「そちらの薬局には、トイレが急に近くなって、たまに間に合わないときがあるときに効く薬とかおいているのですか?また、そういことで病院へ行って先生に相談してもよいのですか?」といった内容の電話相談を患者様から受けることが、しばしばあります。
どうも、トイレが近いというのは病気と認識され辛く、医師も診てくれないのかもという考えがあるようです。 このような症状で悩んでいる場合は泌尿器科が専門になりますが、かかり付けの内科がある場合は、一度その先生に相談してみるとよいと思います。
重症であれば専門医へ行くことをお勧めされることもありますが、内科の医師もお薬を処方してくれます。まずは、心配せずに近くの病院へ受診することを勧めています。
で、実際このようなことで悩んでいる人は全国的にも多いのかな?
と調べてみたところ以下のようなデータがありました。
トイレが近く間に合わなくなったりする病状を「過活動膀胱」というのですが、この症状で悩まされている
40歳以上の日本人は800万人を超えるといわれています。
多くは80歳以上の高齢の方ですが、有病率は男女に差はないようです。
ですが、多くの女性は病院には行っていないというデータがでています。泌尿器科は男性が行くところと
いう固定観念とトイレが近いのは気分の問題だから病院へ行っても治らないと考える方が多いのでしょうか。
このトイレが近いという症状は「気分の問題」ではなく「過活動膀胱」という病気であり、その治療は
薬物療法になりますので、薬で治る病気と考えられます。
なのでトイレが近く悩んでいる場合は病院へ行きましょう。
で、病院へ行ったらどんな治療をするのでしょうか。
基本は問診だと思います。
トイレが近くて間に合わないのか、間に合うけど行く回数が多いのか、排尿痛はあるのか、
夜中に行くことが多いのか等ですね。
それと検尿でしょうか。細菌感染していると膀胱炎などの別の病気になりますのでその辺の診断が必要になります。
それらの診察の結果、過活動膀胱と診断されたら、薬が処方されると思います。
では、実際どのような薬があるのかまとめておきます。
まずはこの薬。
デトルシトールカプセル(ジェネリック名:酒石酸トルテロジン)<ファイザー>
この薬は、過活動膀胱の薬として世界で初めて承認された薬で、欧米では現在でも
一番使われている薬です。
過活動膀胱の薬を飲むと口が渇くという副作用が出やすいのですが、この薬は比較的
唾液腺に作用せずに膀胱に働くといわれているので口の渇きは少なく、長期で服用し
続けれます。作用時間が長く1日1回の服用でよい薬です。
次にこの薬。
バップフォー(ジェネリック名:プロビベリン塩酸塩) <大鵬薬品>
一般用医薬品の「ハルンケア」を作っている大鵬薬品の薬ですね。
この薬も作用時間が長いので比較的重症の人に処方されます。
1日中薬が効いているほうが助かる人に飲んでもらいたい薬ですね。
その他によく出る薬があります。
ベシケア錠(ジェネリック名:コハク酸ソリフェナジン) <アステラス>
当薬局ではこの薬を調剤していることが多いですね。
適度に長く効くし、使いやすい薬です。
以前は多く出ていた薬とした次のものもあります。
ウリトス錠 (ジェネリック名:ソリフェナシン) <杏林製薬>
<小野薬品からはステーブラ錠という名で販売>
作用が短時間であるため、口が渇くなどの副作用も短くなります。
例えば、朝だけ頻尿になるとか、電車に乗っている時間だけ頻尿を抑えたい、
外出中だけ頻尿になる気がするなど、短時間だけ止めたいときにはこの薬が
使われます。
これ以外に作用は弱いですが、これらの薬のような抗コリン薬とは違う作用で
過活動膀胱に使われる薬としてブラダロン(フルボキサート)もあります。
フルボキサートを成分とする薬は一般販売が認められたのでドラッグストアで
1類医薬品として販売されています。
病院へ行かずに薬を飲んでみたい方は薬剤師のいるドラッグストアに行ってみるのも
良いかもしれません。もちろん当薬局でも一般販売しております。
一般に処方される過活動膀胱の薬は抗コリン薬なので、緑内障の一部の患者さん、
前立腺肥大の一部の患者さん、口の渇きがひどくでたり、ひどい便秘でこれらの薬が
飲めません。
その問題点を解決するべく、別の角度からアプローチをかけた薬が2011年9月に発売されました。
その薬が、
β3受容体という場所を刺激して膀胱がぎゅーっと縮むのを防ぎます。
新薬ですので実際の治療効果のデータが上がってくるのはこれからだと思いますが、
今までの薬で効かなかった患者さんに治療効果がある可能性があります。
また、これらの薬のすべてを服用しても効果がない患者さんには
ボトックス注射といって、食中毒菌のボツリヌス毒素を注射して膀胱の筋肉の動きを止める
という方法もあるようですね。
とまあ、病院へ行くと様々な治療方法があります。
でも、薬を漫然と飲むだけでは症状が完全に改善しきれないので薬剤師としては
服薬指導も大事です。
~指導内容~
頻尿であるのに、酒を多く飲むとかコーヒーを多く飲むなど、あまり頻尿と関係ないと思って
摂取されている方はこれらの飲用を控えるように説明する必要があります。
また、水は多く飲んだほうがよいと考えられる患者様もいますが、適度な量にとどめることが
大事であり多く飲むことは良くないことを知ってもらう必要があります。
夕方からの飲水は控えるべきですね。
お風呂ではシャワーだけでなく湯船につかることも大事です。
散歩や日光浴も過活動膀胱を抑えるには良いとされています。
後は訓練すること。
「おしっこを我慢したらダメ」と小さいころ言われたことがありますが、
過活動膀胱においてはこれは間違い!
尿意があってもすぐにトイレに行かず、10分だけでも我慢してみることが大事。
次第に1時間、2時間とか我慢できるようになれば大したものです。
これらは訓練できますので、我慢する努力をすることを念頭においておくのも重要です。
以上、過活動膀胱についてまとめてみました。