こちら何と言っても、ひと際異彩を放つのが、狛猪像の存在。狛犬ではないですよ、猪（いのしし）なんです。いろいろな神使は数あれど、これまた変わった神使であります。それでは、何故か？と言われれば、それは、当社に祀られている、とある人物と深く関わってくるのです。それが、和気清麻呂公（わけのきよまろ）なる人物です。
因に、和気清麻呂公と聞いて、すぐに、「あぁ、あの人かぁ」と言える方は、上級者ですね、多分。特に、関東の人間で、分かる人は、神社や歴史が好きな人くらいでしょう。多分、その位の知名度だと思います。でも、ちょっと前まで、もの凄く有名な方だったんですよ。何せ、10円紙幣に肖像画が使われていたくらいですから。
では、そんな和気清麻呂公とは、どんな人物かと申しますと、簡単に言えば、天皇の皇統を守った人物となります。そう日本は、皇統あっての国家を形成している以上、それは言い換えれば、日本国という国家を救った人物と言い換えられることができるのです。そりゃあ、お札にもなりますよ。
それでは、どうやって守ったか？と言いますと、それは、以前のオモシロ神社情報でもお話した弓削神社（ゆげじんじゃ）の祭神、弓削道鏡と深く関わりがあります。弓削道鏡は、看病禅師であり（詳細はオモシロ神社情報Vol.27をご参照ください）、その力をもって、天皇の信任を取り付けることに成功します。
そして、あろうことか、宇佐神宮を通じて、道鏡を皇位へと推す神託が発せられ、危うく皇統が乗っ取られる危機がありました。これが、世に言う、宇佐八幡宮神託事件であり、道鏡事件とも言われるものです。そんな道鏡の思惑を察知し、宇佐にまで出向き、その思惑を看破したのが、こちら和気清麻呂公となるのです。
そうです、もし、ここで道鏡がうまく、皇位に就いてしまったら、現在まで125代続いた皇統は、寸断され、危うく血族たる意味を失いかねない状況だった訳ですね。
そんな和気清麻呂公も、「皇位に就けるのは、皇族以外の何者でもございません。そんな不敬は追放しなさい」という神託を受けましたと、正しい主張をした訳ですが、当時の称徳天皇も道鏡を皇位に付けたかったのではと言われており、何故か、天皇からも不遜を買い、大隅国（現在の鹿児島あたり）に流罪を言い渡されてしまうのでした。
そんな和気清麻呂公が、宇佐へ向かう道中、その張本人たる道鏡は、刺客を差し向ける訳です。しかし、そんなピンチに遭遇した時に、突如として300頭の猪の大群が現れ、難を逃れたと言います。そうです、ここで、同社が、猪を神使とした理由が分かりましたね。猪は、和気清麻呂公を救ったのです。
そんな不遇な和気清麻呂公も、称徳天皇が崩御された後は、道鏡も失脚し、次の光仁天皇により従五位下に復位されたという、何ともスゴい事件が、奈良時代に繰り広げられていた訳ですな。
ですので、同社の境内には、その縁起もあって、和気清麻呂公の像もあれば、狛猪像もある。何より、日本中の猪グッズ？が納められております。その数を聞いたところ、数えた事がないとおっしゃってましたが、少なくとも3,000点以上の猪グッズが展示してあります。
しかも、正月2日には、なんと、白い猪を境内に招いているそうです。私も白い猪は見たことがありませんが、あるんだそうですよ。まさに、もののけ姫な存在ですね。私も一度、拝んでみたいです。
そんな護王神社、猪にあやかって、身体の足腰の健康や病気平癒、また、一緒に祀られている和気清麻呂公の姉君、和気広虫姫（わけのひろむし）が、孤児救済事業に携わっていたという由来から、子育大願といったご利益まで、幅広いご神徳があることで、人気を集めております。
個人的には、草食系男子の多い世の中、護王神社で、猪パワー、猪突猛進で、肉食魂を得なさい！とか思ったりもしています（笑）。いや～、知らない歴史は多いですね。流石は、京都、奥が深いです。
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