ロミと妖精たちの物語249 Ⅴ-47 死と乙女㊲ | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

 

 

再び祭壇の十字架に磔(はりつけ)となってしまったメグミ、周囲に並ぶロウソクの灯りを受けて、八ヶ岳の修行で鍛え上げた彼女の引き締まった白い裸身は暗闇の中に浮かびあがった。

 

その神々しいほどに輝く美しさは、まるで中世の芸術作品のようであったが、会堂に集まった悲しき魂たちにとっては、自らの悲惨な最期を思い出したのか、各々の言語で女神に祈り始めた。

 

そして、聖少女マリアのエンパシーに誘(いざな)われ、同じく地下の会堂に集まったベルリンの精霊たちは、聖少女の愛と癒しのエンパシーに波動を合わせながら、会堂に忍び寄る邪悪なもののけから女神を護るかのように、柔らかく無防備に腕を広げているメグミの身体を包んだ。

 

メグミが顔を上げると、愁いを含んだ美貌の中から、突然お袋さまの眼光が、鋭く開いた。

 

「聖少女マリアよ、我らをこの場に呼び寄せて、いかがするおつもりか」

 

極東から来た大和の国の巫女の女王の言葉に、ザ・ワンの聖少女は初めて口を開いた。

 

「東の国の巫女さま、遠方よりお越しいただき、心より感謝いたします。――しかし、すでに時が迫っております故、このようなお迎えになりましたこと、どうかお許しください」

 

聖少女は宝石の様な瞳を閉じて、ザ・ワンの祈りを念じながら深く頭(こうべ)を垂れた。

 

「先の冬至の朝、お母さま(メーヴ女王)からお報せがありました」

聖少女の表情から微笑みは消え、黄金の光彩を放つ青い瞳から、一粒の宝石が流れ落ちた。

 

「私がお母さま(メーヴ女王)に言われて、亡霊ヘルガの警告を追い求め、ついに探し当てた災いは余りにも大きなモノでした。既に時遅く、私たちにはそのモノを止める術(すべ)はありません」

 

メグミの中にいるお袋さまは息をのむように、マリアを見据えた。

「もう間に合わぬと申すのか」

 

 

「悪夢のロンド:2014年武道館16才のSU-METAL」からお借りしました。

 

 

 

 

「私たちの力では止めることが出来ませんでした。でも、お母さまは仰いました、東方の巫女の女王のお力をお借りすれば、その災いを最小限に止めることが出来るかもしれない、と」

 

するとメグミの中のお袋さまは尋ねた。

「愛(まぶ)様は、どのように言われたのか」

聖少女マリアは立ち上がり、祭壇に上りメグミの前に出た。

 

――災いは壺の中に在るものでは無い、それは小さな種に過ぎない。この地球(ほし)を滅ぼそうとしているのは今まさに、宇宙から訪れようとしている。そのモノは巨大な悪鬼の彗星、それが太陽の向こうからやって来る。そのモノは科学的にはあり得ないほどの速度を保ち、凍結ガスの氷塊を分離しながらその方角を変え、次第に地球に向かってきている。

 

「そしてその災いから遠ざける方法を示されました。それはお袋さまの持つ勾玉で壺の口を塞ぎ、毒ガスを吐く彗星に向かって投げ、衝突をさせて、その進行方向を転じさせよとのことです」

 

聖少女は思念のエンパシーを開き、地球に向かって飛来する彗星のイメージを見せた。

 

暗黒宇宙に、幾千もの星々の明滅する空間を飛翔する物体は、まるでその速度を表すように、自らのガスに炎を上げ途方もない長さの青い光の尾を引いて、地球に向かって近づいて来る。

 

壮大な宇宙空間の映像を観て、お袋さまは言った。

「なるほど、その事を聞き、――神の怒りが青い光を放つとき、世界は終わりを告げる――といったメグミの占いに表れた意味が分かった。だが、その壺をどうやって投げ入れるのだ、誰がそれを行うのか、そしてこの十字架にはいったい何の意味があるのだ」

 

すると聖少女は、身に纏う衣服を脱ぎ、お袋さまに手を差し伸べてメグミの裸身を包んだ。

 

メグミと入れ替わるように、十字架に磔となった聖少女は続けた。

 

――私の着ていた衣装、ザ・ワンのトーガは宇宙においても身を護ってくれます。これを身に着けてお母さまのワームホールに入り、この祭壇の中にある災いの壺を投げ入れてください。

 

17才の少女マリアの裸身はか細く白く、弱々し気に腕を開き、手のひらには釘が穿たれ血をにじませていた。先ほどまでのメグミの、筋肉の鎧をまとった身体とは対照的に、ブロンドの長い髪は彼女の小さな乳房を包んでいた。聖少女は無表情にメグミを見つめ、さらに思念を使ってお袋さまに、そしてメグミに指示を与え続けた。

 

メグミは祭壇を下りてその扉を開き、災いの壺を取り出し、自分の体内に隠しておいた勾玉をその蓋の上に押し込んだ。そして床に倒れているケージを揺り起こし、聖少女の白いトーガを彼の頭から被せた。

 

「ケージ、この壺を持って私に付いてくるのよ、父さんもいいわね、分かった?」

 

祭壇の前に、神の使者が開いたワームホールが現れた。十字架の聖少女は黄金色の心眼を開き、愛と癒しのエンパシーを発しながら祈りを始めると、会堂に集まった精霊たちはさらに強い祈りを捧げて、ケージが持つ壺の口の勾玉から虹色の光の渦が広がり始めた。

 

そしてお袋さまを内包したメグミは、何も身に着けぬ眩いほどの裸身のままで、父ケーイチローの魂を内包しているケージの身体を、その白い腕を伸ばして抱き包んだ。

 

ケージは、愛する妹に抱かれるとともに、十字架に磔られたときに聖少女から、あふれるほどの愛と癒しの思念を受け入れたことを、いまいちど心にとどめ、メグミの豊かな乳房から身を離し、ワームホールを見据えた。

 

「ケージ、マリア様を信じて、私たちは来た時と同じようにワームホールを行くのよ、いいわね」

(かいな)白き裸身の女神は、両手を合わせ、ワームホールの入り口に歩を進めた。

 

 

次項Ⅴ-48に続く

 

 

2018年のダークサイドの海外修行からお借りしました。

 

 

ダークサイドの紅月:マッスル姐さん二人のアクション2018年、できれば大画面でご覧ください