黄金の髪に白い頬、宇宙少女マリアが両手を掲げ青い瞳の前に捧げ持つ、ドラゴンボウルから発する光の渦は、愛の妖精ファンションの歌声と祈りのエンパシーに集まる精霊たちの聖なる力を得てそれは天空へと昇り、インカの古都クスコの遺跡群の遥か高みに拡がった。
 

 

 

 

そして、ピラミッドの遺跡からそれぞれ4マイルの距離にある、円形競技場や聖なる泉の遺跡に眠る、神に出会えなかったインカの哀しき魂たちは、虹色の光の渦に目を覚まし、鬼火となって甦り、ロミと妖精たちが繰り広げる愛と癒しのエンパシーの波動に乗って、太陽の神殿ピラミッドの遺跡を目指し、光の渦の下蒼黒の夜に広がる天空に、光の帯を描いていった。

 

 

ロミと妖精たちが、精霊の力を借りて太陽神の門を開き、天国へと昇る階段を構築すると、インカの英雄ユパンキは皇帝アタワルパの手を取り、階段の上り口へと導いた。

 

だが、皇帝はそこにとどまり、両手を広げて集まったインカの鬼火たちを手招いた。

 

哀しき魂の鬼火から元の姿に戻ったインカの人々は、城壁の上でドラゴンボウルを捧げ持つ、いと白き少女神マリアに向かって跪(ひざまづ)き祈りを捧げたあと、皇帝アタワルパと英雄ユパンキにも手を合わせ、祈りを捧げてから天国への階段を昇るのであった。

 

天国への階段の昇り口に、皇帝とユパンキは左右に立ち、鬼火から元の姿に戻ったインカ人(びと)一人ひとりを迎え慰め祝福し、階段を昇る彼らを見送り始めた。

 

 

コンキスタドール・征服者の剣と銃弾に倒れた名も無き兵士たち、虐待と苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)を受け、飢えと病に苦しんだ農民たち、闘いの中で、暴発した狂気の中で、無残な仕打ちで命を失った者、狂気の暴漢に犯され自死の道を選んだ娘たち、そして親の愛を知らず短い命を終えてしまった子供たち。

 

ユパンキは涙を流しながら、その一人ひとりを抱きしめ、そして笑顔を取り戻して見送った。

 

悲しみのまま眠り続けていた魂たちは、暗黒の時を経て現れた天国の階段を昇り、神の国の門の入り口に立つと、天使に手を引かれ現世(うつしよ)別れを告げて天国の門に入った。

 

やがて光の帯は消え、全ての魂たちが昇り終えると、皇帝アタワルパは言った。

 

「神の使者の子ロミ・アンドロメダ、ザ・ワンの王女マリア、そして愛の妖精ファンション、あなた達に深く感謝いたします、ありがとう」

 

皇帝アタワルパは生まれて初めて、ザ・ワン以外の人に頭を下げた、それもまだ少女の姿をした3人に向かって。

 

そして皇帝は、ユパンキに振り返り、抱擁を交わし合い彼を抱きしめて言った。

 

「我が子ユパンキよ、今日はめでたい聖なる4の月だとな、それに女神たちにそなたを入れて4人、これもまたインカの聖なる数字4となるな、うん、めでたい、さあ、あとは頼んだぞ」

 

インカの皇帝アタワルパは、黄金刺繍のマントを翻し、ゆっくりと階段を昇った。

 

皇帝が天国の門を潜り終えると、天空に広がった光の渦はゆっくりとドラゴンボウルに戻り始め、天国の階段も上部から消えて空気に溶け込んでゆき、やがてそれぞれに消えてしまうと、ピラミッドの遺跡は紅い月に染められた、静かな夜の古代遺跡の風景に戻った。

 

「大丈夫?ユパンキさん」

 

ファンションが言葉をかけると、ユパンキは膝から崩れ落ちた。

 

ロミはゆっくりと彼に近づき、何も言わずにそっとその肩に手を置いた。

 

 

次項Ⅳ-42に続く