質問箱 回答まとめ (2019年5月上旬分) | 東大SPHを目指す貴方へ

東大SPHを目指す貴方へ

東京大学 公共健康医学専攻 (SPH:公衆衛生大学院)の卒業生有志による、入試対策法・学生生活・キャリアプランについて綴っているブログです。
東大ひいては日本国内でMPH(公衆衛生修士号)取得を目指されている皆様のご参考になれば幸いです。

※スマホで閲覧されている方は、これまでの主な記事一覧が便利です。

遅くなりました。

Twitter上の質問箱に投稿いただいた質問と回答のまとめ(2019年5月上旬分)です。

日に日に数が増えていく質問数、5月だけで221件を記録しました。
「東大SPH」や「今私が行っている研究内容」とは一切関係ない質問は記事では扱わず、
「過去問解答・解説」に関する質問も、解説文に反映させる代わりに、記事では扱っていません。

それでも尚、質問数は増加する一方で、昨年12月までは1記事あたり3ヵ月分まとめていたのを、
今年1月からは、1記事あたり1か月分に減らさないとAmebloの字数制限に引っかかるようになりました。

しかし!

5月からはついに1か月分ですら字数制限に引っかかるようになったのです!

このブログテーマとは関係のないものや過去問解答へのご質問をカットしていても、です!

と言うわけで、5月分の回答まとめは上旬と下旬に分けてお送りします。

まず今回は5月上旬のまとめです!



現在看護大学生のものです。東大SPHにて精神保健学を学びたいと思ってるのですが、臨床を2年ほど経験してから入るか大学卒業後すぐに進学するか迷ってます。その後博士まで取りたいとも考えてるのですが、臨床経験有無どちらが良いのか参考としてご意見を頂戴したいです。
そこで迷われる方、結構多いです。私の視点(あくまで医師の視点ですが)から言わせて頂きますと「臨床経験は最低2年は積んでから」が望ましいと思います。研究にしても行政にしても「現場」を知ってるか否かで見えてくるものがガラリと変わってきます。SPHの授業では学生同士で討論することが多く、その際、現場経験ありの人となしの人とで「引き出しの数」が格段に違います。まだ看護学生とのことでしたら、年齢的にも時間はありますし、慌てずゆっくり学んでいけば良いです。



経済的な面で公衆衛生に関わる医師になるとかなり臨床医師に比較して差がついてしまいますでしょうか。
研究や行政に関わると、基本給は臨床医より下になりますが、バイトなど副収入がどこまで許されるかによって、大逆転があります。



診療にはEBMという強固な指針が浸透してきているのに、地域の医療システムや病院運営、部門運営などは未だに「鶴のひと声」「慣習」「現状維持」等々で舵取りされている感があり、もっと生産性の高いやり方が無いのかとモヤモヤした日々を送っています。臨床におけるEBMに相当するような、医療システムや病院マネジメントの世界標準の手法を学びたいという欲求はSPHで満たせるものなのでしょうか?
なるほど。それでしたら、医療経済学やその演習を履修されると良いと思います。経営学の基礎的な考え方を学ぶ良い機会になりますし、実際の(大学病院ですが)の経営方針を基にしたケーススタディなんかも勉強できたり、病院が事故を起こした時の模擬記者会見もやってくれて正に「肌で学ぶ」ことができます。そして、博士課程進学など研究室に所属してもっと深く実学的に学んでみるのも良いかもしれません。



行政に関わった医師で副業が許されることがあるのですか?
まぁ、ないでしょうね、行政だと。研究であれば、(教授がどこまで理解してくださるかによりますが)副業が可能ですが。



帝京のSPH についてご存知のことがあったら教えてください!東大との違いなど。より実学的なイメージがあります。
ハーバードと提携してるってことが一番の売りですが、それ以外のことは残念ながら情報不足で何とも言えませんです。ただ、帝京も「専門職大学院」の認定を受けていますので「それなりの」質の授業はしてくれると思いますよ。

在学生か卒業生の方、授業内容へのご感想などの情報をお待ちしています??



感染症科ってどんな科なのですか?
他の科でも感染症は扱っていますから、感染症科は何をしているのか気になります。

あー、おっしゃる通りですねー。いわゆるコンサルト業がメインですね。だからこそ、感染症科は抗菌薬などの使い方についてガイドラインはもちろん、ガイドライン外の(最新の論文などの)情報を常に把握してないといけません。何より、心カテやら内視鏡やら挿管などの手技を要さないので、余計に求められる知識がハンパなくなります。



英語論文は耳にしますが、フランス語やスペイン語で論文を書き上げることは評価されるものでしょうか?
私の感覚では「英語ありき」ですね。100年ぐらい昔、かの鈴木梅太郎先生がビタミンB1(当時は「オリザニン」と命名)を発見した際、ドイツ語で論文発表されましたが、「この物質は新たな栄養素である」の一文が翻訳されなかったためにノーベル賞を逃したと言われています。これは裏を返せば「当時はドイツ語が医学の世界では認められていた」と言うことにもなりますが、今は別でしょうね。英文校正業者に翻訳を丸投げしてでも英語で発表すべきです。



そーいえば、YouTube見ましたよ。
お!それは光栄です!



英語や日本語に加えて、フランス語やスペイン語の文書をも読みつつ、英語論文を書き上げることは評価されるものでしょうか?
それは全然問題ないです。色々な論文の孫引きをみてみると “(in French)”とか “(in Spanish)”などと注釈が振ってある引用が多くあります。なので問題ありません(ただし、読めればね)。私自身、過去に英語論文執筆の際に “(in Japanese)”の文献をいくつも引用しています。



東大でエンカできますか?
ふふっ。五月祭に参加予定なので探してみてくださいな(・∀・)
※5月4日に頂いたご質問です。五月祭(SPHイベント)は同18日に盛大に行われました。



いつも有意義なブログをありがとうございます。 医師です。MPH取得後、そのまま博士課程に進学する際の受験倍率はいかほどですか?また、SPHの単位は博士課程でも認定されますか。
ありがとうございます!ってか、最近、更新が滞っててすみません???♂?
(決して忘れているわけではないです??)

受験倍率は受ける教室によっても変わってくると思いますが、東大の臨床系の博士課程だと1.1倍で、試験内容は自由記述問題と英語が半々のようです。なので、社会医学系でも同じような感じだと思いますよ。単位認定は同じ大学のSPHの単位であれば認定されます。なので、他大学SPHの単位を東大博士課程に移行したり、東大SPHの単位を他大学博士課程に移行したりはできないです。



過去問のSubject test の精神保健の勉強に苦戦しています。例えば、2017年の問題ですが、解答したみたものの、どのように採点したら良いか分からず困っています。 QBや公衆衛生がみえるの精神保健分野に載っている内容を覚えて対応していきたいと考えているのですが、どのような対策が有効でしょうか。
採点基準は本当に分からないですよね。解答を作っている私ですら「これと同じことを全て書けば何点貰えるか?」って聞かれたら分からないです。一応、(満点とまではいかなくても)それに近い点数が貰えるような内容を作成しているよう心掛けているつもりではありますが。

どのような対策が良いかと言われると、私自身が精神科医でもなければ、精神保健に進むことも考えていなかったため、過去問の内容(subject testとgeneral test両方)で出題された内容だけは全て覚えて受験しました。本当、それら以外は一切手を付けなかったです。



いつも、ためになる情報をご提供いただき、ありがとうございます。 私は文系から行政(医療関係)で勤務していましたが、今年、東大SPHを受験予定です。 やはり、全体的に文系出身は少ないのでしょうか。
ぜんっぜん問題ないですよ!SPH生で文系卒の人は毎年数名はいます(法と文が多い印象)。是非とも東大SPHへいらしてください!



文系→行政出身でSPHとなると、多くの人は一度退職するのでしょうか、それとも人事院の研修派遣制度などを用いるのでしょうか。 ご存知でしたらご教示いただければ幸いです。
行政から来た人を見てないので(卒後に行政へ進んだ人は何人か知ってるのですが)断言はできないですが「休職」って形なのではないですかね。職を続けながら長期履修することも可能は可能ですので、職場の上司と一度相談されてみてはいかがでしょう?東大SPHの募集要項にも必要な提出書類(上司からの承諾書と、A4用紙2枚分ぐらいの履修計画書)について書かれています。尚、来年度の募集要項はあと1週間くらいでアップされると思います。ご参考くださいませ。



大学に受験に失敗してFラン大学に通っていますが、今の大学で勉強を真面目に頑張る価値を見出せません。質問はクレープ2個食べた後、ラーメンと白飯で太らないのですか?
前置きと質問の内容の乖離がハンパないですねw

ええ、正直、太るか太らないかの恐怖で震えていますw
近いうちに運動を始めます。

尚、Fラン大学(なのかは私は分かりかねますがFラン大学だと仮定して)で勉強の価値を見出せないのでしたら、辞めてしまうのも大いにアリだと思いますよ。せっかく高い授業料を支払って4年間も無駄に時間を潰すのはあまりにももったいないです。私個人的には国内に何百校とあるFラン大学は専門学校に変えて、手に職をつけさせる養成所にしてしまうのが良いと思っています。そうすれば、有意義な(それも直接将来の役に立つ)学生生活になりますし、沈みゆく日本を救う助けになります。



やっぱり東大の人から見ると地方の私立大学バカにしてますよね?
地方私立に限らず「何となく大学に通ってる」人たちに疑問は感じてますね。少子化時代の今、手に職をつける専門学校の方が生産的で素晴らしく見えます。もっと専学の地位が上がればいいのにと切に思います。



英語のリスニングに自信がないのですが、講義はどの程度が英語で行われているのでしょうか。
ほぼ全ての講義は日本語ですね。英語の授業もいくつかありますが、必修にはなかったはずです。



企業で働くことを考えたことあります?
う~ん、さすがにないかな・・・。



東大SPHで 一般企業で働きながら通われている方はいらっしゃるのでしょうか?
一般企業は見たことないですね。少なくとも私の同期は退職してから来ていました。大学や病院の研究室に所属している人なら、社会人とSPH生を並行している人は何人かいましたけどね。



元々、国際保健やろうとしてたんですよね? 国際保健の魅力って何ですか? と、いうか国際保健分野で働くってどういう仕事してるんでしょうか?
私の場合は、感染症のガイドライン作成や、Ebolaなど新興・再興感染症の対応ができるような仕組み作りをしたいと思っていたのがきっかけでしたね。魅力と言われると「必要性を感じていたから」と言うのが一番ですが、もう一つ大きなモチベだったのが「10代の時に培った国際的感覚(英語力も含め)を活かせること」ですかね。

国際保健で働くと一言で言っても、色々なやり方があります。国境なき医師団として現地で医療活動をするもよし、JICAメンバーとして現地人を巻き込んで疫学研究するもよし、青年海外協力隊でローカルの行政に携わるもよし、WHOに務めてトップダウン式に働きかけるもよし。

また、同じWHOでもD職とP職(Dの方が格上)では前者はデスクワークメインになるのに対してP職だと「各国の現場に赴いて活動する」こともあるそうで、現場が好きだからDまで昇進できるのをPにとどまっているWHO職員もいるらしいです。

結局、ご自身に合ったやり方が何なのかを見極めることが大事なのでしょうね。



筆記試験の合格発表は「東大医学部本館前の掲示板」と募集要項にありますが、つまり現地に見に行くしか合否がわからないということですか? (地方から受験する人は筆記?二次までどう過ごすのでしょう…?)
正にそう言うことになります。筆記の合格発表(たしか19時)の翌日に二次(面接)なので、面接受けること前提で上京し、合格ならそのまま面接、不合格なら帰宅。ってことになります。新幹線ならともかく、飛行機で受験しにいらっしゃる方は便をずらしにくいので、ちょっと気の毒になりますよね。倍率的に約7割の確率で落ちると言うのに。



自分20代やけど若々しくて羨ましい…
私だって気持ちは20代ですぞ!
(実際「私は20代前半だ」と言って疑われない自信はあるwww)



東大SPHは量的研究が得意なのですか?質的研究も扱えますか?
聞いたことはないですが、できないことはないと思います。現場に赴いてフィールドノーツを取るとなると、SPHよりもSIHの(神馬教授や梅崎教授の)研究室の方が慣れていらっしゃいそうな気もしますが・・・。
【追記】橋本教授の保健社会行動学教室で質的研究をやろうとしている人(いずれも博士課程ですが)が数名いることを最近知りました。うち一人が教授から質的研究について1対1で講義を受けたところ、4時間ぶっ通しで教えて貰っただけでなく「たった4時間じゃ触りの部分しか説明できなかった」と言われ、分厚い教科書を3冊渡されたそうです。なので、質的研究を扱える教室はあります!ただし、奥が深すぎてSPH在学中にできるかまでは不明です。



健総からの合格率は実質100%と書かれてましたが、以前は内部も外部も関係ないとおっしゃっていたように思います。 今年内部生が多いようですが、外部も受かる見込みはありますか?
はい。内部も外部も関係ないですよ!なぜ内部の合格率が実質100%かと言うと、単純に「全員が合格点に満ちている」ってだけのことです。決して、健総出身に下駄を履かせているわけではありません。健総の人たちは、「SPH入試の問題を作成している教授陣の授業を学部3~4年で受けており、かつSPHに進学した先輩方から受験のコツを直接伝授してもらえる」と言うメリットがあるので、このような現象が起こるのですね。

そして今年の受験生に健総上がりが多いことに関しては私も驚いています。もちろん、合格点さえ取れれば外部でも受かりますので、そこは惑わされずに勉強されてください。大事なことなのでもう一度言いますが、内部性が何人受けようが関係ありません。ただひたすら合格点に届くよう勉強すれば良いのです。

ただ同時に、今年は内部の合格率が低くなることも予想しています。どれぐらい低くなるかは根拠がないので明言は控えますが、来月のツイキャスででも「個人的予想」をコッソリ話します(ただし、ハズれる可能性も高いですがw)。
※ツイキャスは6月1日に行いました。聴きに来てくださった皆さん、ありがとうございました。



佐々木先生の授業「疫学研究と実践」の課題の書き方について教えてください。あまりに漠然と「英語論文読んで分かったこと書いてこい」的な感じなので、途方に暮れています。以下、質問です。①Tootsie Rollさんは、この課題を出す目的は何だと思いますか?②Tootsie Rollさんは記載する項目を決めていましたか?例えば「背景、方法、結果、結論、疑問に感じたところ、批判したいところ、良いと感じたところ」など。
佐々木教授の課題は、毎回テーマが与えられているハズです。「ケースコントロールを用いた論文」とか「RCTを用いた論文」などのように。それらの論文を読んでざっくり要約した上で、その論文のどこが「突っ込みどころ」なのか、そしてどこが「方法論的に優れている」のかを批判的に読むことです。ですので、

①この課題の目的はひとえに「critical readingのスキルを身に着けること」に他なりません。研究論文を書くためには既に世に出ている論文を「正しく読み解く」能力が求められます。ただ書いてあることを鵜呑みにするのではなく「方法論的に正しいか、結果の解釈が正しいか」を客観的視点で見つめなければならないのです。この課題を毎週こなして「論文読解力」を身に着けましょう(期日に間に合わなくても良いので毎回必ず提出することをオススメします)。私からすればSセメスターだけで終わってしまうのはいささか足らないと感じるぐらい、ためになる課題および授業内容でした。

②背景・方法・結果・考察・個人的感想の5項目に分けて、A4用紙1.5ページ前後書いてましたね。前者4つについて0.5ページ強ぐらいでまとめ、残り1ページ弱を個人的感想に割いていました。恐らく、教授が一番見ているのは個人的感想の内容、二番目がテーマの面白さだと思います。私は「批判するあまり『重箱の隅をつつく』内容にならないように」することと「賞賛すべきポイントがあれば、それもガッツリ明記」することを常に心がけていました(結果、2回発表者に選ばれました)。


そして、Aセメスターになるといよいよ、康永教授の臨床疫学演習の授業で「論文を書くトレーニング」をバリバリやってくださいます。書き方のコツを教えてくださるだけではく、実際に手を動かして書かせ、それを授業中に評価してくださる、超画期的な授業です。

よって、「読み」の練習ができる佐々木教授の授業、「書き」の練習ができる康永教授の授業はセットで取るべきだと思っています。頑張ってください。



東京大学以外の公衆衛生学教室でオススメのところなどありますか?
公衆衛生学「教室」ではなく、公衆衛生学「大学院」のことをお聴きになりたいのだと思われますが、東大以外なら京大ですが、何を重点的に学びたいかでまた変わってきます。例えば、感染症疫学を学びたいなら北大、国際保健なら長大です。災害医療なら東北大と聞いたこともあるような。




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