COVID-19 の期間、「感染防止」と称して将棋盤の上方に透明膜を垂直に設置する様子が大変多く見られました (大部分の大会・例会がそうだったのではないかと思います)。ですが、この透明膜について医学的な根拠や実効性を述べた文章を見たことは1度もありません。
結局、多くの将棋関係者が無思考に「透明膜さえ張っておけばよい」と考えたのではないかと思います。
2023年1月に実施されたとある将棋大会の写真の2枚目を見て下さい。(将棋大会自体を非難するつもりは全くないのでここでは大会名は明記しませんが、後世の資料になると思うので link は貼っておきます。)
この高さの透明膜って、感染防止に全く役立たないと思いませんか? 下図は、写真右下の橙色の服を着た女児を基準に写真を計測しておおよその尺を再現したものです。(説明のためにこちらの画像を利用させていただきました。)
透明膜は机から 31cm くらいの高さにあり、女児の目の高さよりも上です。最上部は机から 120cm くらいの高さに達しているので立派な透明膜に見えるかも知れませんが、子ども同士の対局でそんな高い場所を通過する飛沫なんてあるものでしょうか。
COVID-19 は空気感染と飛沫感染を考える必要があります。
空気感染を防止するにはこのような透明膜は全く役立ちません。そもそも、空気感染を防止したいなら同じ部屋に保護者を入れてはいけません (それだけで感染確率が上がります)。
じゃあこの透明膜は飛沫感染の防止に役立つかと言うと、私には役立つようにも思えません。
例えば左の人物が感染者だとしたら、左の人物の口から見て右の人物の胸から目までが晒された状態になっています。左の人物が咳をしたら右の人物はがっちり飛沫を受けます。
無思考に「透明膜さえ張っておけばよい」と考えた結果が、この透明膜の張り方なのだと思います。
この透明膜、大会後はどうやって撤去したのか気になります。大会中の感染防止に役立たないだけではなく、よほど気を付けないと撤去作業者の感染可能性を増加させてしまいます。
この大会とは別ですが、透明膜は役立たないだけではなく感染可能性を増加させるからやめてほしい、という声を医療関係者から聞いたことがあります。
個人的には将棋界の黒歴史だと感じています。