ミスミソウ 1~3 押切蓮介


良い具合に尖り尽している作品ですね。
残酷・グロ描写や陰鬱な話が苦手な人は回避した方が良いです。
逆に、ドロドロした人間模様や人体破壊が好きな人にはお勧め。

絵は人によっては酷評するレベルでしょうが、
狂気的な表情についてはよく描けていると思います。目が良い。

残虐な行為それ自体は突発的な部分もありますが、
それを可能にする残虐性、そこに人間が至るにはそれなりの過程があります。
その過程を、人物毎に多寡はあれどミスミソウはしっかり描いている。
故に理不尽さは感じず、寧ろ結末までの物語的必然性・論理は整然としている。
人間は環境次第でこうなると、リアリティを持って実感させられます。

作中に一瞬だけ登場するキャロル・キングのCDが、良い味を出してますね。
ミスミソウは、キャロルのアルバム「Tapestory」の如き人間の感情のつづれおり。

狂ってるか否かの二分ではなく、その両方を、そしてそれ以外の
混沌とした無限を孕みつつ成立しているのが人間だと思います。
いうなれば正常に狂っている人間を真摯に描いている、と。

ただ、ミスミソウは悲劇ではなく、惨劇であり復讐劇。陰惨な展開や
復讐のカタルシス、場違いな美しさ等を楽しめば良いのですが、
味付けとして使われている人間の感情の機微をこれだけ描けるなら、
押切先生は真の意味での悲劇も描けそうだなーと思いました。


しかし、カバー裏がまた……。