ロミと妖精たちの物語134 Ⅳ-20 遥かなる惑星から⑦ | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

ロミと妖精たちを乗せたクリスタル・バリアーは、宇宙少女マリアが捧げ持つドラゴンボウルから発する宇宙のエネルギーを中心に、完全防備の宇宙服を着た万里生(まりお)とフィニアンが精霊たちの力を借りて思念のエンパシーで構築している。

 

 

それは透明で、周囲を囲む虹色の光彩だけが目に見えており、上層の洞から同乗した青い炎の人と、ロミたち白いトーガを纏った四人の美女が天空から降り立つように、広場に集まった鬼火の魂たちの見上げる視線に、それはまるで女神の降臨のように見え、広場を圧倒する程に神々しい感動を与えていた。

 

ロミとマリアとマーガレット、三人の女神を導いた愛の妖精ファンションは、静かに語りだした。

 

『氷のピラミッドの深い洞窟の中で、永い時を超えて眠っていた魂の皆さん。ザ・ワンと、この惑星を見守る神の使者、あの方から新たな啓示を受けて、この方々に来ていただきました。現世(うつしよ)と、あなたの神様の世界を繋いでくれる、この現世(うつしよ)の女神様です』

 

ロミはファンションの言葉を受けて、クリスタルの光の中央に立つと、眼下に並ぶ大勢の鬼火たちに視線を向け、一人ひとりに愛と癒しのエンパシーを送り、思念の翼を広げ優しく包む。

 

そして目を閉じて心眼を開くと、両手を掲げトライアングルの印を結び、精霊たちのエンパシーを集めてドラゴンボウルにその祈りを伝え、広場の中心に天国へと昇る階段を構築した。

 

天空のオーロラに魅かれて南半球の精霊たちは続々と集まり、そこから見えるドラゴンボウルの光を求め、氷のピラミッドへと下りやがて楕円のクレパスの中へと降りてきた。

 

そして、ロミと妖精たちが作り出す天国へと昇る階段を取り囲み、癒しのエンパシーでさらに強固なものとした。

 

そして精霊たちは、愛の妖精ファンションとともに、聖なる歌を唱え始めた。

『皆さん、あなたたちの止まっていた時間は、いま動き出したのです。さあ怖がらないで、大丈夫よ、あなたの信じる神様に祈るのです、そして天国への階段を昇りましょう。』

 

 

 

 

 

 

ファンションと精霊たちの讃美歌に誘(いざな)われ、鬼火たちは半透明のガラス細工のような人間の姿に戻り、両手を合わせてロミに祈り、虹色の光彩に包まれた階段の両脇で出迎える神の使者の伴侶マーガレットと青い炎の人に見守られながら、一人ずつ天国への階段を昇り始めた。老人たちは、いつの間にか腰を伸ばし、しっかりとした足取りで階段を昇った。

 

そしてマーガレットの横に並んだファンションは、T.Sウイルスの時代に取り替えっ子に遇った病気の子供を見つけるとその手を取り、いつの間にかグリーンのスーツ姿に戻っているアイルランドの妖精フィニアンの手に渡していった。

 

フィニアンの手に繋がれた子供たちは、ドラゴンボウルの光のエンパシーを浴びると、思念の翼を広げて光の中に立つロミの美しい姿を見上げた。そしてロミの愛と癒しのエンパシーに包まれると、目を輝かせてお互いを見合い、元気が甦ってくるのを感じて、子供たちはみんな笑顔を取り戻していった。

 

老人たちの最後の一人が階段を昇り始めると、青い炎の人がファンションを抱きしめた。

「この日が訪れるのを、ずっと待っていました。ファンション、ほんとうにありがとう」

 

そして、マーガレットに顔を向けると。

「あなたの伴侶、イエス様はいつも励ましてくれました。神に祈りなさい、奇跡は必ず起こると」

 

透明な姿となった青い炎の人を、マーガレットは優しく抱擁しながら言った。

「これはあなたの勝利です、年老いたあなたのお仲間を信じ、励まし続けたオールドザ.ワンの市長さん、あなたの信じる力、そして愛の力だと思います」

 

最後に彼は、バリアのステージに立つロミとマリアに向かって手を合わせ、深い感謝と祈りを捧げると、静かな微笑みを浮かべながら、精霊たちに護られた天国への階段を昇った。

 

階段を昇り切ると、青い炎の人は天国の入り口で出迎えた天使に手を持たれ、その姿が見えなくなると、天国の入り口の扉は閉じられた。

 

フィニアンの手に繋がれた子供たちは、涙でいっぱいの笑顔で見送っていた。

ロミはステージを下りて、思念の翼を広げたまま子供たちのもとへと来た。

「ファンション、この子たちを守りたかったのね」

 

「ロミ様ごめんなさい、そしてありがとう」

ファンションは、ロミの足元に膝を落として祈りを捧げた。

「私はあの時、取り替えっ子をした責任があるの。でも、これからどうしたらいいのか」

 

すると、フィニアンが笑顔でそれに応えた。

「大丈夫ですよファンション。ここにロンドンのハンプトンコートにある、イギリス王立学校の先生が来てくれています。マーガレット・ハリスン先生がね、あとは先生のお役目だ」

「さあロミ様、わたしたちは先に氷の塔で待っているカレンとアンのもとへ行きましょう」

 

「万里生、マリアとフェアリーシップのこと、後は頼んだよ」

フィニアンはそう言うと、子供たちをファンションとマーガレットの手に繋げて、自分はロミの手を握り、精霊たちにウインクをすると、トネリコの杖をクルリと回して氷の塔へと飛翔した。

 

氷の塔の広いリビングに到着すると、フィニアンの娘カレンとアンが用意を整え、部屋は暖かく、テーブルの上にはアイルランドの家庭料理が並べられていた。

ロミはカレンとアンを抱きしめてキスをしてから、フィニアンに振り返った。

「フィニアン、どうゆうことなの?」

 

「あいやロミ様、これは万里生が考えたことなのです。黙っていたこと、お許しください」

 

「そうなの、帰ってきたら少しお説教しなくちゃね」

 

そう言ったあと、ロミはファニアンの小さな身体を抱きしめた。

「ありがとうフィニアン、よかった、とてもうれしいわ」

「ロミ様、子供たちの前ですよ」

フィニアンは慌てて言った。

 

「何を言ってるの、良いことをした子供に、ママはご褒美のキスをするものよ」

「ママですって?」

と言いながら、ロミの頬にキスを返そうとしたが、フィニアンの前にロミはもう居なかった。

 

ロミは母マーガレットに、子供たちのことを相談した。

「お母さま、この子たち学校で預かってくれるでしょ?」

 

「そうですねロミ、上の生徒たちが幼児を教えるいい機会になりそうだわ。ファンションさん、あなたが希望するなら、私から王女とキャサリン校長にお伝えしてみます」

シーオークの妖精、そして愛の妖精ファンションは、涙を浮かべてマーガレットに抱き着いた。

 

 

次項Ⅳ-21に続く