あなたの会社 (または団体) で「立替払いで○○を購入してきてほしい」と頼まれたら、財布を持って店に行き、購入時に領収書を受け取り、会社や団体の経理係へ領収書を提出すると思います。

世の中、立替払いなら上記の通り領収書をもらってくることが多いと思います。ですが、会計処理上は「領収書」の代わりに「請求書 + 振込証憑」でも OK です。


ここで質問です。あなたが日本将棋連盟の支部の会計担当者だとして、年会費を集める際、「領収書」と「請求書」のどちらを発行することを選びますか? なお、以下の状況にあるものとします。

  • 職場の将棋部から支部会費補助金が出る、という会員のために「領収書」か「請求書」のどちらかは必ず発行しないといけません。(支部は事業者に該当するから請求されたら「領収書」か「請求書」のどちらかを発行しなければならない、というのが私の見解です。)
  • 日本将棋連盟への送金手続き上、今から2か月以内に支部会費を集めないといけません。(2か月以内に支部会費を払わない人は退会扱いにしても問題ありません。)
  • 支部例会は月1回、毎回参加してくれる支部会員もいますが、1年に1回参加するかどうかという支部会員も少なくありません。
  • 支部では過去に複数回、現金過不足が生じています。特に、短時間にたくさんの人と現金のやり取りをすると発生しやすいです。

書くまでもないことですが、年会費を現金で集めたらとても大変なことになります。殆どの支部会員は銀行振り込みなどの方法で送金することが可能です。


会社などは専従職員がいますので、「領収書」だろうと「請求書」だろうと手間は殆ど変わらないと思われます。

しかし、専従職員などいない、支部のような団体ですと、「領収書」よりも「請求書」の方が楽です。

支部は (殆どの場合) 法人化してないでしょうから、法人印というものはありません。そのため、法的には支部長個人が支部会員と支部会費のやり取りをすることになります。現金収受は経理担当者に委任してもいいですが、請求書や領収書は支部長名で書くことになります。

請求書は、全会員の分を一気に作成することが可能です。つまり支部長が請求書を作成したら、e-mail で各会員へ送信して、それで終わりです。請求書を作る作業をする時間は支部長が自由に選択できます。

領収書は、実際の金銭の収受が発生した時でないと用意することができません。なぜなら、金銭を収受する前に領収書を作成してしまうと不正利用される可能性が高くなるためです。そして領収書は「明日○○へ提出するのですぐに領収書を発行して下さい」というように発行が急かされることも少なくありません。もっと言うと、金銭の収受と領収書の発行は同時であることが理想であり、「今この場で領収書を渡してくれないなら支部会費を払いません」と会員に言われたらその場で発行するしかありません (これは支払者の権利なので、剥奪することはできません)。

あなたが支部長だったら、「今日の夕食後は20分間くらい時間があるから、全員分の請求書を一気に作って e-mail などで送信してしまおう」となるか、「○○さんから『領収書を今すぐに発行してほしい』と言われたから他の用事を後回しにしてすぐに発行しなければならない、○○さんだけでなく他の会員も同様」となるか、で負担が大きく異なると思います。例会で「現金収受+領収書発行」の形式を選んだら、もっと大変なことになります。


「平日8時間の勤務に対して給与を出しているのだから、領収書の発行が求められたら即座に対応しろ」という命令は専従職員に対してだけ出せるものです。支部のような、有志が集まっている団体では、「即座に対応しろ」という命令は出せません。

請求書という選択肢を考えずに領収書に拘り、銀行振り込みという選択肢を考えずに現金収受に拘るような人がいたら、一緒に仕事をする人はとても大変だと思います。

私の支部にはそういう人がいなくて本当にありがたいです。(将棋ではないのですが、非営利団体の長で本当に「即座に対応しろ」のようなことを言ってくる人がいて、その頃は精神的にものすごく辛かったです。)