夜の帳が静かに降り、紫陽花がそっとうつむく頃、チャップはカフェ・ルミエールの裏庭に佇んでいた。


雨は降ったり止んだり。湿った空気の中に、ふわりとジャスミンの甘く澄んだ香りが漂う。


月の姿は見えない。けれど、空は確かに新月を迎えていた。


“見えない月の夜には、自分の内側に光を灯すのだよ”と、昔ルミ婆が話していたことをチャップは思い出していた。


「新しいはじまりの夜だにゃ……」


蟹座の新月は、“家”や“心の居場所”にまつわる想いを呼び起こす。

チャップの中にも、あたたかくてやさしい場所を求める気持ちがふつふつと湧いていた。


雨粒がジャスミンの葉に落ち、庭のランプがそれを優しく照らす。

どこかで控えめに鳴く虫の声が、静かなリズムを刻んでいた。


チャップはそっと、カフェのガラス扉の前に座った。

中では灯りの下、ルミ婆が何やらハーブを束ねているようだ。ラベンダー、レモンバーム、そして月のない夜に捧げる“クラリセージ”。それらが放つ香りは、まるで心にやさしく語りかけてくるようだった。


チャップは、目を閉じて小さく祈った。


「いつかぼくにも、本当の“帰る場所”ができますように──」


しんとした新月の夜。雨音が少しだけ強くなり、紫陽花がまた一輪、ひっそりと咲き誇っていた。





🕯蟹座新月のワンポイントメモ♋︎



  • 自分の内面に耳を傾け、心の奥にある“本当に大切なもの”を見つめる日。
  • 心地よい香りやハーブティー、ゆったりとした時間で心の「居場所」を整えるのが◎
  • 紫陽花やジャスミンは「静かな感情」と「再生」の象徴。新月の夜にぴったりの植物です。