都市伝説だと一笑に付したそのプレイヤーは、しかし実在。
中学生のウメハラに大きな衝撃を与えると共に、「俺にもできるはず」という対抗心を燃やす切っ掛けとなるのでした。
その後、5時間位ぶっ続けで家庭用で友人に付き合わせて練習したエピソードが流石です。
当時はまだメモリーできるプラクティスモードとかなかったなーとか、でもそういえばスーファミにもコマンドを記憶させられるコントローラーがあって持ってたなーとか。

私もギルティギアの対戦を8時間くらいぶっ続けでやって全然飽きない事はありましたが、ただ一つの動作のプラクティスをそれだけ続けられるかといったらかなり疑問です。

友人間では圧倒的に強くて、しかしゲーセンに行ったらボコボコにされて、その対戦相手はそのゲーセンの主だろうと思ったら他の人にボコボコにされていて、更にその人も他の人にボコボコにされていて、自分がヒエラルキーの最下層だと否応無く自覚させられる……
そんな、一格ゲープレイヤーとして非常に共感できるエピソードが数多くあります。


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そして出会うことになる、足立区のビッキーズでストII全キャラクターでの連勝記録を持つ男・飾太刀。
実在のプレイヤー、太刀川さんがモデルとなっておりますね。
容姿的にはかなり脚色されていますが(笑)
漫画なので、盛り上げるためにそれも良いと思います。


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梅原大吾の姉、通称アネハラも、作画の西出先生の「姉押し」によって非常に可愛らしく描かれております。
このお姉さんが、日本国憲法前文を一瞬で暗記し、暗唱してみせたというエピソードも実話なのでしょうかね。
ビーストの姉たるもの、やはり只者ではないという事ですか。
それが、「圧倒的才能に対し圧倒的努力で対向する」原体験となっているのも面白いです。
そして、何かを強要したりせず自ら見つけた道を追及しろ、というお父さんも好い人ですね。


一応、一巻完結形式にはなっていますが、最後に出て来た曲者揃いのプレイヤー達の物語も是非とも見たいので、続きを嘱望します。

漫画として見ると、ドキュメンタリーの色合いが強くやや淡々とし過ぎている嫌いはありますが、ゲームを愛する者ならば読んでおくと良いでしょう。
又、ゲームなど普段全然やらない人でも、一つの世界の頂点に立ち、ギネスにまで載った男の伝記として、その普遍性を持つ名言などを楽しめるものと思います。

ああ、ゲーセンに行って100円を入れたい(笑)


70点。