これはね、
私の頭の中の、
夢の中の、お話。
向こうで、大きな炎が上がっている。
逃げ惑う群衆に紛れて、
私は闇夜に写る
赤の世界に見とれていた。
どうして、逃げないのか?
どうして、叫ばないのか?
分からない。
分からないけど、
夢の中の私は、
冷静で勇敢だった。
次の瞬間、
炎の上がる方へと足を向けていた。
群衆とは逆の方向へ、
駆け出していた。
炎は不思議と熱くはなく、
ただの飾り物のように見えて、
でも、家々が焦げる匂いを、
鼻は敏感に感じとる。
煙たさに顔を歪めて、
目に涙を溜めて。
それでも必死に覗いた先には、
悪魔のような形相で街のあちこちに
火を撒き散らす一人の男が存在した。
男はこちらに気づき、
不気味な笑みを向けると
『この世に本当に存在するとはね…
こちらには来ない方が良いぞ。』
そう低く唸った。
その声は、
人間のようにも
機械の音のようにも聞こえ
私の耳の奥に木霊した。
ただ、私は助かったのだと、
そのことが不思議であった。
人の殺生を目的としないのならば、
彼の目的はなんなのか?
何の為に街に火を放つのか?
それが分からず、
ただ茫然とそこに立っていた。