何年もお届けに行かせてもらっている保育園。

3月が来るたびに、

6年間おはなしを聞いてくれた

年長クラスをお祝いする気持ちで

プログラムを組みます。


でも、


湿っぽくならないように。

さらりと さよならを心がけます。

なぜなら、子どもたちにとって

私たち「おはなしのひと」は

全て同じ おはなしのひとだから。

小学生になったら

きっとその学校で活動している

新しいおはなしのひとと出会うでしょう。

団体名が変わっても、

選書が変わっても、

子どもにとっては 皆同じ。


こちらの思い入れは

こちらの胸の中。

最後まで楽しく、

面白く、

わくわくと おはなし世界を旅してほしい。





いつも、おはなし大好きなこは

同じ顔ぶれで最前列に陣取ります。

ワタシの膝にそっと触れたり

目が合うとはにかんで 微笑んでくれたり。

真ん中あたりは、

お友達と 楽しみたかったり

恥ずかしがり屋さんで前に出られなかったり。

あと、最後列は先生が大好きな一団。

おはなしの時間は

先生もゆっくり座って聞いているから

ここぞとばかり お膝に乗って甘える時間。

それぞれが、それぞれの温度で スタイルで

おはなしを聞いていればいいと、

そう思っています。

きちんと座るとか

お口チャックとか

そういうのはいらないよ。

聞きたくない日だってある。

すごく 楽しむ日だってある。

なんでもいいの。


で、

ワタシが担当していた年中、年長の、2年間

ずっと先生のお膝の女の子がいました。

先生の髪の毛をうっとり撫でながら

先生のお顔をうっとり見上げながら

その時間を過ごしてた。


絵本は時たま、ちらりと視線を送るけど

きっと、先生を独り占めできる

唯一の時間なんだね。

いいよ、そうしててね。

時々聞き耳立てるぐらいでかまわないよ。


そう、思ってたんです。


ああ、ごめんね!

そんなことなかったんだね!


ワタシが すべての本を読み終わり

この本で 保育園でのおはなし会、

ほんとにほんとに

おーしーまい!と言うと

その子、先生の胸に顔をうずめちゃった。


他の子が口々に

たのしかった!

おもしろかった!

小学生になってもおはなし、聞きたい!

と、話しかけてきて

ワタシ、みんなに、

また どこかで会おうねって約束してた。

そして、ふと 横を見ると

その子が立っていました。


目に、涙をためて

おずおずと 手を伸ばして

ワタシの指先を掴んで

小さい小さい声で


「さみしい。

 行かないで」


と、言いました。



愚かなワタシ。

こんなに

おはなしの時間を大切に思ってくれてた事に

まったく、気がついていなかった。

大好きな先生のお膝の上で

この子なりのやり方で

楽しんでいてくれていたのだ。


自由に聞いて、なんて

口先ばかり。

自由に聞いてくれていたからこその

このふた粒の涙は

ありがたい、宝石のようです。

きらきらと うつくしくて 尊いなあ…。


抱っこして良い?とことわってから

小さな女の子を 抱きしめる。

この中に 6年分の物語がつまってるんだなあ。


おいらも抱っこして!

という声に笑いながら

ハグ大会になりました。



思いがけない事ばかり、

おはなしの道の周りには咲いている。


見落とさないように

大切に歩いていこうと思いました。



まだまだ、

あるいていくよ。