― 誰かと分かち合う光 ―
春の光が、やわらかく広がる午後。
カフェ・ルミエールの窓辺には、
淡いピンクの花が静かに揺れていた。
「ピンクムーン」
そう呼ばれる満月の夜は、
桜や春の花々とともに、
世界がやさしく色づく季節。
チャップは、いつもの席ではなく、
今日は少しだけ入口の近くに座っていた。
扉が開くたびに、
春の風と、人の気配が入ってくる。
天秤座の満月は、
「ひとりでいる自分」から、
「誰かと関わる自分」へと光を当てる月。
これまでチャップは、
月と向き合い、自分を整えてきた。
でも今日は、少し違う。
隣に座った誰かが、
ぽつりとつぶやいた。
「なんだか、うまくいかなくて…」
その声は小さくて、
けれどどこか、チャップの心に触れた。
特別なことはできない。
答えを持っているわけでもない。
それでもチャップは、
ただそばにいて、
静かにしっぽを揺らした。
春の光の中で、
ふたりの間に、やわらかな空気が流れる。
天秤座の満月は、教えてくれる。
――バランスとは、完璧に整うことじゃない
――違うもの同士が、やさしく寄り添うこと
窓の外では、
花びらが風に乗って舞っていた。
誰かといることで、
自分の輪郭が、少しだけやわらかくなる。
自分を大切にすることと、
誰かを思うことは、
きっと同じ場所につながっている。
夜になり、
ピンクムーンが空に昇る。
ほんのりと色づいたその光は、
競うためではなく、
分かち合うための光。
チャップは空を見上げ、
そして、すぐ隣のぬくもりにも気づいていた。
物語は今、
「ひとりの時間」から
「誰かと紡ぐ時間」へ。
やさしく、静かに、
次の章へと進んでいく。
