雨上がりの夕方。
ルミエールの窓を開けると、
濡れた土とハーブの香りが静かに流れ込んできた。


チャップは入口のそばで、
風に揺れる小さな紙を見つめている。


「本日の月読みノート
ご自由にお持ち帰りください」


焦る日は空を見上げて✨

眠れない夜は白湯を飲んで気持ちを

落ち着かせて✨


そんな短い言葉を、
最近は楽しみに持ち帰る人が増えていた。


牡羊座の新月は、
“はじまり”の月✨


大きな決意ではなく、
「少しやってみたい」
そんな小さな気持ちを灯す夜。


閉店後、
toccoは奥の席でノートを閉じた。


もっと誰かの話を聞いてみたい。
星や月だけではなく、
その人の心の季節まで。




ただ、
月を読みながら
「大丈夫ですよ」と伝える時間が好きだった。


その時、扉のベルが小さく鳴る。


「今日の月読みノート、ありますか?」


最近よく来る女性だった。


toccoは少し驚き、
やわらかく微笑む。


「はい。今日は新月なので、特別版です」


窓の外には、見えない新月。


見えないからこそ、
静かに育っていくものがある。


チャップは目を細め、
灯りのともるルミエールで喉を鳴らした


小さな灯りは、
少しずつ、誰かを照らしはじめていた。