年が明けて間もない夜。

空気は張りつめ、世界はまだ静かな呼吸をしている。

冬の森の上に昇ったのは、ウルフムーン🌕


一年で最初に満ちる、原初の記憶を宿した月だった。


蟹座の満月は、「守ること」「帰る場所」「心の根」を照らす。

それは外へ向かう光ではなく、

内側を満たすための満月。


チャップは、カフェ・ルミエールの裏庭に座り、

雪の名残が残る土の匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。

遠くで風が鳴る。

それは、昔から狼たちが月に向かって声を上げてきた理由を、

そっと思い出させる音だった。


ウルフムーンは、孤独の象徴ではない。

群れを想う月だ。


誰かを守りたい気持ち。

居場所を失いたくない願い。

そして、何度でも「ここに戻ってきていい」と自分に許す力。


チャップのそばには、

カモミールとレモンバームが小さな束になって置かれていた。

心を緩め、感情を温めるハーブたち。

蟹座の満月に、これ以上ふさわしい香りはない。


月明かりが、彼の背中をやさしく包む。

射手座新月で始まった旅、

山羊座の月で形を持ちはじめた決意。


それらすべてを、

今夜の蟹座満月はこう告げる。


――急がなくていい

――まずは、満たしなさい


チャップは目を閉じ、

これまで出会った人、言葉、月の夜を思い返した。

胸の奥に、ぽっと灯る温かさ。


「ぼくは、独りじゃないにゃ」


その気づきは、新年の誓いよりも深く、

未来への約束よりも確かだった。


ウルフムーンは、

新しい一年に問いを投げかける。


「あなたは、どんな“居場所”を育てていきますか?」


答えは、今すぐ出なくてもいい。

この満月は、ただ抱きしめるためにある。


月は高く昇り、

白い光が庭を、森を、世界を静かに満たしていく。


こうしてチャップは、

“進むために立ち止まる”という、

新しい年の最初の知恵を受け取ったのだった。


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