今日(2022.07.22)、岐阜新聞から引用されたニュース。
小学生が、5年間飼育してきたトゲナナフシ(画像、学名 Neohirasea japonica)の集団の中に初めて雄を見つけて、昆虫博物館に寄贈した。
Wikimedia Commons より転載(明るく処理)
これまで国内で雄が発見された例は、野生個体の捕獲で1件、飼育下で1件しかなく、寄贈を受けた博物館の館長は「生きた状態で見るのは初めて。まだ謎が多いトゲナナフシの生態を知る上で大変貴重な資料となる」と述べている。
トゲナナフシについて、今日時点での Wipipedia(日本語サイト)では「本種は雌のみが知られており、単為生殖するものと考えられている」とあるが、雄の存在についての修正が求められる。
このニュースで思い浮かんだのが、分子遺伝学や発生生物学の研究材料に広く用いられてきた線虫の1種、Caenorhabditis elegans。
Wikipedia より転載(コントラストを上げている)
私も研究で扱ったことがある生物。
C. elegans は長さ 1 mm ほどで、寄生性ではなく自由生活性で、土壌中で細菌を食べている。
実験でも、直径 6 cm のシャーレの寒天培地表面に大腸菌を生やし、そこに C. elegans をピッカーを用いて植えていた。
ほとんどの個体は雌雄同体で、1匹だけ植えた場合でも自家受精で増える。
雄の割合はおよそ 0.1%(千匹に1匹)とされる。
シャーレに C. elegans が数百匹にまで増える頃には餌の大腸菌もなくなるので、ピッカーで新しいシャーレに植え継ぐ。
確かに、雄は滅多に見つからなかった。
雄は、尾の先端にかぎ状の交接器があるので、それを目安に探す。
シャーレに数十匹程度しかいないのであれば見分けやすいが、雄は千匹に1匹ではまずいない。
数百匹に増えれば1匹いるかもしれないが、ウジャウジャして見つけるのは困難。
だから、雄を見つけた時は、四つ葉のクローバーを見つけたような感じ。
C. elegans の体は透明で、受精卵が細胞分裂していく発生過程を細胞レベルで見ることができる。
普通、受精卵は産卵後に孵化するが、観察していると時々、親の体内で孵化した幼虫が何匹も泳いでいるのが見えたりする(worm bag)のは気持ち悪かった。