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その点「藤井聡太29連勝」は
こちらからアピールする必要はひとつもなかった。

「1990年の野茂英雄」「1994年のイチロー」
「1995年の羽生善治」のように、
「その界隈を見ていない人でもわかる大記録」と
「その人自身の個性」が組み合わさった時の盛り上がりは
勝手に膨らんでいくことがわかりました。

当時を知る人ならわかると思うのですが、社会は常に単純で分かりやすい話題を欲していて、そこに当てはまるほどの実績と個性があると本当に勝手に知名度が上がっていきます。

日本社会から見た「単純で分かりやすい話題」の座は基本的に1~2席くらいしかなくて、少し前だと野球の大谷選手がその座についていたと思います。

羽生善治永世七冠もそうなのですが、藤井聡太六冠は日本社会 (の多くの人) から「頭脳がよい人」の典型として見られていて、上記の座に就いていたことがあります。(上記の座よりはすこし落ちるかと思いますが、加藤一二三元名人も実績と愛嬌で知名度が上がりました。)


こうしてみると、中学生で将棋のプロ棋士になった5人のうち2人はその話題が日本社会を席巻するほどの活躍をし、更に1人、それに近い知名度を持つに至った、と言ってよいかと思います。

言い換えると、将棋界から「中学生棋士が誕生しました」という話題が出てきた時、その4割は日本を席巻し、6割は充分な知名度を得るに至った、ということです。

人々の目からすると、「中学生棋士が誕生しました」という将棋の話題は本当にすごい話題である可能性が高く、TV などでも取り上げる価値が充分にある、ということになります。


藤井聡太六段は、「プロ入り直後から29連勝」「プロ入り後1年1カ月で全棋士参加棋戦優勝」「プロ入り後3年5カ月で全棋士参加タイトル戦優勝」という記録を出しました。TV などからすれば news value が大きい話題を生み出す人物となったわけです。

ここで、留意してほしいことがあります。「中学生棋士が誕生しました」という出来事そのものは (やろうと思えば) 日本将棋連盟のさじ加減でどうとでも実現できることですから、news value はあまりありません。大事なことは、日本将棋連盟が「中学生棋士が誕生しました」と言ったら、その人物はかなりの高確率で news value を生み出す、ということです。


藤井聡太現六冠のプロ入り決定の2年3カ月後、日本棋院は仲村菫現三段のプロ入りを発表しました。

私はこの時、「ああ、日本棋院は囲碁界の威信を傷つけることになりそうだ」と感じました。

誤解ないように記しておきますが、仲村菫現三段は実際に強いと思います。

ただ、世間は「藤井聡太の二番煎じ」と感じたでしょう。(仲村菫現三段に責任はありません。)

「藤井聡太の二番煎じ」ではない、と世間に認識してもらうには、藤井聡太六冠以上の活躍が必要です。具体的には「プロ入り直後から30連勝以上」「プロ入り後1年1カ月未満で全棋士参加棋戦優勝」「プロ入り後3年5カ月未満で全棋士参加タイトル戦優勝」のうち2つくらい実現できれば、二番煎じではないと感じてもらえたと思います。

しかし実際には、仲村菫現三段は2連勝すらできず2局目で負けています。全棋士参加棋戦でも1度も優勝していません。news value としてはとても小さいと言わざるを得ません。

言い換えると、「日本棋院が大騒ぎしても、それは注目するに値しない」という認識を世間に (そして TV 局などに) 植え付けただけに終わったとも言えるでしょう。


関西棋院も同様で、 藤田怜央現初段が9歳4カ月でプロ入りしたという news を出してきましたが、プロ入り後3年以上経つのに未だに公式戦の年間勝ち越しすらできていない状況です。(藤田怜央現初段に責任はありません。)


日本棋院も関西棋院も、囲碁界の威信をかなり傷つけたと思います。

ただ、とにかく話題作りをして囲碁の知名度上昇・普及をしなければいけなかった日本棋院・関西棋院の状況も理解できるので、一概に批判する気にはなれません。