雀荘で働いたことがあるがその時のこと
店はオーナー、店長、店員のおっさん(見た目ジジイ)と私の4人で回していた
オーナーはほぼ客としてきていたので勤務時に共に働くのは店長かジジイのどちらかだった
ジジイはオーナーからも店長からもあまり良く思われておらず、なんでここで働いているんだろう?と少し疑問だったが店長に聞くとオーナーに借金があるとかで働かざるをえない状態だったらしい
華奢な体で白髪の行き場のないジジイに少し同情した
しかし実際に彼と共に働くとほんとにうざったくていとも簡単に先ほどの同情とかも忘れさせてくれた
逐一うるさく自分は何もしないという意味不明なスタイルを貫いていて話もつまらない男だった
ある時彼は私にこうたずねた「東濃さんなんで私があなたをクンではなくサン付けでよんでいるかわかる?」もうこの質問の仕方自体でうざさのレベルが伝わると思う。どっちでもいいわと思いながらも一応返してあげた「え…どうしてなんですか?」壁パスのような会話である
「あのね僕らはキャリアや年齢も違うけどここで一緒に働けばただの同僚なの。それ自体に上も下もないよね、だから僕は君が誰だろうと一人の人としてサンを付けるの」
なぜかジジイのくせに一理ある説明で変に納得できた
きっと彼もすさんだ人生の中で屈折していってしまったんだと思う。けれど一つ人としての礼儀をポリシーとして持ち続けて来たんだと思った
私の中でのジジイを見る目が少しかわった
そうこうしているうちにお客さんがきた
私とジジイとお客さんで三人麻雀がはじまった
ジジイは地味な皿洗い等の仕事は嫌がるが接客ともなれば相手の靴まで舐めかねないほどのピエロとなる
ある意味接客業店員の鑑だ
その日もチューチューとネズミのなきまねをしながら卓を囲んでいた
実際の顔が痩けていて背も低く元々ネズミっぽいのだからいちいちなきまねなどしなくても十分ネズミだった
ジジイはお客に対してそうやっておどけてみせるがそれをみて笑った客は私がいる間は一人もいなかった
それから二時間ほどたったが一向にジジイはネズミのなきまねをやめる気配がない
「~だチュー」「~チューよね」語尾にチューチュー付けているのもうざったらしいが一番イラっとくるのはなんの脈絡もない状態からの「チューチュー♪」とかいう謎の発声だった
(こいつ今日1日チューで通す気か…)そんな不安が漂う中、前局の軽い検討を客とジジイがしはじめた
ああだったらこう、こうだったらああだった…内心やかましいわと思いながら聞いているとジジイがこっちを向いて私に話をふりたそうにしていた
こっちをむいて「あ…え…」私は即座にジジイは今私の名前をド忘れしていることを察した
クンだのサンだの付ける前に名前を忘れてしまったのだ、とんでもない奴だが歳も歳だし仕方ないことだと思った
まがりなりにも心には礼儀は持っている男、実際名前など忘れてようが呼び方などいろいろあるのだ、君、あなた、お前…何でもよかった。
なぜなら我らは同僚、上も下もないといってくれたそれだけで私はよかったのだ
「ね…ねぇ…ちょと…ボクー?」
(ボク?!?!?!?小学生にでも話しかけてんのかてめぇ!!!!!)
その後もジジイは私の戸惑いをよそにチューチュー♪とブリっこしていた
もう二度とジジイの講釈にとりあわないと誓いました