『箱男』(安部公房/著)を読了。

 

 

何のことなのかまったくわからないままページが進み、誰の話なのか、何を言っているのか、このセリフは誰のものなのか、頭の中がぐるぐるしているうちに、本当に眩暈がしてきて、夕方から寝込んでしまった。

ようやく読み終えたものの、時間と空間の認識がずれたような、へんな乗り物酔い、といった感覚の中にいる。

 

何なんだ、これは。

 

ただひとつ感じたことは、安部公房はタイムマシンに乗って、未来を見た人ではないかと。

箱男は、どこかインターネットの世界に依存している現代人のように思えたので。

他人の発言や生活を逐一チェックし、自分という存在が見えないことを利用した立ち居振る舞いが、箱に設けた覗き穴から異様な目つきで見ている様子にとても似ている。

もしかすると、箱男のモデルは、熱心にスマホの画面に見入っているあなたかもしれない。そして、その近くには、ねっとりした視線であなたを見つめる安部公房……。

 

怖い。お化けより怖い。