『男たちの顔は、皆、「履歴書」』~男たちの40年~ | fadoおじさんのblog~明日の君に~

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子ども達の未来を共に考える、小さな個別指導の学習塾の先生fadoおじさんのblogです。

 『昔は町内にお稽古所という処が、一件か二件はありまして・・・ま、これは、唄を教える、踊りを教える、三味線を教える。ま、いろいろありますが、

 中には、人のやらない物を教えてみようなんと云うお師匠さんが居まして、

こういう処にはまた、のんきな連中が来たってエますが・・・

 

 A:おーい、ちょいと付き合ってくんねんかい。

 B:何だい?

 A:イヤーお稽古なんだけどもネー

 B:お稽古?よせよーオイ。お稽古ってぇツラじゃないヨーお前は。

 エー、前に随分と 色んなものやったことあったヨ。

 だけど、何一つものにならねえじゃネエか。 こんだー何やろうってんだヨ。

 A:イヤさ、町内の新道ん所に空き家があったろ。

   こねえだっから大工が入って、トンカントンカン普請してんだヨ。

   何ができんのかなーっと思って、でき上ったのを見て驚いた。

 イヤ立派なんだよ。建仁寺の前庭があってネ、一間二枚の栂の格子がはまってさ、

 その格子ン所に看板がぶる下がってんだけども、この看板見て驚いた。

  「あくび指南所」と書いてあるんだヨ。

 B:何でぇそのあくびてのは。

 A:イヤ、あくびってのは・・・お前・・・あくびだよ。

 B:あの口からパーっと出るやつか?

 A:そらそーだヨ。あんまり尻から出るあくびなんてのはネーもん。

 B:オイオイ、よしなよ、バカバカしい。何もあくびねんてのは、

  改まって教わんなくたってヨ、寄席にいきゃ、いくらでもでるじゃネーか。

 ・・・・・・・。略・・・。

 ねエー!退屈で、退屈で、あーあ。なーに云ってやんだ。あめー達はいいよ、

 そこで好きな事やってんだからぁ、

 待ってる俺の身にもなってみろよてんだ。退屈で退屈で・・・ふぁーー

 あ、ならねえ。

 やー、お連れさんは、ご起用でいらっしゃる。

 

 あくび指南と言う落語でございます。お後がよろしいようで・・・。へっへっへ。』

 Uちゃん最高・・・。パチパチパチ!!!

 

 

 今年の2月中旬のこと、私が20代の後半から30歳まで、勤めていた、中堅の学習塾の当時大学生講師をしていた人たちが40年経った今、「同窓会」を行うという案内が、私の自宅に届いた。案内には、筆文字の達筆で、小さな手紙が添えられていた。

 

 ○○様

  突然の郵送で失礼いたします。

  ほとんど初めてという状況ですが(Tuさんは、私が退社してからアルバイト講師になりました)

  大宴会のご案内です。

  ご出席をお待ちしています。・・・Tu拝

 

 私は案内を戴いたTuさんにEメールを下記のように送った。

 『Tu様

  拝啓

  当時は、既に社会人であった、私のようなものに『同窓会』のお誘いをいただき、ありがとうございます。

  若い頃、2,3年間勤務していた職場の、しがない事務員にまで声をかけて下さり感謝の言葉しかありません。

  あの頃、前途有望な皆様(若者たち)と触れ合うことが出来たことは、私のその後の人生に大きな意味を与えてくれたと思っ   ております。

  送っていただいた名簿を見て、懐かしい名前に触れ、胸がいっぱいになっております。

 Oさん、Uさん、Kiさん、Kuさん、Kurさん、Sさん、Zさん、Tさん、Nさん、Niさん、Bさん、Miさん、Moさん、Yaさ ん、Yoさん、Wさん・・・。

  皆様と過ごした、2,3年というとても短い日々。人生の意義は、長さではなく深さにあると思わずにはいられません。

  あの懐かしい日々・・・。毎日のように、皆さんと私の安アパートで酒を酌み交わし、お腹がすいたといっては、インスタン トラーメンを食べながら、真剣に人生を語り合ったことが思い浮かばれます。

  お洒落な、Bさんには、私の誕生日にブルックスブラザーズのネクタイを贈っていただき、食通のKurさんには、高級な洋 酒「レアード・ローガン」をプレゼントされ、Yaさんには、釣りを教えていただき、Yoさんとは音楽について激論し、Uさん には、私の部屋で落語を一席話・・・。

 思い出すだけで、貴重な青春の日々が蘇ってきます。

 想い出ばなしはこの辺にしまして・・。「同窓会」は、必ず参加させていただきます。

 

 間もなく、Tuさんから返信のメールをいただきました。

 

 ○○(私) 様へ

 

 ご丁寧にありがとうございます。

 

 あの当時は、このような思い出があったのですね。

 素敵な先輩方に恵まれてうらやましい限りです。

 

 私も還暦を過ぎました。

 良き思い出に浸りながら、

 楽しい会にしたいと思います。

 

 お会いできますこと楽しみにしております。

 

 Tu拝』

 

 6月3日5時30分、待ちに待った『同窓会』である。私は、予定時間より1時間も早く会場に到着した。既に今回の幹事をしている、Tuさんと、Miさんは会場に来ていた。席順を決める紙を貰い、指定された席に着いた。定刻より早く、次々と懐かしい顔が現れる。皆としっかり握手を交わしながら・・・皆、当時のまま、素晴らしい笑顔を見せてくれた。全員が席に着き、Yaさんの挨拶で、同窓会が始まった。

 

 私の右隣には、Uちゃんが座っていた。『Uちゃん、俺の部屋で酒飲んでね。5人ぐらいだったよね。Uちゃん落研だったので、落語を一席やってくれたよね。「あくび指南」みんな酔っぱらってさ・・・。ヤンヤの喝采だったね。まだ落語やってるの?』『落語は大学生の時だけですよ。有名な大手自動車メーカーに就職して、「お前、ニューヨークに行って司法試験とってこいってね。」会社がニューヨーク州立大のロースクールに留学させてくれたんですよ。合格まで2年かかったかな。それから色々あってね。今は、○○○○大学(国立大学)で教鞭をふるっていますよ。』『Uちゃん、話上手くて、生徒にも人気あったじゃない。大学生に人気があるんだろうね』

 

 左隣りには、学生ながら副塾長をやっていたYaさん・・・。『カミソリのように切れたYaさん、今は?』『何をおっしゃいますか・・・。毎日が日曜日ですよ。』『釣り、教えてくれたよね。今も、やってんの?』スマートフォンを取り出し・・・。『これ見てよ。』50センチ以上ありそうなカレイを右手に持ってポーズをとっている。『まだやっているんだ。今度つれて行ってよ』。『いつでも連絡してくださいよ』。

 

 次々と、酒瓶を持って、やって来ては、近況報告と懐かしい話で盛り上がった。

 皆、素晴らしいキャリアを持っている。顔に刻まれた皺の一本一本が40年の歴戦の過酷さを物語っている。しかし、彼らは、彼らの、その輝かしい勲章を語るものは誰もいない。只管・・・。少年のように無邪気に、おどけて、はしゃぎ、明るく笑って・・・あっという間に時間は過ぎ去っていった。

 

 同窓会が終わって、今思うことは、40年前、彼らと私のアパートで酒を酌み交わしながら過ごした青春の日々が、人生の中で一番輝いていたように、私は思うのである。

 

『いや~、今回のOB会の仕掛人の一人として、ここまで大成功には、正直驚きです。

 いやむしろ当惑と言った方がよいでしょう。ここまで、一人ひとりが輝くように楽しんでいた姿はちょっと見たことがありま せん。

 今回集まった講師陣の関係は、フラットでリベラル。とても健全であり卒業後の世知辛い組織とは一線を画すものだったんだなあ~・・・。と、あらためて痛感しました。素晴らしいことです。

 長くもない余生、この関係を大事にしたいと思います。

 幹事さん、元○○教室室長としてのありもしない支配力、権限を振りかざし、札幌に住んでいるという単純な理由だけでTuさん、Mさんのお二人に大役を丸投げしたこと反省しています。「すまん!!」お陰で大成功、ありがとう。

 それでは皆様、しばしのお別れです。お元気で、ごきげんよう。

 3年後にまた逢おうぜ。

  ○○塾○○教室室長 B』

 

 今回のとても素敵で感動的な「同窓会」の企画を思いついたのは、Bさんでした。40年前、117クーペを維持するため、たまたま、私のいる学習塾の講師をしてくれました。押しが強く、ずば抜けて仕事の出来るBさんに、私は、即○○教室の室長をお願いしたのです。2人の学生講師を抱え、厳しい教室運営をやり遂げたのです。学業と塾講師(それも室長)の合間を縫って117クーペを駆り、毎夜、彼方此方に出没し(いつ勉強したの 笑い)、青春を謳歌していました。卒業と同時に大手商社で活躍し、その隙をぬって、かつての教室の部下たちと親交を深めていました。そんなきっかけで、今回の同窓会は実現しました。最後に二人の部下をねぎらう言葉を、グループラインに書き込む辺りは・・・やはり室長健在ですね。

 

 Bさんのために・・・。『Gentle Rain』ルイス・ボンファ

 

 歌:アストラッド・ジルベルト you tube 

 

 

 

 二人迷子になり ここは誰もいない世界

 この柔らかい雨の中 ぼくは歩いていこう

 

 恐れることは何もないさ

 僕の手は 君の手を握りしめるためにある

 愛する人がほしいなら 僕がそうなるよ

 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 ※Bさん、今日札幌は、Bさんの心のような「Gentle Rain」がしとしと・・・と。

 

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