『スーパーカブ: ススム』 作・トニーコーケン
今は昔。
とあるバイク屋にホンダのセールスマンがやってきて言った。
「スーパーカブで富士山の頂上を目指したんだけど、失敗しちゃってさ。
誰かやってくれないかな〜 専務の命令なんだけど〜」
それを聞いた若い店員の中に、富士山に6回も登った22歳の青年がいた。
「なら、俺がやってやんよ!」と自信満々だった。
青年の名は「ススム」。
セールスマンは、ホンダの提供としてカブをパワーアップする特別なパーツを提供してくれた。
それはヒルクライム競技用のスプロケットとブレーキ、イボイボのついたノビータイヤ。
ススムは店のカブを借り、「富士登山仕様」に改造し、8月4日を迎えたのだった。
1963年8月4日未明。
ススムは白装束で富士山本宮浅間大社に参拝。
湧玉池で身を清めると、スーパーカブ50に跨った。
富士宮からの登山口は二合目までは車道が整備されていたが、そこから先は歩いて登るしかない登山道だ。
登山道をカブで上がるのは、今ならNGだが60年前なら問題なかったらしい。
ススムは二合目で仲間と合流した。その中には心配してついてきた彼女の「キミ」もいた。
登山客が見守る中、スペシャル仕様のカブは、グイグイと坂道を登った。
カブには大きなスプロケットが付いていて15度の登坂力がある。
タイヤはイボイボが付いたトレール用になっている。マフラーは
社外品の二本出し。
しかし順調だったのは最初だけで、すぐに富士山はススムの前に立ちはだかったのだった。
標高が高くなるにつれ、空気が薄くなりエンジンがかぶってしまう。
タイヤは火山礫に沈みがちで空転することもしばしばだった。
キャブレターの調整、タイヤの空気圧を変えながらゆっくりと着実に。
段差が厳しい所はカブを押したり、ロープを使って登った。
ススムの父親は山小屋に荷物を運ぶ「強力」(ごうりき)をしていたから、山小屋の人達は歓待してくれて味方になってくれた。
仲間たちに助けられながらススムは山頂出前まできた。
途中、キミが体調不良になり九合目の山小屋に置いてきたことだけが気がかりだ。
あと一息。
ススムは頂上までわずか50メートル程のところで、一息入れようと立ち止まり頂上を見上げた。
すると、山頂付近にいた数百の人達が嵐のような拍手で迎えてくれた!
ススムは息をつく間もなくエンジンを唸らせ一気に最後の坂道をかけ登った。
人々のバンザイを聞きながら登頂の喜びと感激にグッと涙をこらえた…
40キロの道のりを12時間かけて登ったススムはスーパーカブで富士山の山頂に立った最初の人になったのだ!
山頂の浅間神社に参拝し、記念(証拠)の写真を撮った。かねてから用意してあった「頂上 ホンダ スーパーカブ」の紙を鳥居の前に掲げて。
ススムは下の山小屋に置いてきたキミのことが気になって、お鉢めぐりを済ませると早々に下山することにした。
富士山は登るのも大変だが、実は下りはもっと大変だった。
それは滑落する危険があるからだ。
とりわけ「胸突き八丁」と呼ばれる九合目の道は乗ったままでは下れない。
ススムは持ってきたロープを使い、後ろから仲間たちに引っ張ってもらいながらゆっくりと下った。
「ススム、頑張ったわね。」
九合目の山小屋でキミと再会した時に、山頂についた時とは違う嬉しさが湧いてきた。
無事に下山し、くだんのホンダのセールスマンに写真を渡して、富士登山の様子を報告。
その快挙はホンダが出していた『フライング』という雑誌に掲載されたのだが…
なんと、ススムが富士山頂に到達した16日後にホンダは別のチームを富士山山頂に向かわせていたのだ。
かたやプライベートチームのススムに対し、ホンダワークスチームは、新型の「ハンターカブCA105T」を2台と市販前のモンキーを投入し盤石の構え!
いくら専務の命令と言っても、やることがえげつないぞ、ホンダ。
いずれにしても、歴史は変わらないという事で「めでたし、めでたし。」
(完)
・・・以上、実話をもとにした創作です!
アニメ化?
ということで、今年も・・・
第十三回 鍋田記念・スーパーカブ富士山ヒルクライムラン2024
スーパーカブで富士山頂に達した鍋田進さんの偉業を称えて実施するイベントです!
※2021年9月以来三年ぶり四回目のコースです。
1.開催日: 2024年9月29日(日曜日)
AM10時00分集合
雨天中止(9月28日PM5頃に決定)
2.集合場所: 道の駅すばしり
住所:静岡県駿東郡小山町須走338-44
3.募集定員: 50名程度
4.目的地: 富士山 須走口 新五合目(標高1,960m)
5.コース: 道の駅すばしり→ 富士あざみライン → 須走新五合目
6.スケジュール
集合時間: AM10時00分集合
AM10時30分過ぎにヒルクライム開始
AM11時30分 新五合目到着
7.参加資格:
カブおよび原付バイク中心。(その他二輪も参加OK)
クラス別にチーム編成し、無理なく頂上を目指しましょう。
8.参加費: 無料
9.食事: 道の駅すばしり等にて
10.諸注意・その他:
・ガス欠に注意。事前に満タンにして参加してください。
(とくに50cc)
・エンジンに負担がかかるコースなので事前のオイル交換など車両整備をお勧めします。
・事故・怪我・故障などは各自で対応してください。主催者は責任をもてません。
・スケジュールは変更する場合があります。
・トランポで参加もOK(自己責任)
・・・連絡は私まで
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