以前、将棋とは無関係ですが「願書提出忘れ事件」という blog 記事を書きました。

今回、将棋大会申し込み忘れ事件が発生しました (元記事, 動画)。

前回の事件と今回の事件は大きく様相が異なる、というのが私の見解です。


前回の願書提出忘れ事件の場合、願書提出の主体は受験生です。所属中学の教員は高校の受付窓口なのか受験生側の使者なのか、という論点はありますが、それでも「受験生-高校」という関係を基本に考えなくてはなりません。

ところが、今回の事件の場合、大会を主催する北海道高等学校文化連盟の規約の第3条第1項は以下の通りとなっています。

本連盟は、北海道内の高等学校及び中等教育学校(後期課程の生徒)・高等部を置く特別支援学校・高等専門学校(第3学年次までの生徒)並びに専修学校及び各種学校(高等学校卒業の資格を有しない生徒)で、本連盟に加入した学校をもって組織する。

つまり、構成員は学校ですので、大会参加申し込みの主体も学校なのです。大会に参加したい生徒がいても「定期試験直前だから参加は認めない」などと各学校が判断しても高文連としては何ら問題ないのです (生徒が学校を提訴することは自由ですが、その提訴が高文連に波及することはありません。)

申込主体が学校なので、申し込み忘れた場合の責任も全て高校が引き受けなければなりません。


そもそも生徒ではなく学校が構成員である「高文連」がこういった著名な大会を主催すること自体が歪だ、という意見はあると思います。

厳しい言い方になりますが、著名な大会を「高文連」が主催することが嫌であれば、高校生主体 (または高校生とその保護者が主体) の全道的な組織を作り、その役員や事務作業員を (学校教員に頼らず) 高校生 (とその保護者) から選べばいいのです。

高文連は民間団体であり、その在り方を定める強制法令はありません。気に食わないなら、高文連を超える組織を自分たちで作り運営するしかないのです。


ここから先は推測ですが、北海道高文連事務局が北海道札幌北稜高等学校に置かれているということは、北稜高校の教員が通常の業務に加えて高文連業務を担っているということです。将棋専門部の事務はまた別の高校が担っているのかも知れませんが、恐らくはその高校の教員も通常業務に加えて高文連業務を担っているはずです。(更に憶測ですが、勤務時間外に無給で作業している可能性も低くないと思います。)

今回の件で期日を過ぎた申し込みを認めた場合、今後も「締め切り忘れ」を理由に申し込みを受け付けざるを得なくなります。これは事務を担当する教員の負担増となります。更に言うと、「締め切り忘れ」を理由にすれば期日を過ぎても受け付けてもらえることになるのですから、今後は期日を過ぎてからの申し込みが激増することでしょう。


妥当な落としどころは、「今回の件で追加発生した費用は全て北星高校が負担する」「今後○年間、高文連事務作業担当者○人分、及び将棋専門部事務作業を北星高校は断ることができない」というあたりではないかと思います。


Yahoo! の commets を見ていると、私には賛同できない意見がかなりありました。

  • 高文連にしても申請対象となる学校は分かってるはずで、期日前に再周知などはしてたのかな? 
  • 強豪と言われてる学校からの申し込みが無いのを連盟はハテナと思わないもんなのか? 何かしてやったり的な連盟の態度もどうかと思いますがね 締切2日前位にでも再通知するとかあるでしょ
  • 杓子定規に切る必要が無いし、そもそも支部予選を勝ち抜いた生徒が集まる大会なんだから、主催者の側からも学校に確認すべきことだろう。
  • 連盟がバカですね。 前例が無いなら、作れば良い。パイオニアになれば良い。

何というか、事務局の手間をがっちり増やすような意見が多数あって、がっかりです。事務局からわざわざ各高校へ確認するなんて手間を増やしたら、事務局担当高校の教員がさらに過労になるだけのような気がします。

皆さんの県では、何らかの県大会で前回の参加者が今回参加申し込みなしの場合に、大会運営者が該当者全員へ「今回は参加しないのですか?」などとわざわざ連絡をとりますでしょうか。そんなことをしたら運営者の負担が激増することは明らかだと思います。


事務局の手間も増やさず、なおかつ申し込み忘れを生徒側が検出できる仕組みとしては、例えば高文連事務局側での参加申し込み受け付け状況を随時公表するようなものが作れるでしょう。(当然、高校側が web 上で申し込んだら人手を介さずに即座に反映される仕組みです。)

ただ、高文連事務局と学校との内部情報なのに外部へ情報を公開することはあまり望ましくないので、その問題を解決する方法として以下のようなものが思い浮かびます。(4月25日を最終申込締め切り日として書いています。)

  • △△学校が参加を申し込む基本締め切りは4月20日。
  • △△学校の生徒は、○○大会に参加したい場合、高文連の web site で「参加申し込み状況確認」に登録する。(登録 ID は高校が発行)
  • 上記に登録した生徒は、4月20日以降、自校が参加申し込みをしたかどうか web で確認できる。
  • 上記で自校が参加していないことが判明した場合、web 上で高文連事務局へ「今から学校に督促をかけます」という連絡ができる。
  • 上記の連絡を受けた場合、高文連事務局は4月25日まで申し込みを待つ。

この方法だと事務局の作業を一切増やさずに生徒は申し込み忘れを検出することができます。行政における不服申し立ての仕組みに近いものを取り入れた結果です (ただし不服の申立先は高文連事務局ではなく所属学校になります)。