9月の長い雨が、ようやくひと休みした夜。
ルミエールの庭には、
雨粒を抱いた草花が静かに揺れていました‥‥
チャップは窓辺に座り、
澄みはじめた夜空を見上げています。
そこには、まあるい月✨
「きれいだね」
チャップが小さくつぶやくと、
toccoも隣に腰を下ろしました。
「雨がたくさん降ったから、
今夜のお月さまは、いっそうきれいに見えるのかもしれないね」
チャップは、しばらく月を眺めていました。
9月の始めは、
雨音を聞きながら過ごした日々✨
思うように進まないこともあったけれど、その時間の中で、少しずつ身の回りを整えてきました‥‥
古いものを片づけたり、
後回しにしていたことをひとつ終わらせたり‥‥
ほんの小さなことだけれど、
心の中にも少しずつ余白が生まれていました。
toccoは月読みノートを開きます🗒️
前の頁には、乙女座新月の日に書いた言葉。
「急がなくても大丈夫。
整えながら、次の季節を迎えればいい。」
その下に、今夜の言葉をそっと書き足しました。
「そろそろ、心の向くほうへ歩いてみよう。」
チャップは、ノートを覗き込みます。
「歩くって、遠くまで行かなくちゃいけないのかな?」
toccoは微笑みました。
「ううん。
今日できる、小さな一歩でいいのよ」
庭に出てみる‥‥
気になっていた花を植えてみる‥‥
会いたかった人に、便りを送ってみる‥‥
ずっと心にしまっていたことを、
ノートに一行だけ書いてみる‥‥
そんな小さなことでも、
心が向いているほうへ進んでいける✨
チャップは、雨上がりの石畳を歩きました。
足元の小さな水たまりには、
夜空の月が映っています。
空を見上げなくても、
こんな近くに月があったのです。
「ここにも、お月さまがいるね」
チャップの声に、
toccoは優しく頷きました。
遠くを見つめることも大切。
けれど、ときには足元にあるものに気づくことも大切なのかもしれません。
今日まで歩いてきた道。
そばにいてくれた人。
何気なく過ごした時間。
そのひとつひとつが、
これからの自分をそっと支えてくれるのだから。
満月の光が、
雨上がりの庭をやさしく照らしています。
チャップはルミエールを振り返りました。
窓からこぼれる、いつもの灯り。
帰る場所があること。
そして、また歩いてみようと思えること。
そのどちらも、なんだか嬉しく感じられました。
toccoは最後の一行を綴ります。
「明日は、今日よりほんの少しだけ、
心が嬉しくなるほうへ。」
チャップは尻尾をゆっくり揺らしながら、
月明かりの庭を歩いていきました。
長い雨のあとに訪れた、
静かな秋の夜。
新しい季節は、
大きな音を立てることなく、
いつの間にか、
そっと始まっていました。🌕🐈🍂
