ブロンコビリーというステーキやハンバーグ専門に鉄板皿で出してくれるチェーン店が私の住んでいる地域にはあるのだが私と友達はたまにハンバーグを食べにいっていた
毎度いくたびにガンコハンバーグという円柱状に横たわったハンバーグを頼んでいて店員が席まで持ってくると目の前でそのハンバーグ真っ二つにしてくれて鉄板皿に押し付けジューっと押し付け焼き目をつける。これで完成である
その後ステーキソースをかけるのだが私達はこのソースが好きで来ていたようなものだった
ソースをかけると蒸気とともにいい香りがしていた
だがある日のこといつものように私はソースをかけて蒸気を浴びていると
蒸気の向こう側の友達が手に塩をもってこう聞いてきた
「これ(塩)使ったことある?」
ソースが好きで来ているのに使うわけなどなかった
「いや、ないけど…それで食うの?」
逆に聞き返してみた
「ソースもさ、まぁいいんだろうけど素材の味や旨味を楽しみたいならこっち(塩)だよ?」
いったいこのファミレスで何がしたいのか、誰に感化されたのかしらんが若干上からの物言いだった
「へええうまいんかねぇ…」
そもそもが良い肉ではないからこそミンチにしてさらにごまかせるからこそのソースだろうと思ったがくだらない理屈を通して場を濁したくなかった
友達はこれぞ通の食べ方といわんばかりに少し高い位置から塩をまるで魔法の粉でもかけるかのようにサラサラとおとしていった
真剣な眼差しを1000円そこそこのハンバーグに注いでいた
だが食べ始めると
「焼けてねぇ……」
と言いだした
見ると確かに赤く、中は冷たいらしい
ミディアムを頼んだのだけどレアより焼けていなかった
どうやら鉄板皿が原因らしく全然熱くなっていなかった
すぐさま店員を呼び焼けてないと言うと店員のお姉さんも戸惑ってはいたが申し訳ありません分かりましたといって皿を厨房へトコトコもっていった
そして待ちながら世間話をしているとだんだん友達の様子がおかしくなってきた。私のさらに向こう側の厨房をずっと見ている
「遅い……ていうかあそこでずっと焼かれてるの俺んじゃね?」
見ると確かに外から見える位置に焼き場がありそこでもくもくと煙を上げている
「流石にあれはないだろ、あれからずっと焼いてたとしたら原型なんてもうないぞ」と私は答えた
「いや、あれだ俺ずっと見てたもん」
私「そおかぁ?」
友達「やばい…やばいよ…あれ…あ…」
私・友達「「来た!!」」
もくもくと焼かれた何かは一切の寄り道をせず真っ直ぐ私達のテーブルへと運ばれた
だが私は友達がここで簡単に引き下がる性格じゃないことを知っていた
きっとこの灼熱の黒い塊に対して必ず何かしらいうはず、これは見ものだと思った
きっと「こんなものミディアムじゃないこんなのくえるか」とでも言うつもりだったと思う
だが友達が口を開くその刹那、かぶせるように店員のお姉さんはこう告げた
「お待たせしましたウェルダンです☆」
ここで誰も待っていなかったウェルダンさんの登場である
これはお姉さんが勘違いをしてウェルダンにしたのかはたまた図らずも真っ黒く焼いてしまって後付けでウェルダンですといっているのかそれさえも分からなかったが私はとにかく笑っていた
完全に先手を取られた友達も私が笑っているのをみて笑ってしまっていた
だがこの中でお姉さんだけは単独ハンバーグから目を離さず手を緩めなかった
私達が笑っている間に私が予備的に残しておいたソースを手にとり「では、かけていきますねー☆」といってソースを全て友達のハンバーグにシャーっとかけて立ち去っていった
友達と私の間にはまたいつものいい香りの蒸気が立ち上っていた
こうして友達の大人への第一歩である塩でいただくという野望も打ち砕かれた
だが彼の顔をみるとそこには店に対する怒りや、ハンバーグ通としてのプライドなどは消え去っていた
目の前には出されたものを粛々と食べる紳士がいた
挫折は人を成長させるビタミン剤、一個の人間としてまた一皮むけたなぁと関心しました☆