昨夜、訃報があった。
 
 
タレントのryuchell(元りゅうちぇる)さんが
亡くなったというニュースだった。
 
 
「まさか!」と思った。
 
そして同時に「遅かったか!」とも思った。
 
ryuchellは、いつもSNSで前向きな発言を書くが
先日、Twitterで「耐えよう」と発言していた。
 
珍しいことだった。
 
 
ryuchellに興味の無い人は知らないかもしれないが
ryuchellはめちゃくちゃ誹謗中傷されていた。
 
彼女のSNSのすべてに鍵がかかっている(非公開になっていて承認されないとみられない)理由は
 
その「誹謗中傷」があまりにひどかったためだった。
 
それは、ryuchell本人を守ると同時に
ryuchellファンを守るためでもあった。
 
 
 
先に書いておくと
私はryuchellのファンだ。
(というか老婆心で一方的に応援している)
 
SNSのフォローはもちろん
イベントなどにも顔を出し、彼女の言葉を聴いていた。
 
相互フォローではなかったけど
何度かインスタにメッセもしていた。
 
 
「わたしはryuchellさんと同じ既婚者(子供はいません)で
女として、妻として、頑張って生きようと思っているけど
やっぱり辛いこともある。
男として生きられたらどんなに素敵か
こんなことは、ryuchellさんにしか相談できない」
 
 
そんなメッセージを送ると、翌日
「がんばろう」みたいな(あきらかに私宛てのレスではないけれど)
ryuchellの可愛い写真がアップされ
 
わたしは「ryuchellだって頑張ってるんだから、わたしも頑張ろう」という
気持ちになれたのだ。
 
 
 
一度、SNSで
「りゅうちぇるのファンで…」と書いたら
炎上したことがあった。
 
 
 
知らない女たちから激しく非難されたからだ。
それ以来、怖くて二度と「ryuchellのファン」とはSNSで書けなくなった。
 
 
その誹謗中傷というのが
 
「結婚して、子ども作っといて、自分は性転換したいから離婚してくださいって

虫がよすぎる。きっと、あなたもそうなのでしょうね、旦那さんがかわいそう。

そんなに生きるのがしんどかったら死んだら?」みたいな。

 

 

え?ここまでいう?

 

っていうくらい恐ろしいレスがあった。

 

 

会ったこともない人間に、よく「死ね」と言えるなと

 

私は驚いた。

 

 

 

 

 

ryuchellさんが、この女たちに、何をしたというのだろう?

 

 

きっとこの言葉を吐いた女性は

 

子育てを頑張っている主婦なんだろう。

ryuchellのような、子どもの世話を奥さんに任せて

ひとりで自由にやっている男性を許せないんだろう。

 

でも、ryuchellには関係ない。

 

そりゃ、子育ては大変だ。

 

女一人に任せて、夫が好きな事をしているのは「ふざけんな」だし

結婚した男性が突然「女になる!」と言って、「私は本当は男が好きだったの

パパにはなれない、離婚して!子供は一緒に育てよう!新しい〝パートナー〟っていう形で!」

 
等と言ったら
普通の女性ならブチぎれるかもしれない。
 
でもさ?
 
関係なくない?他人じゃん。
 
百歩譲って、そのディス女が
ぺこちゃんのファンだったとしよう。
 
ryuchellはぺこちゃん大事にしてたぜ?
リンク(息子)くんも、同じように大事にしてた。
 
「一家の大黒柱」なんて言葉、ryuchellには似合わないから使わないけど
 
ryuchellとぺこちゃんは
同じプロダクション事務所だったし
 (ryuchellが事務所の所長で、所属タレントはryuchellとぺこちゃんだけ。つまり二人の為だけのプロダクション)


わたしたち他人が思うより、彼らはちゃんと
「パートナー」としてやってたと思うわ。
 
 
 
今回、ryuchellが命を絶ったという報道があって
 
それでもSNSではryuchell叩きが止まらない。
 
本当、どうなってんだろう?
 
そんなにダメなのかね?
 
 
 
 
 
 
私はさ、元々新宿二丁目で水商売やってたし
20代のころは性転換のことしか考えてなかったし
あのころはナベプロ(ワタナベエンターテイメント)の養成所に通いながら
なんとしてでもテレビ業界に進出して芸で生計立ててやる!と思っていた。
役者やタレントとしては無理だったけど、
紙芝居で少しずつTVに出だした頃だった。
 
だから…なんというか、少しは、よ…?
セクシャルマイノリティと芸能界のことは
少しは理解しているつもりなんだよ。
 

りゅうちぇる がデビューしたとき、二丁目界隈では
「あの子、バイセクのクエスチョニングよねー」ってみんな言ってたし
 (クエスチョニング=性別をあえて決めていない人、決めかねている人のこと)


ぺこちゃんと結婚するって言ったときは
「あら、そうなの!?女の子と結婚するのね…大丈夫かしら…」と心配していた。
 
結婚してしまうと

もう、「男性」であり「異性愛者」とされてしまうからだ。

バイセクシャルであり、セクシュアリティに迷いを生じている人にとって「結婚」ほど荷の重たいものは無い。(経験談)

 
じゃあ、なぜりゅうちぇるが
その道を選んだのか。

もちろん、ぺこちゃんが、結婚したかったからだろうし、りゅうちぇるもぺこちゃんを愛していたからだと思う。



勿論、芸能界としても
そっちのほうが使いやすかったわけだ。
 
 

当時の芸能界は(今もあんま変わんないけど)
the男社会+腫物を嫌う
 
という習慣があって
 
「LGBT」のなかでも「バイ」と「オカマ」は商品として使えるけど
「ガチ目のゲイ」と「レズビアン」「オナベ(今でいうFTM)」、あと「ガチ目のMTF」は
「使えない」し、扱いに困ると
 
はっきり言われていた。
 
 
私の話になるけれど
 
私は28歳で紙芝居屋としてデビューし
毎日、各テレビ局から出演オファーが来ていた。
 
「若くて可愛い女流紙芝居屋」の特集を組みたい
 
ということだった。
 
可愛いかどうかは置いておいて
私は「女流」という文字が気に食わなかった。
 
 
23歳から男性ホルモン治療をしているし
その当時もバリバリ身体は男性ホルモンに満たされていたからだ。
(生理は無かった)
 
テレビ局のプロデューサーさんに「実は、僕はオナベなんです。
今は、わけあって、女性の姿をしていますが、中身は男です。
女流って書かないでください。」
 
プロデューサーもディレクターも皆、いいひとで
「理解はしました。」と言ってくれるけど
 
「でも、今のテレビ業界では難しい」と
必ず言われる。
 
 
 
 
 
ryuchellについても、そうだったんだと思う。
 
 
彼女(りゅうちぇる)がデビュー当時、「中性的」キャラで「僕はオカマじゃない、ただ可愛いものがすきな男の子です」と自己紹介したのは
 
完全にテレビ局側の都合であり、戦略であろう。
 
 
氷川きよし(現kiina)もそうだけど
 
芸能界というところはそうなんだ。
 
 
 
だから、
 
ryuchellが変わったんじゃない。
 
時代が、まだ少し、早かったから
 
自分が嘘を演じなくちゃいけなかったんだ。と私は思う。
 
 
人間、その日の体調によっても
思考が変わるから
 
これ!と決めつけるのは良くない。
 
だけど、ryuchellの場合は
結婚して、子どもも生まれ
「父親として、しっかりやらなきゃ」という
 
追い込まれた状況に立って
 
初めて「ごめんなさい、やっぱり、違うんだ!」って言えたんだろう。
 
 
ものすごい勇気のいることだ。
 
 
ryuchellは、考える人だ。
 
真面目で、とても思慮深い。
 
 
 
だから、今回
 
自ら命を絶ってしまったことが
 
私は悔しくてならない。
 
 
 
 
もう少し、フォローができなかったのかと
 
 
悔しくて悔しくてたまらない。
 
 
 
 
「シン・デレラ」の世界なんて
 
まだまだずっと、未来の話なんだろう。
 
 
 
 
 
 
ryuchell、ニライカナイで 幸せになってね
 
 
 
 
 
 
 

 
ryuchellのInstagram.
最後の投稿。
 
 
 
 
 
 
とら