実父の別称

「破壊王」。


庭仕事をしていると

あらゆる場所から

王の仕事の跡を見つけることができる。


真っ二つに割れた砥石。

何故か捻れてこんがらがってるフォーク。

(福田繁雄かよ。)

柄が折れた植木鋏

柄が折れたスコップ

柄が折れた金槌

柄が曲がってるシャベル

穴の空いたバケツバケツバケツバケツ

(捨てろや。)


裏庭への通路に

胴中でぶった切られた

クロガネモチの木があった。

高さ1メートルほど。

何の位の樹高があったか知らんが

王はここまで切り詰めたところで

破壊を断念したと見ゆる。

娘はもちろん、ほったらかしておった。


ところがだ。

オットがその

やたら長い切り株にどん!とぶち当たった。

そして、女の子みたいな悲鳴を上げたのだ。


「きゃ~!」


きゃ~と叫ぶ60歳おじさん。

長々切り株の表皮が剥がれると

中からどばっと

蟻の群れが噴き出してきた。

切り株は 蟻の帝国になっていたのさ。


さあ、

ご一緒に

きゃ~!


そらまめも、

これは無視するわけにはいかず、

なんとかせねばと

ふんどし締め直しました。


まず、

30センチ間隔で輪切りにしていきました。

出ますよ出ます

わーらわら

蟻ん子出ます

わーらわら。

オット、逃げ出す

妻怒る。

怒っている間も

わーらわら。

切って切ってぶった斬れ!

負けてたまるかこんちくしょう。



で。

これが本来の切り株

という形になりましてな。

蟻ん子に怯え

子兎の様に震えているオットを

叱咤激励し

根っこ周りをほじ繰り返し

蹴ったり殴ったり

狼藉の限りをし尽くして

遂に…。





根っこに

勝った。


はあはあはあ。

破壊王の娘を舐めんなよ。


業者に頼めばいくばくかの

おあしが 出ていったところを

破壊王の血を受け継いだおかげで

プライスレス〜。


やったよ、

父上。

と、

空を見上げる。


写真には映らなかったけど

蟻ん子ども、

恨めしげに

切り株周りを駆け回ってます。