実態とはかけ離れているかも知れませんが、棋戦とはどういう商品なのか、考察しようと思います。

以下、将棋団体を店舗に見立て、売り口上を夢想で書きます。

  • 道行く新聞社・大企業の皆様、我が連盟で棋戦を購入してみませんか?
  • 棋戦は基本的に order-made です。ご注文に合わせて棋戦を作り上げ、棋譜と話題と「文化貢献」という功績を納品いたします。
  • 最初に優勝賞金をお決め下さい。これまでに棋戦をお買い上げ下さったお客様の中では、読売新聞社様が最高額を出して下さいました。受注した棋戦は「竜王戦」という名称で納品いたしました。あちらの外壁には、お買い上げいただいた棋戦の優勝賞金順に横断幕を掲げさせていただいております。
  • 次に参加範囲をお決め下さい。基本的には全棋士参加 (約180名) を推奨いたしますが、「新人に限る」「主催者が32名を指名する」のような制限をつけることで支払い対局料を節約することもできます。また、近年は「女流棋士に限る」棋戦の人気がかなり上がっております。
  • 最後に挑戦者決定の仕組みを指定して下さい。NHK 様のように knock-out 式を選びますと支払い対局料は最低限で済みますが、上位12人を紅白に分けて総当たり戦としたり敗者復活戦を設けたりすると棋戦としては盛り上がります (ただし支払い対局料は少々増えます)。
  • 棋戦は単発でもダメなわけではないのですが、できれば subscription として毎年お買い上げいただきたく思います。
  • 優勝賞金が一定額以上で、今後も長きにわたって棋戦をお買い上げいただける見込みがある場合、その棋戦は「タイトル戦」とさせていただきます。「タイトル戦」となった場合、話題性がグンと上がります。例えば全ての「タイトル」を所持する棋士が出てきた場合、1年間で2か月ほどその棋士の知名度を徹底的に利用することができます。
  • 現在「タイトル戦」に分類される棋戦をお買い上げのお客様は8名いらっしゃいます (新聞社連合などは1名と数えています)。そして「タイトル戦」には序列がついております。4400万円より多い優勝賞金の棋戦を発注いただいた場合、序列1位として扱わせていただきます。
  • なお、朝日新聞社様と毎日新聞社様には「名人戦」と抱き合わせで「順位戦」を発注いただいており、「順位戦」は (フリークラスを除く) 全棋士への年間支払い対局料が大変高額となっております。そのため「名人」の称号だけは優勝賞金額に関わらず特別な宣伝効果がございます。
  • いかがでしょうか。我が連盟へ棋戦を発注いただければ大変幸甚に存じます。

…で、「日本将棋連盟」商店の店員として大企業に棋戦を販売しようとすることは、相対的にはやりやすいと思います。全棋士参加でも約180人なので、支払い対局料 (及びそれに伴う経費) があまり多くありません。『レジャー白書』による将棋人口も一応460万人いるので、棋戦をお買い上げいただいた後も活用しやすいのではないかと思います。

ここで、「日本棋院」商店や「関西棋院」商店の店員として大企業に棋戦を販売することを考えると、かなり大変そうです。全棋士参加だと約450人。一方で囲碁人口は130万人。日本棋院に限定して考えると職員数も多いので、間接的な人件費もかなりの額になりそうです。

棋戦の販売促進という目で見ると、本当に厳しそうな気がします。


暴論を書きます。

日本棋院を「日本棋院 (上院)」「日本棋院 (下院)」に分け、過去の棋戦で1度でも上位○名に入ったことがある棋士だけが上院に入ることができ、残る棋士は下院所属だとしたら、棋戦の売り込みがやりやすくなりませんかね。

つまり、上院の棋士だけに対局料を払えばいいので、支払い対局料がかなり低額に抑えられると思うのです。大雑把な考察のために関西棋院の棋士も含めて考えますが、上院に50人、下院に400人所属しているとして、sponsors は下院の棋士の対局料を負担してよいと判断するかどうかです。


ただ、この暴論には大きな欠点があります。優秀な若い棋士が台頭する機会がかなり減ってしまうことです。企業から見ると、短期的な宣伝効果だけ考えれば上院だけでほぼ用が足りるのだと思いますが、囲碁界全体としては停滞しやすくなりそうです。


以上、囲碁界の人間ではないのに好き勝手に書いてしまいました。すみません。

将棋界の未来も明るいわけではないのですが、囲碁界には何とか生き残りの道を模索してほしいです。