やねうら王作者さんの blog で興味深い話があったので、引用します。

よく考えて欲しい。角換りでなぜ必勝定跡が作れたのか。

それは、角換りは変化が非常に狭いからである。

変化がなぜそんなに狭いのかと言うと、角換りでは角をお互いに持ち合っているので変に駒を動かすと角を打ち込む隙ができてしまう。だから、動かせる駒に強い制約がある。

入門者はお互いに角を持ち駒にするだけで急所に角を打ち込まれる可能性がとても高くなるので角交換を嫌がるものですが、棋力が高い人にとっての角換わりは上記のようなものなのでしょうね。

対して、振り飛車はどうだろうか。

ノーマル振り飛車、すなわち角道を開けていない場合について考えると、駒組みとして色んな変化がある。先手もかなり自由に駒組みできるし、後手もかなり自由に駒組みできる。先後の駒組みの組み合わせが膨大になることは想像に難くない。

おまけに、開戦するまで形勢が傾かないので必勝までの定跡を作ろうと思うと変化が膨大なものになる。

実は、息子が将棋を習っていた頃にも指導員の方が似たようなことを話していました。

逆に振り飛車側は三間飛車ならば三間飛車と言うように特定の筋に振る振り飛車の定跡だけを掘っていくことができるので、振り飛車側は自分が使う定跡をある程度一方的に整備できるのである。

こうなってくると、互角ぐらいのプレイヤー同士の戦いでも相手だけが深くまで定跡を整備していることになるので、序盤で居飛車側だけが時間を使わされて、中終盤の持ち時間が相対的に減り、これがR50ぐらいのハンデを生み出してしまう。

これまた興味深い話です。

将棋に必勝法があるとしたら居飛車か振り飛車のどちらかでしょうが、仮にそれが居飛車であっても将棋の神様でなければ (人間であれば) 必勝法を覚えることはできないので、specialist として特定領域に学習労力を投入し、実戦ではいかにそこに誘導するかに力を注ぐ形になるなら、AI がどれだけ進歩しても振り飛車は面白そうです。