今回の話題は、最終的に将棋界の運営に関わる話ではありますが、その手前の話が中心です。


おおもとの記事は「『電話番号がないと電気もガスも契約できない』スマホなし生活4年、42歳男性が直面した深刻すぎる“現実”」

記事はちょっと長いので、よければご自身で読んでください。

で、これに対して色々と意見が出ておりまして。まずは1つ目

スマホ無しでは生活することができない社会づくりはやめた方がいいと思うよ

元記事を読んだら分かるのですが、別に「スマホ」がなくても電話番号があれば大丈夫だった事例ですし、電話番号がなくても水道の契約はできたので暮らしていました。ただ、電気とガスがない生活だったので、生活は結構大変だっただろうと思います。

じゃあ「電話番号なしでも色々な契約ができることを法律で保証しろ」という意見がいいかというと、そうでもないのです。事業者から見ると、電話番号もない人と契約するとどれだけ事務的な手間が発生するか、想像するとわかるのではないかと思います。この blog をお読みの皆さんは、「〇〇さんに電話が繋がらないから、複数人で〇〇さんの自宅や勤務先に行って、〇〇さんが来るのを何時間も待つ」という経験をしたことがありますか? その人件費は1回あたり何万円くらいだと思いますか?

2つ目

政府はマイナカードよりスマホを支給すべきだ。最低限のライフラインになったからだ

この意見もそうなのですが、「電話番号」と「通話機材 (電話機)」と「スマホ」を混同しているように見えます (「通話機材 (電話機)」には「スマホ」を含みます)。

「電話番号」がないと生活が結構大変なのはその通りで、また「通話機材 (電話機)」も必要ではあるのですが、それを「スマホ」に限定して支給すると「電話番号」には月額費用が発生し、「スマホ」は転売の可能性が出てきます。もともと自分で「電話番号」と「スマホ」を用意できる人の中からもそうする人が出てくるでしょうから、政府としてはものすごい支出となります。非効率なお役所仕事による事務作業の人件費も考えると、国にとって数百億円から数千億円の負担増になる気がします。世界の中でも圧倒的な借金額を持つ日本でそのような選択を支持する人がどれくらいいますかね?


3つ目

通信会社も慈善事業でやってるわけじゃないんだから…。

これは割と本質的な意見だと思います。

行政は、その基本的な服務 (service) について「スマホを持っていない」「電話番号を持っていない」という人が手続きする方法を皆無にしてはいけません。例えば「あなたは電話番号を持っていないから老齢年金の受給手続きをする方法が皆無です」という行政をしてはいけません。

一方、通信会社は (今の日本では) 民間会社ですから、「スマホを持っていない」と主張する人に対して会社負担で支給したりする義務はないわけです。電力会社やガス会社が契約相手に電話番号を求めることも同じです。まあ、法律によって電力会社やガス会社に契約の義務を発生させることも不可能ではないですが、その場合の費用をどこが負担するかどいう問題も発生します。

そこを突き詰めていくと、そういう会社 (事業者) は国営・公営であるべきだということになるのですが…この数十年間の日本政府はどんどん民営化を進めてきて、またその日本政府 (の国会議員) を選んだのは日本国民ですから、全体として現状は国民の選択とも言えるでしょうね。

これは将棋大会の運営などもそうでして、行政が将棋大会を運営するなら INTERNET 上の手続きが苦手な方も参加できるような申し込み受付体制を作るのが筋ですが、日本将棋連盟の支部など民間が将棋大会を運営するなら費用・手間の問題が大きくのしかかってきます。


4つ目

ガラケーって本当に廃止にしてよかったと思う?俺はまだ必要だったんじゃないかって思うんだよ

この意見、恐らく「社会がガラケーを維持するのにどれくらいの費用がかかるのか」という観点なしに出てきたのではないかと思われます。私はこの意見に反対です。

数年前、実家の母親に携帯電話を持たせようとしたことがあります。その時、周りから「スマホじゃなくてガラケーでいいんでないの?」と言われて、かなり腹が立った覚えがあります。

多分「ガラケーのほうが機能が少ないから安いだろう」という程度の認識だったのでしょうが、当時すでに「ガラケー」は中古しか存在していなくて最低でも3万円以上しました。私が母親に買ってあげた「スマホ」は新品で1万3000円程度です。

そもそも「ガラケー」って (例外がなくはないですが) OS の共通化ができないからそこそこ機械寄りの部分から programming しないといけないんです。ものすごく人件費をかけて「ガラケー」を作っても最も貧弱な「スマホ」の足元にも及ばない。それでも世界的に「ガラケー」需要がかなりあって売れるなら (例えば世界の人口の 10%、8億人くらいが「ガラケー」を欲するなら) 価格を抑えて市場で勝負できるかも知れませんが、日本国外の人も使える「ガラケー」なんて開発できないし、日本市場なんてタカが知れているでしょう。

標準化 (この場合は「スマホ」化) しないと高くつく、という感覚はとても大切です。


5つ目

スマホが無いと無理な時代に性能ばかり求めてどんどん本体価格が上がって、月額料金も昔と比にならないくらい高い。

この意見はわからなくもないです。私の周りを見た印象ですが、年収が低い人ほど高い「スマホ」を欲しがって、しかも「残クレ」を利用している傾向がとても強いと感じています。で、その本体価格込みの月額で見るから「高い」と嘆く。

私は本体価格が2万円以下の「スマホ」ばっかり使っていますが、それで困ったことはありません。私が初めて携帯電話を持った時の月額基本料は2700円、通話1分で150円とられたのに比べれば、今は3台で2600円くらいなので、かなり安くなっています。

DoCoMo, au, Softbank の3社はとても高いのに、未だにそれを使う人が結構いて、「あぁ…」と思います。 


素人考えですが、落としどころはこんなところかな、と思います。

  • 困窮者のため、発信ができない SIM を国が用意。費用は国が立て替え、本人の所得が一定以上になるか、本人が亡くなって相続が発生したら請求、ただし民事時効がきた分は請求しない。 (すみません、事務手続きの量は未検討です)
  • 電話番号は20桁くらいに。(法制化)
  • 128kbps くらいで data 通信可能。
  • 本当に本人が使っているかどうか、月に1回、市役所などで確認。
  • 行政手続き、水道、電力、ガスの手続き web page は JavaScript なしでも動くものを用意。(法制化)
  • 少々時代遅れの Android 携帯でも最低限のことはできる状況を維持。(法制化…できるかどうか不明)

これくらいの状況になれば、将棋大会の online 申し込みもかなりの人に対応できる気がします。まあ、でも、実際のところはやってみないとわかりませんね。