読んでいてグサッときた一連の記事を紹介します。私が将棋 communities、将棋界を考える際の視点と共通する部分がありつつ、「自分は古い方の人間だ」と感じた点もあり少々キツイ内容でした。

専門的な話が多いので、よく分からなければ読み飛ばして下さい。

1つ目の記事

2010 年代においては、 日本では Rails コミュニティこそが先進的な開発を行う組織でした。
OSS においてはコミュニティの趨勢というのがその言語の価値を決めるとも思っています。〔中略〕とくに、開発者コミュニティが評価されている言語で、コミュニティから人がいなくなるのは致命的です。日本だとそこまで感じませんが、何か新しいことを調べる時に、海外コミュニティだと Ruby で書かれたコードはほとんど見かけなくなりました。

盤上遊戯である将棋や囲碁も、人がいなくなると致命的です。

Rails と フロントエンドの View では、そもそも見ているものが違って、 Rails や他のフルスタックフレームワークは ActiveRecord の出口としての文字列、フロントエンドは動的な木構造の GUI コンポーネントとして捉えています。
React のような宣言的 UI のフロントエンドは、テンプレートの生成過程そのものを握る必要があります。Rails で生成した文字列にはその情報が残らないので、それを利用する限り jQuery 的な手続き的な差分処理になり、差分処理による状態遷移の複雑さが閾値を超えた段階で、設計として破綻します。

A として捉える / B として捉える、の違いは色々な分野で見られます。

例えば町内会は「やらなきゃいけないこと (やらなきゃいけなと思っていること) が先に存在し、そこに人員を当てはめていくものととして捉える」人が多くて、多分国内の多くの地域で破綻します。「○○活動なら協力してもいいかな、という住民の気持ちを積み上げ、その範囲内で活動を選択するものとして捉える」人とは根本的に合いません。

将棋界じゃない領域 (非営利領域) で経験したことなのですが、○○長に当たる人が会員を手足のように使おうとすると破綻します。給料も報酬もないのに「○○の役に就いたからにはこれだけ○○をやれ」みたいな命令をされたら人は逃げ出します。

そもそも根本的な話なのですが、 Rails はサーバーサイドが主戦場なので SQL のレスポンスタイムの数百 ms のオーダーで考えますが、フロントエンドは GUI のインタラクションとして捉えるので 16ms のフレーム単位で捉える必要があります。このオーダー感覚が基本的なパフォーマンスチューニングの断絶の生んでいると、自分は考えています。

この記述が一番グサッときました。私の感覚は前者です。そりゃ、16ms 単位で捉える感覚の人たちとはズレが発生します。mobile application との戦いが主戦場の方々なら、確かに数百 ms などという悠長な感覚はないわけです。どちらかが正しいというような主張をしたいのではなく、お互いの主戦場の感覚を持っていないと断絶が発生しやすい、ということです。

自分が 2010 年代中盤の Altjs を観測していたときに感じたのが、「JS に興味がない言語のコミュニティのフロントエンドツールは、関心の少なさからフロントエンドの抽象に失敗する」という点でした。

これも、固有名詞を取り除いて「○○に興味がない○○の community の○○は、関心の少なさから○○に失敗する」と書いたら色々な領域に当てはまりそうです。

そして、「この community はいずれ○○に失敗するだろう」という嗅覚を持つ人は、わざわざその community に進言したりしないか、または進言しても理解されないか、のどちらかであることが多そうです。

将棋界は、数十年後にも生き残るための「何か」が未だ足りていないような気がします。その「何か」の一部は多分これだろう、という予感はありますが、恐らく足りないものは私が感じる「これ」だけではないでしょう。

2つ目の記事

なぜ今まで Node の Fullstack Framework が流行らなかったか?〔中略〕Node.js のエコシステムが安定せず、取捨選択できなかった

そう、ecosystem が安定しないと、学習が無駄になる可能性が高く、精神的にキツイです。

将棋界も、全ての将棋情報を有機的に統合できるような ecosystem が必要だろうな、とは思います。5年後にはできていないでしょうが、50年後には必要不可欠だろう、と予想しています。または、各種遊戯を統合する ecosystem ができて将棋 ecosystem はその一部になっているかも知れません (ecosystem ってほどじゃないですが、Challonge なんかは各種遊戯を対象としていて「将棋でも使える」ようになっています)。…具体性がない話ですみません。

あと、引用はしませんが、2つ目の記事では CDN の話も結構書かれていて、いやもう、私は「置いてけぼり」感が強いです (私は CDN の活用方法をかじったことがありません)。


新しいことを学ばずに古い価値観のままでいると「古い人間だ」と評価されるのだろうなあ、と戦々恐々としています。