ちょっと早いけどハロウィンネタのユリエスを。
pixivにもUP中。非常に長くなった・・・。
「とりっく・おあ・とりーと!」
小さな子たちが目をキラキラと輝かせて、小さな可愛らしい手を目の前に出してくる。
その上に一つ一つお菓子をのせていく。
「はい、ハッピーハロウィン、です!」
「やったー!ありがとう、お姉ちゃん!」
子どもたちは大喜びであっという間に駆けて行った。違う場所へお菓子を貰いに行ったのだろう。
必死に走るその小さな子たちの後ろ姿を私は微笑ましく思って後ろ姿が見えなくなるまでずっと見ていた。
~お菓子は多めにご用意を~
今日はハロウィンで家の近くの子ども達はワーワーキャーキャーと嬉しそうに声をあげて家の近くを走り回り、楽しそうに家々を回っている。
私はお菓子を子ども達に配る役で魔女の仮装をしていた。
と、いっても帽子とマントをつけているだけなんですけど・・・そ、そこは気にしないでおきましょう!
この服装に比べて子ども達の仮装は可愛かったり、カッコ良かったり、オシャレだったりと驚きの連続だ。
全ての子ども達にお菓子を配り終え、私はぐっ、と伸びをした。
配る時の小さなお菓子の山は跡形もなく消えていた。
残っているのはたった一つ、チョコマシュマロだけ。
残り一つだから、食べても大丈夫ですよね?
思うが早いや、私はそのマシュマロを手にとりコロリ、と口の中へ入れる。
「やっぱり、チョコマシュマロ美味しいですっ」
マシュマロを咀嚼しながら私はそう呟いて微笑んだ。
チョコレートとマシュマロがけっこう好きな私にとってこのお菓子は私を幸せにしてくれるものの一つだ。
マシュマロをこくり、と飲み込んだ直後、聞き慣れた声が玄関に響く。
「終わったか?」
「あ、ユーリ!お帰りなさい」
「ただいまほら、見ろよ。あんなにあったのにもう空っぽだ」
彼-----ユーリはふわり、と仮装用のマントをはためかせ、少し残念そうに何も入っていないカゴを軽く振った。
ちなみにユーリは今までどこで何をしていたかと言うと、ドラキュラの仮装(と、いっても彼もマント等の簡単な仮装である)をして子ども達にお菓子を配っていたのだ。
それでも、彼の仮装は私と違って凄く似合っててちょっと羨ましい。
「ユーリの事ですから、『オマケな』って言って二つずつ渡してたんじゃないですか?」
「・・・へぇ、鋭いな。何でわかったんだよ?」
「長い時間、一緒に住んでいたら何となくわかったんです」
ユーリは近所の子ども達に好かれていた良く一緒に遊んでいる。そんな彼だから、優しい彼だからそんな優しい事をしているように感じた。
「優しいです、ユーリ」
「そんな事ないって」
そういいつつも彼が少し嬉しそうにしているのはきっと気のせいじゃないだろう。
「あ、ユーリ。トリック・オア・トリート、です!」
先ほども言ったが、今日はハロウィン。
折角なのでこの言葉をユーリに言ってみる。
「あー・・・今、俺お菓子持ってねーわ」
「やったです!ユーリに悪戯できます!」
いつもは優しいのだけれど、ときどき彼は意地悪になる。
いつも意地悪されてばかりの私にとってこの悪戯は少しラッキーだと思った。
「さぁ、エステルさんは俺にいったい何をしてくるのかな?」
これから悪戯されると言うのに、ユーリは楽しそうだ。口元には笑みさえ浮かべている。
-----これは、余裕の時の表情だ。
絶対にユーリがあっとするような事、してみせます!
心の中で宣言し、私はとたとた、とユーリの前までやってくると、ぴたりと止まった。
そして、小さく首を傾げているユーリの横にさっ、と立つと彼のわき腹辺りに手を置いて・・・くすぐった。
けれども・・・散々くすぐったのにユーリは全然笑わなくて。
私は思い切り笑ってしまうのに彼は少しビックリしたような顔で少しの間だけ固まっていた。
「悪戯、失敗しちゃいました・・・」
シュン、とした私の頭にポスン、と何かが落ちてきた。それが彼の手である時が付いた時には私の頭はくしゃくしゃと彼の手で撫でられていた。
「いや、驚いたぜ?くすぐられるとは思ってなかったからな、あんまり俺にはきかないけどな」
驚いたら成功じゃねぇの?と、笑いながら、彼は自分の腕に私を閉じ込めた。
「じゃあ俺も。トリック・オア・トリート」
!! さっき一個残ってたあれで最後だったため、私の手元にもお菓子は一つも残っていない。
私は、さっき自分の行いを少し悔んだ。
「わ、わたしも持ってないです・・・さっき残りの一つ食べちゃいました・・・」
「へぇ、じゃあ俺もエステルに悪戯していいんだな?」
にやり、と笑う彼はやっぱり意地悪な顔だった。
「何をするんですか?」
彼の事だから痛い事や怖い事はしてこないだろう。
けれども彼が何をしてくるのかが全く思いつかない。
「よし、これにするか」
どうやら思い付いたらしい。
「ああ、先に言っておく。もし嫌だったら俺を軽く叩け。いいな?」
「え、あ、はい。いったい何を・・・」
頷き、理由を聞こうとしたが、それは叶わなかった。
唇を唇でふさがれたから。
「っ・・」
いつもなら優しくキスしてくれるのだが、ここまで深いキスは初めてだった。
息が苦しくなってくる。
でも、口はふさがれている。
合図したくても頭が言う事を聞いてくれない。
「っぁ・・・」
口の中で私の舌と彼の舌が絡まりあう。
-----・・・しばらく遊ばれてから私の唇はようやく解放された。
「・・・驚いたか?」
「っはぁ・・・はい、それにとても恥ずかしかったです」
すっかり息が上がってしまった私は答えるのに少しだけ遅れた。
顔がかなり熱い。恥ずかしくてかなり赤くなっているようだ。
「悪ぃな。俺が言うのもなんだが平気か?悪戯にしちゃ、度が過ぎたか?」
ユーリはポフポフと頭を軽く叩かれるように撫でてくれる。
「いえ、今のでユーリが私の事を大切にしてくれている事が分かった気がします」
「・・・っはは、言ってくれるね。今ので嫌われるかと思ってたんだが、俺は幸せもんだな」
今度は優しく鼻の頭にキスを落としてくれる。
「お前、すごく甘かったぜ」
「さっき、チョコマシュマロを食べたからです」
「いや、そういう意味でもあるけど、それだけじゃないかもしれないな」
「?」
この時はその『甘い』の意味が分からなかったけど、後に身をもって知ることになるのはまた別のお話。
Happy Halloween!
-お菓子の用意は忘れずに!-