囲碁の桒原駿三段の呟きが話題になっているようです。

将棋界にとっても考えさせられる内容だと思うので、引用します。

日本棋院は現状、スポンサー様やファン、職員の方々の「ご好意」の元に成り立っているのであって、いただいている金額に見合ったメリットやリターンを提示できているようには感じられません。

将棋界はどうなんでしょうね。各棋戦は優勝賞金だけ取り上げられることが多いと思いますが、実際には対局料やその他の費用の比率がかなり大きいはずで、その総額に見合う価値を提供できているのか、sponsors 各社の声を聞いてみたい気がします。

僕の私見ですがこのまま行くと近い将来、多く見積ってトップ棋士20人、女流棋士10人、解説や配信、番組で人気の棋士10人くらいの計約40人しか専業の棋士で食べていけなくなるのではないかと思っています。

「トップ棋士」「女流棋士」「解説や配信、番組で人気の棋士」という分類が興味深いです。そして、sponsors の立場だと「じゃあその40人だけで棋戦を催せば充分じゃないのか?」と感じてしまうような気がします。

450人分の対局料 (及び付随する経費) を負担するのと、上記40人分の対局料 (及び付随する経費) を負担するのとでは、11倍差とまではいかなくてもかなりの差が出ると思います。一方、sponsors が受け取る価値は40人棋戦と450人棋戦とでそこまで差があるでしょうか。

もちろん、「囲碁という伝統文化へお金を出しているんだ」という立派な sponsors であれば上記のようなことはあまり考えないと思いますが、実際にはそうも言っていられない sponsors も多いと思います。本因坊戦が大幅減額されたことは記憶に新しいです。

観る将という言葉が広がったのに対し、何故観る碁という言葉を聞かないのかというファンの方のお言葉を見かけた事がありますが、そもそもリアルタイムで見られる方が少ない時間に対局しているようでは広がるはずもありません。

この発言も的を射ていると思います。将棋や囲碁の本質は、棋譜商売ではなく客商売だと考えます。


囲碁界とは異なり将棋界には引退制度があるので、プロ棋士総数の制御がしやすく、sponsors にとっての棋戦負担額も制御しやすいとは思いますが、それでも今の囲碁界の姿は恐らく数十年後の将棋界の姿だと思います。

四段に上がる新人棋士が年間 (原則) 4人というのも実は多いのではないかという気がしています。今は藤井聡太八冠のおかげでそれなりの話題性がありますが、彼ほどの天才がそうそう立て続けに登場するわけでもないので、将来の将棋人口を楽観視することはできません。

…と思ったら、日本棋院は今年7人の新初段ですか。外部の人間が口を出す話ではないのですが、「ここ6年間くらい思い切った人数を採用しているなあ」という感想を持っています。新人棋士が15年後にどういう暮らしをしているのか、興味があります。


今の日本の人口に対して将棋人口 (正確には『レジャー白書』の対象となる将棋人口) は 4% くらいでしょうか。将来、日本の人口が8000万人くらいになった時に将棋人口が 5% くらいいたら、将棋の普及としては大成功だろうと思います。数値で言えば400万人、絶対数では今よりも減っていることになりますが、それでも「大成功」だと考えます。