ロミと妖精たちの物語85 Ⅲ-17 Amore心の旅路③ | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

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マリアたちが地下迷宮に飛び込んだ頃、ロミは暗黒の空間に閉じ込められていた。

 

ロンドン塔の中庭、タワーグリーンのクリスタルモニュメントの上空でマリアたちのオペレーションを見守っていたロミは、ドラゴンボウルから宇宙放射の光線を浴びながら、500年を遡る悲しき魂たちの嘆きの声を聞き、それを庇護してきた王家の亡霊たちの哀しみを受容した。

 

そしてマリアの広げたバラ色のエンパシーの翼の上から、さらに大きな愛と癒しの思念の翼を拡げ、神に出会うことが出来ずに長い年月を悲しき魂として過ごしてきた人々の、上るべき天国への階段を描いた。

 

それは、ドラゴンボウルの中心に渦巻く光の粒子から天空へと立ち昇っていた。

 

 

マリアのバラ色のエンパシーに包まれた嘆きの魂たちは、ドラゴンボウルの球体の中心に吸い込まれると、渦巻く光の粒子に揉まれ洗われてそれは浄化されてゆき、やがてロミのエンパシーの階段の前に進むときには、ある種の解脱、迷いを捨てた無垢の魂となって天国への階段を昇ることが出来た。

 

 

ドラゴンを結んでいた片割れのマリアの従弟たちは、マリアの腕カイナに抱き包まれたあと、球体の上に現れた神の使者の手に守られ、宇宙の精霊たちに包まれて遥か銀河を超える異世界の神の国へと飛翔した。

 

そして、最後に残された王家の4人のうち、年長の王妃がマリアに問うた。

 

――メーヴ女王の子にしてダ―ナの女神マリア、この幼い兄弟こそ憐れな魂です。

――何も分からぬうちに命を奪われ、誰にも弔われることなくこの城の亡霊となってしまったのです。500年余の長き迷路に置き去りにされていたこの子達も、天国へ導くことが出来るのでしょうか。

 

 

 

 

 

身長7フィートのダ―ナ神の境地にいるマリアは、ゆっくりと歩を進め王妃たちをバラ色のエンパシーの翼で包み、少年たちの亡霊をその白き腕カイナで抱きしめた。

 

――あなたたちの心に、この宇宙を守っている神様を信じることが出来れば、神の使者が手を差し伸べてくれます。

――さあ、ドラゴンボウルの光をよく見てごらんなさい。

――そして信じるのよ、今こそ神があなたたちを愛し、慈しんでいることを。

 

少年たちは、マリアの愛と癒しのバラ色のエンパシーに包まれながら、しっかりと球体の中心を見つめた。そこには恐怖という概念は無く、愛という言葉だけが有った。

 

――大丈夫よ、もう怖いものから逃げ回る必要は無いの、神様があなた達を守ってくれるわ。

 

少年たちは、自分を取り巻く無数の精霊たちに気づき、マリアの顔を見上げた。

マリアは微笑みを与え、二人の額にそっと口づけをした。

 

少年たちは、500年余の時を超えて笑顔を取り戻し、精霊たちに守られながら、球体の光の渦の中に吸い込まれていった。

 

 

 

 

 

 

少年たちを見届けた二人の王妃は、マリアに抱かれたその美しい笑顔に涙を浮かべ、手を取り合いイングランドの精霊たちに守られて、ゆっくりと球体の光の渦に身を移して行った。

 

――ありがとう聖なる少女神マリア、そして聖少女ロミ、これで私たちも心置きなく眠ることが出来ます。

――お二人のアリアドーネ(聖なる乙女)と、ここに集まってくださった皆さんに、心より感謝致します。

――私たちの長きにわたる苦悩を終えることが出来た上に、心癒される大きな愛を頂きました、ほんとうにありがとうございました。

 

 

そう言い残して、500年昔の王妃たちは天国の階段を昇り始めた。

 

そこに再び神の使者が現れて、二人の王妃に手を差し伸べ、天国への階段を導き始めた。

最後の魂を見送るロミは驚いた、その人は宇宙で会ったあの方では無く、あの方の息子トーマスだった。

 

ロミは動揺した、今朝の手紙では旧ザ・ワンに行っているはずのトムなのに、なぜここで神の使者をしているのか、あの方に何か有って、トムが代わりを務めているのかしら。

 

「トム、どういうことなの?」

混乱したロミは思わず声を発してしまった。

 

マリアのエンパシーの中で声を発してしまったロミは、ドラゴンボウルの光の渦に吸い込まれてしまった。

 

既に天国への階段はロミの発声とともに消えていて、それは一瞬の出来事だった。

誰にも気づかれず、ロミは光の渦から暗黒の闇へと放り出されてしまった。

 

そこは光も無く音も無い、完全な闇の空間だった。

 

ロミの足は地に付いておらず、声を発しようとしたが呼吸音さえ出ない、光を見出すことも出来ない、ただそこにロミの意識だけが存在している。

 

それはまるで、40年前に経験したサイボーグ・ロミの覚醒のときのように、ロミの意識だけが暗黒空間に存在していた。

 

誰もいない、自分さえも分からない、絶対的な孤独だけが、ドラゴンボウルから抜け落ちてしまった、ロミの行きついた暗黒の空間にあった。

 

 

次項 Ⅲ-18 Amore心の旅路④へ続く