北野高校囲碁将棋部による提起を取り上げます。

最初にお断りしておきますが、高校生にしてはかなりよく論点を整理していると感じておりますし、本音を言うと高校生の主張をこういう形で取り上げることはあまり気が進みません。ただ、将棋界で時々見られる主張と同じに見えますので、取り上げさせてもらいます。


提起 PDF から振り駒に関する部分を引用します。(強調は私。)

現状、各大会個人戦の予選は4人が総当たりでリーグ戦を行う方式で、1つのリーグにおいて上位2人が予選を通過するという形式が採られています。しかし、3人が同率で並んでしまった場合、振り駒で予選通過者を決定されています。選手は将棋を指しに来ているのですから、将棋の勝敗以外の方法で敗退させられては困ります。代替案といたしましては、2勝通過2敗失格方式の予選に変更するなどの将棋の勝敗によって結果が決まる方式に変更して頂きたいと思います。

この主張、時々見かけます。具体的には以下の2種類に分類できるかと思います。

  1. 敗退決定 (敗退者の最終局) だけは将棋の勝敗で決めるべきだが、それ以外 (最終局以外) は将棋の勝敗以外の要素が入っても構わない。
  2. 敗退 (の要素) は将棋の勝敗 100% で決めるべき。

前者の場合、例えば極端なパラマス式を提示されても文句はないはずです。何しろパラマス式は対局で負けなければ敗退することはないのですから。

後者の場合、参加者が奇数の場合の不戦勝 (を決める籤引き) も認めないのですから、(2の冪乗など) ちょうどよい参加者数でない限り総当たり戦にせざるを得ません。


結局、総当たり戦以外の方式の殆どの場合、籤引きなど将棋の勝敗以外の要素を持ち込まざるを得ません。最終結果 (府代表選考など) に対する対局結果の寄与度を限られた resouce (時間、人員) でどうやって最大化するか (と同時にどうやって棋力を反映しやすい対局設定とするか)、という問題なのです。

現行の方式に問題があって新しい方式を提案するのであれば、現行の方式と比較して新しい方式がどう優れているのかを数理的に説明する必要があります。

また、これは私見なのですが、2勝通過2敗失格方式はそこそこ悪い方式であると考えています。2勝通過2敗失格方式自体が問題なのではないですが、私が見てきた範囲では2勝通過2敗失格方式は例外なく籤運による優勝確率の分布の分散が大きめに設定されています (もっと公平な大会にできるはずなのに公平度が低い大会設計をしています)。


数理的な説明を高校生に求めることは酷かも知れませんが、将棋大会というものは限られた resource をどう割り振って目的を達成するかというものですから、「将棋の勝敗以外の方法で敗退させられては困ります」という曖昧で感情的な主張だけでは運営側も困ると思います。

例えば「棋力の高さがなるべく結果に反映される大会」にしてほしいと思うのであれば、まずはそのことを文章で明らかにしなければなりません。これを明らかにすることで、 A 方式の棋力反映率は○%、B 方式の棋力反映率は○%、だから B 方式の方が優れている、のような議論ができます。

府中高選手権の要綱を読むと、「学校教育活動の一環」としての大会であると明記されています。これは必ずしも「棋力の高さがなるべく結果に反映される大会」に一致するとは限らないと思います。全勝すれば府代表になれる、という点くらいは担保されていると思われますが、それ以外の点は「学校教育活動の一環」としてふさわしいかどうかで判断されるのでしょう。


どうしても府中高将棋連盟の大会方針が気に食わなければ、自分達で組織を立ち上げて相応の大会を運営し、主催者 (または全国大会の主管) から府大会を委任されるくらいの実績を積めばよいと思います。

学校が会員となる中高将棋連盟ではなく、生徒が会員となる中高生将棋連盟を立てれば、中高教員の言い分など聞く必要がなくなります。もし自分たちが未成年であることが心配ならば、法人にしてしまえばよいでしょう (未成年者でも法人役員になれます)。


ここまで色々書きましたが、高校生が自分の主張をはっきり表明することは良いことだと考えています。主張の内容には賛同できないことがありますが、主張していること自体には称賛を送りたいと思います。