今回の話は、community の人数が少なくなった場合の話です。


世の中、携帯電話の OS は Android と iOS、個人用 PC の OS は MS-Windows が圧倒的な普及率を誇っています。

server の世界だと、Linux が圧倒的です。


日本に Linux が普及しだした頃は (FreeBSD と共に) PC-UNIX と呼ばれていました。個人所有の PC に Linux を入れて使うことができる、という点で色々な人が Linux に手を出していました。

その頃は Linux (の各 distributions) の日本語化があまり進んでいなくて、Linux を導入した後に日本語対応させる、という手順が必要なものが殆どでした。

その時に充分な日本語対応を謳って普及したものが Vine Linux です。Vine Linux を使えば後からわざわざ日本語対応させなくても最初から日本語に対応している、という点がかなり評価されていたように思います。日本国内で Linux を使うなら候補の1番に Vine Linux が上がる、という時代でした (私の周囲だけかも知れませんが…)。

じゃあ今でも Vine Linux は隆盛か、と訊かれると「いいえ」と答えざるを得ません。2017年に Vine Linux 6.5 が release されたのを最後に新しいものは出てこず、2021年には「VineSeed 以外の Vine Linux リリースを終了します」というお知らせまで出ました。(VineSeed は、簡単に言えば Vine Linux の先端です。)

窓の杜でこんな記事もあります。

「Vine Linux」は、コンパクトで軽量な国産Linuxディストリビューション。日本語の扱いに難があるディストリビューションが少なくなかったLinuxの黎明期において、初めから日本語に対応していた「Vine Linux」は扱いやすく、コミュニティでの情報交換も容易であった。国内のLinux普及にもっとも貢献したディストリビューションのうちの1つといえるだろう。
〔中略〕
 現在の最新版は、2017年にリリースされた「Vine Linux 6.5」(Poupille)。最近はリリース版「Vine Linux」のメンテナンスに名乗りを上げる人もほとんどいなかったとのことで、終了はやむを得ない措置といえるだろう。

唯一残っている VineSeed でさえ、例えば Linux Kernel は 5.10.93 です。でも 5.10.93 って2022年1月に release されたものなので、既に1年以上経過しています。言い方は悪いのですが、放置されていると評価されても仕方がない状況です (1年も前の kernel を使い続けることは大変危険です)。


人数が減ってしまった community は衰退の道を進むことになります。誰か篤志家が現れて「オレが支えてやろう」なんて言っても、色々なところで人手が足りていないので、人数が多い communities に追いつくことはほぼ不可能ではないかと思います。

例えば package manager。CentOS Stream では dnf を採用しており、これは rpm → yum → dnf と進化してきたものです。dnf のおかげで、例えば PHP 8.1 と PHP 8.3 とを簡単に切り替えたりできます (yum までは remi の repositories を手動で切り替えたりしてかなり大変でした)。しかし Vine Linux では未だに rpm です。dnf に慣れた身からすると、rpm にはちょっと戻りたくないなあ、と感じます。

まあ、Vine Linux 上で dnf を利用できるようにすることは技術的に可能でしょうが、そのために投入すべき労力量がかなり大きなことが予想されます。


かつて Vine Linux を利用させてもらった身としては、Vine Linux の衰退は寂しいものがありますが、community の人数が減ってしまってはどうにもならないです。


将棋はどうでしょうね。

今の将棋界は、子どもの頃に電子遊戯がなかった世代がかなり中心になって支えています。

皆さんが所属する将棋 community は、「60代+70代」の人数と同じくらい「20代+30代」の人数がいますか? 同じくらいでないとしたら、何割くらいですか?

Vine Linux の例と異なり、将棋人口の変化は割と緩やかです。しかし、変化が緩やかだからこそ、かなり早期に手を打たないといけません。(正直に言うと、「既に手遅れである」という可能性も否定できません。)

かつて将棋は、たいていの男子小学生なら卒業までに1度は遊んだことがある遊戯でした。今、小学校を卒業しようとする男子小学生の将棋経験率はどれくらいでしょうね。過半数ならいいのですが、それも微妙かも知れません。

私はかなりの危機感を持っています。