むんと熱気の塊を
自転車ごと身体ごと押し分けて出かける。
お盆前の 子ども達がたくさんいる日に
前倒しでおはなし会をお願いしますって。
喜んで参りますとも。

朝の涼しい時間に
ほんの僅かだけ
外遊びができるんだろう。
遠く離れたところからも
園庭の黄色い笑い声が聞こえてくる。

「あ!おはなしのひとだ。」
「おはなしの おばちゃんたちだ。」
「せんせ、きたよ!おはなしのひときたよ。」

目ざとく見つけて
駆け寄ってくれる。

おはよう、おはようと
声をかけながら
もみくちゃにしてもらいながら
お部屋までつれていってもらう幸福。

丸くなって
おはなしのお団子座りだよ、
と言うと
汗に上気したほっぺたを
丸々させて集まって座ってくれる。

正座のこ。
カエル座りのこ。
お隣と手を繋いだり
先生に寄りかかったり
思い思いにリラックス。

語りだせば
物語に身を浸し
一緒になって
カブを引っ張り
抜けないね!抜けないねと、囁きあって
夢中になり、イメージに目を凝らしている。

絵本を開けば
身を乗り出して
挿絵の隅々にまで視線を送る。
笑い、驚き、息を弾ませ
主人公の活躍に喝采を送る。



なんて
なんて 一生懸命に楽しむのだろう。
臨場感とは このことである。
生まれたばかりの感性が
蓮の葉の上の水玉みたいに
びりりときららと転げ回る様で
圧倒されます。

大人は
この半分も
味わい尽くせない。

こんなにも
相対してくれるお客様に
ワタシは何がお届けできるのでしょう。

おはなしの まことの 半分も
届けられていないような
焦りを感じてしまうのだ。

でも、
それでも、
語りたい。
読みたい。
届けたい。
面白かったと
言ってもらえるように、
出来るだけやれる事全部、やりたい。

本物の
語り手にはなかなか、届かないけれど
今持ってる全部を
せめて全部出来るようになりたいのだ。



おはなし会をやるたびに
そう
思ってるんです。





参考までに。
《年中プログラム》
わらべ歌 虫かご
語り おおきなかぶ
絵本 ちいさなしょうぼうじどうしゃ
   おふろばをそらいろにぬりたいな
   うさぎ

《年長プログラム》
わらべ歌 虫かご
絵本 ブルーベリーもりでのプッテのぼうけん
   マドレーヌといぬ
   うさぎ