ロミと妖精たちの物語313 Ⅴ-112 愛の奇跡① | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

 

ザ・ワンの十字架の上に女神像が甦ると、外銀河から来たドラゴン、ペルセウスが守り続けてきた悲しき魂たちは、無事にそれぞれの神の国へと昇ることが出来た。

 

そしてそのまま、ロミと妖精たちが送り続ける愛と癒しのエンパシーのエネルギーによって、ミイラのように小さくなっていたドラゴン・ペルセウスは生気を取り戻し、愛の妖精の腕の中から自力で起き上がった。

 

でもそれは、TSウイルスの危機に地球を救ったチームのひとり、あの陽気なドラゴン、大男でハンサムなペルセウスでは無かった。

 

「ファンション、この人は?」

起き上がった男を見ながらロミは聞いた。

 

「そうよロミ、ペルセウスの魂は今、私の乳房の中で眠りに付いたの」

ファンションはトーガの中に胸をしまいながら言った。

 

そして彼女は、ロミの前に呆然としているやせた男の身体を優しく抱いた。

 

その男は表情を変えることも無く、ただロミの顔を見ていた。

まるで魂を失ったアンドロイドのように、その視線を動かすことも無くロミを見ていた。

 

「ペルセウスはね、ケーイチローさんの魂を連れ帰るとき、この人の身体の一部も持ち帰ったのよ、宇宙空間で死にかけていたこの人のアレを、飲み込んだのですって」

 

「それじゃこの人は」

 

そう言いかけたロミに向かって、フィニアンが話を続けた。

「さあロミ、今からファンションが取り替えっこの秘術を行います」

 

フィニアンはファンションに変わって男の身体を支えた。

「いいですかロミ、この男の魂を返してあげるのです」

 

ロミはフィニアンの言葉に状況を理解すると、トーガを脱ぎ下ろし、マリアが隠れていた右の乳房ではなく、左の乳房をファンションに向けた。

 

見守っていたマリアはドラゴンボウルに祈りを捧げ、そこから発する虹色の光がロミと男の身体を護り包むと、ファンションは右手に持った勾玉をロミの乳房にあて、左の手のひらを男の額にあてた。

 

取り替えっこの秘術を使うシーオークの妖精でもある愛の妖精は、目を閉じて無心となった。

 

そして、いたずら妖精ガンコナーの長でもあるフィニアンは、取り替えっこの秘術、チェンジングパートナーの電気的ショックに耐えられるように、そっと、優しく、ロミの意識をオブラートで包むようにして、取り替えっこの歌を唄った。

 

 

 

 

 

 

勾玉から発するパワーは、ロミの控えめな乳房を固く膨らませ、そこから魂を載せたある種の電磁波が火花のように浮き上がると、それは一瞬にして、ファンションんの右手から彼女の身体を触媒として通り抜け、左の手からアンドロイドのような男の額にめり込んだ。

 

すかさずフィニアンは、気絶して倒れかかったロミの裸身を抱きとめて祭壇に上がり、十字架に背をもたれさせると、いつものように安全にロミの目を覚まさせようとつま先にキスをした。

 

こんどもロミの目覚めのキックを無事に避けてかわしたフィニアンは、そっと優しく父親のように、彼女に黄金色のトーガを着せてあげた。

 

「あら、フィニアン左の胸が痛いわ、いったい何があったの」

 

フィニアンンは黙ってロミの手を取り、祭壇から彼女を誘導した。

 

そしてロミは、目の前に呆然と立ち尽くしている痩せた男を見た。

 

目の前に現れたロミの姿を確認した男は、左右で支えてくれているファンションとマリアを見てから、すこし照れくさそうに、はにかんだ表情でロミに視線を戻した。

 

「まあ、あなたひょっとして、ケージなの?」

ロミを見つめていた彼は、笑みを浮かべ、小さく首を縦に振った。

 

ロミは満面の笑みで、年の離れた従兄ケージ・エジマを抱きしめた。

 

 

次項Ⅴ-113に続く

 

 

(写真と動画はお借りしています)