マリアたち3人の乙女が腕を伸ばして捧げ持つ、透明球ドラゴンボウルから広がる光の渦は暗黒の地下迷宮を眩い光の銀河へと変えた。
乙女たちは、その眩しい輝きに負けない黄金色の心眼を開き、球体から発する光の渦の中心に出来たホワイトホールから舞い降りる光の戦士を、乙女たち3人で作るトライアングルの結界の中に迎えた。
そしてそこに光の戦士が現れると、あれほど眩しかった光の渦は、ゆっくりと消えてゆき、暗黒迷宮の闇の中には白い薄明が広がっていった。
3人の乙女たちの間に降り立った、白いトーガに包まれた光の戦士は、フードを開いてその美しい面差しを上げた。
「ロミ姉さん、来てくれたのね」
マリアはドラゴンボウルをキャサリンに預けて、5フィート5インチの小さなロミを抱きしめた。
長い腕に包まれたロミは、身長7フィートの戦闘モードにあるマリアを見上げて言った。
「ごめんなさいマリア、ちょっと寄り道をしてきたの」
そして一人だけ裸でいる少女を見ると、少し怪訝な表情を見せたが、ロミは優しく挨拶をした。
「こんにちは、私はロミ、あなた、前にどこかで会ったかしら」
少女も何か思い出すことがあるかのように、目の前に舞い降りた美しい人を見つめた。
「ロミ、彼女の名前はユリア、長い間ユニコーンの姿に変身させられていたのですよ」
キャサリンの説明に、ロミは驚いたものの、笑顔のままで言った。
「まあ、それで裸になっていたのね、可哀そうに」
そう言って長身のユリアを見上げ、彼女にも柔らかな抱擁をしたあと、トーマスに教わった通り両手を揉み合わせて白いトーガをつくり出し、その少女の頭から被せてあげた。
ユリアは身を屈めてロミが広げるトーガを被った。
「まあロミ、あなた寄り道をして手品の術を習ってきたの?」
「キャサリン、いえミス・ロバーツ、あなたこそ凄いわ、いつの間にか心眼を覚えたのですね。やっぱりアイルランドの血が、あなたの妖精力を引き出しているのかしら」
ロミはその周囲の様子を伺いながら、声を落として身構えながら、さらに聞いた。
「それで、今私たちはどの辺にいるのかしら、キャサリン先生教えて」
キャサリンはこれまでの事を、かいつまんで手短に説明した。
「そしてスフィンクスが伝えてくれたのはそこまで、この地底の迷路で待っているドラゴンのことは、彼も正確には分からないみたいなの、ユリアが案内してくれると言っただけで、何が妖精たちを鎖に繋いでいるのかは教えてもらえなかったのよ」
「そして私たちは決めたのよ、迷路の中をやみくもに走らないで、ドラゴンからの申し出を待ちましょうと」
元大学教授キャサリンの言葉を聞いて、ロミは声を潜めて皆に伝えた。
「確かに、この迷宮では時間が止まっていると思うわ、ロバーツ先生あなたの判断は正しいと思います。スフィンクスの言う3時間の門限は地上のこと、この世界はたぶん時間を超越していると思います。そしてこの迷宮の主も、私たちの考えというより、ドラゴンの出方を待っているのではないかと考えます」
――ロバーツ先生、マリア、ユリア、私はこれまで多くのドラゴンに出会いました。ドラゴンたちはいつも私を待っていたような気がします。
――そして彼らは最後の勝利を私に譲ってくれたのです。私が思うに、彼らは平和な日常を望んでいるのだと思います。
――決して悲しき魂たちを苦しめたくて、この騒めきを起こしたのではないと思うのです。だから、今から私はこの迷宮の主とお話をしたいと思います。
――ロバーツ先生、マリア、いいかしら?
――もちろんですとも。
マリアとキャサリンは即座に同意した。
――ユリア、あなたも賛成してくれるかしら?
ロミに着せてもらった白いトーガに護られたユリアは、まだ人間の姿に馴染みが薄いのか、固い表情ではあるが、小さく微笑みを返した。
ロミは3人に背を向け、薄明の世界に向かって両手を広げ、目を閉じると心眼を開いた。
そして愛と癒しのエンパシーの翼を広げ、その翼を大きく羽ばたきエンパシーの風を起こした。ゆっくりと風はひろがり、薄明の中に迷宮の姿が現れ始めた。
次項に続く
(この夏の国内フェス、サマーソニック・キャッチミーで珍しく日本語でMC、ファンカム約8分)
(一度削除されて見れなかったのですが、再度見つけました)
残念ですが上の動画は削除されてしまいましたので昨年の国内フェスを楽しみましょう。
スゥちゃんの日本語は可愛いですね。
この記事は2017年9月の記録ですが、あらためて連載しております。

