5月27日

​双子座♊︎新月


この新月は「言葉・伝達・好奇心・新たな学び」がテーマのとき。

双子座は“香り”や“記憶”を運ぶ風のサイン


今日は風がやさしく吹いている。

新月。

月が空で、いちばん静かに輝く夜。


チャップは窓辺に座りながら、じっと風の音に耳をすませていた。

古い屋根裏部屋のガラス窓の向こうで、風が草の匂いを運んでくる。

少しだけレモンのような香りが混じっていた。

――あれは、ミナが植えたレモンバームだ。


双子座の新月の夜は、風がことばを連れてくる。

古い記憶も、これからの予感も、

風がすべてを撫でるように、そっと運んでくれるのだ。


チャップの前に広がるのは、調香の庭。

月とハーブと魔女の記憶が眠る場所。

そして、今はもういない“ミナのおばあちゃん”が大切にしていた庭。


「香りには、ことばにならない想いが詰まっているんだよ」


そう教えてくれたのは、あの人だった。


今夜は、双子座の風が吹いている。

チャップは感じていた。

“何かが、はじまる”ということを。


古い鍵の音がして、階下の扉がそっと開いた。

空気がゆるく震える。

誰かがやってきたのだ。


チャップはゆっくりと立ち上がり、音のする方へ歩き出す。

ひとつの香りが、新しい物語の扉を開こうとしていた。