石畳の小道に、白銀の月光が降りそそいでいた。
それはまるで、空から差し出された一本の橋。
チャップは静かに、けれども力強く、その橋を歩いていく。
この日は山羊座の満月。
現実を見つめ、過去を振り返り、これからの道を定めるとき。
月の魔法に精通するルミエールの植物たちも、ひときわ深い香りを漂わせていた。
「今日は満月。チャップ、見つけたかった“あの本”はどこかしら?」
ルミエールの奥にある古びた本棚。
チャップはそこで、一冊の薄い本を見つけた。
表紙には、月のマークと一匹の猫の影絵。
『約束のレシピ帳──月と猫と、魔法の記憶』
本を開くと、懐かしい香りがふわりと漂った。
ラベンダー、サンダルウッド、そしてタイム。
それは昔、チャップと月の魔女が交わした「秘密の香り」だった。
本の中には、こう記されていた。
『山羊座の満月には、一度古い約束を
思い出しなさい。それは、あなたを
未来へと運ぶ灯りになるでしょう』
チャップは静かに目を閉じた。
忘れかけていた魔女との約束。
それは香りのレシピを守り、人々の心に
寄り添うことだった。
『今夜、また始めよう。小さな香りの魔法を。』
そしてチャップは、再びハーブ棚へと
向かった。今日の満月に選ばれたのは
クラリセージ。
『真実を語る香り』それは心の奥に眠る願いを目覚めさせる力をもつ。
チャップはそっとクラリセージの葉を
噛んだ。
風が静かに揺れ、月明かりがより一層輝いた。
遠くから誰かの足音が聞こえる。
それは、ずっと前にルミエールを訪れた
ある来訪者の音だった……
「山羊座の満月には、いちど“古い約束”を思い出しなさい。
それは、あなたを未来へと運ぶ灯りになるでしょう。チャップは静かに目を閉じた。忘れかけていた魔女との約束。それは、香りのレシピを守り、人々の心に寄り添うことだった。
