ワクチン広場 -31ページ目

今年はワクチン事情が大きく変わります!

平成24年も3月に入り、今年の6分の1が終わりました。ここにきて、ワクチンの事情が大きく変わることが見えてきました。先ず、肺炎球菌、ヒブ、水痘、ムンプスワクチンが定期接種の第1類に入る、B型肝炎ワクチン、ヒトパピローマウイルスワクチン、成人用の23価肺炎球菌ワクチンが第2類に入れることが国の委員会で決まり、予防接種法を改定するための法案が練られて本国会に上程される予定になりました。耳慣れない定期接種1類、2類というのは、1類は個人の予防にもなるが集団の予防になるというものだそうです。2類は個人の予防になる、病気の治療法があり、集団の予防にならないものを言うのだそうです。B型肝炎の免疫を持っていれば、他人への感染源にはならないので集団免疫を得ることになりますし、1類と2類をクリアーカットに別けることは無理があろうかと思います。ムンプス、水痘は世界のように2回接種なのかどうかも未だわかりません。法案が国会で審議されて法律になって準備期間を経て実行にうつされます。未だ期間があるので、接種を考えている人が定期接種になるまで待とうとするようなことはなさらないで、受けて欲しいと思います。また、ポリオワクチンについても、サノフィーパスツールという会社が治験を行い、製造承認の申請を行いました。春の生ワクチン投与には間に合いませんが、ヒョッとすると秋の生ワクチン接種には認可されて出てくる可能性があります。阪大学微研が生ワクチン不活化したワクチンを混ぜた四種混合ワクチンの製造承認を申請しました。熊本の化血研も間もなく申請するのだそうで、間に合えば秋からの四種混合ワクチン接種が実現するかもしれません。その際に、既に生ワクチンを1回接種された人、三種混合を接種されている人には四種混合が適応されないので、どうしても不活化ポリオワクチンが必要になります。それにサノフィーパスツールの不活化ポリオが用いることが出来れば、うまく生ワクチンから不活化ワクチンに移行ができます。それが、可能になることが見えてきたということになります。これも予防接種法の改定が必要なので、先ほどのワクチンの定期接種化と同時に法改正が行われるのかどうかが未だわかりません。朗報には違いないのですが、未だ目の前にワクチンが用意されているわけではありませんので、事情が変わるのは先の話なのです。5月にはMSD社からロタテックというロタウイルスのワクチンが販売されるようになります。ロタウイルスワクチンは生後6週から接種可能ですが、単独で接種を開始してしまうと他のワクチンを接種するのが遅れてしまいます。BCGも同様です。だから、2ヶ月になったらロタ、B型肝炎、肺炎球菌、ヒブワクチンの同時接種を行い、3ヶ月で更にDPTの三種混合を加え、4ヶ月でも同じに行い、その後にBCGを接種し、BCGのあと4週後に三種混合の3回目を接種するのが一番、効率の好い方法だと考えます。
途中でB型肝炎の3回目を行い、お誕生で麻疹、風疹の混合ワクチン、水痘、ムンプスを接種と言うのが1歳までのスケジュールであるのは、当分。、同じです。

不活化ポリオワクチン2回接種後の生ワクチン接種について

私は、不活化ポリオワクチンを2回接種したあとに、生ワクチンを2回接種を受けられることをお薦めしています。
理由は、以下の通りです。不活化ワクチンで血液中に抗体を産生しても、腸管での局所免疫はできないか、またはその持続は短いのです。不活化ワクチンを接種して免疫が血液中に出来た人に生ワクチン接種すると、血液中に抗体の無い人と同じように、4~6週、生ワクチンウイルスを排泄する、ワイルドポリオウイルスに感染した場合にも同じようにワイルドポリオウイルスを排泄します。つまり、自分は麻痺を発病しないが保因者にはなりえるということです。今、ワクチンウイルスで麻痺になりたくないことで不活化ワクチンを接種されるのであれば、生ワクチンの特徴である腸管免疫も得ておいたほうが好いと考えるからです。今後、中国での流行など外国の事情がどのように変わるかで、日本でのワクチン接種方法も考えていくことになりますが、いまのところは生のメリットが得られるならば得ておこうと考えるからです。ところが、深谷市で私が不活化ワクチン接種をして方が生ワクチンの接種を受けようとされたときに、市が生ワクチンを接種するという国の方針に反対する人にはその権利はないと話されたそうです。そこで、私は深谷市のホームペイジから抗議を申し込んでいました。このたび、深谷市の健康推進課からメールで下記の様な返事がありました。結論は認めるというものですが、当全のことと考えますが、一応、公的な見解だと思いますので紹介します。
深谷市の回答 原文のまま、
『ポリオワクチン接種についてのお問い合わせにお答えします。 深谷市の予防接種事業につきましては、日頃からご協力をいただきありがとうございます。また、今回、ポリオワクチン接種についてご助言ありがとうございました。先生からの助言と市民のかたからのご質問を受け、深谷市に再度確認しましたところ、「不活化ポリオワクチンを任意で接種された方について、生ポリオワクチンを定期接種として実施できる」という回答を得ました。今回お問い合わせくださった市民の方にもこの旨をかいとうしてまいりたいと存じます。なお、下記の経緯がございましたことから、深谷市としては「不活化ポリオワクチンを任意接種したかたに、定期接種として生ポリオワクチンの接種はできない」と回答いたしました。今後も予防接種事業につきましては、ご指導、ご協力をいただきますようにお願いいたします。
『経緯について」
 深谷市では、平成23年10月25日に埼玉県疾病対策課に『不活化ポリオワクチンを任意で接種したかたに、生ポリオワクチンの接種を定期接種として実施できるか』について照会しました。回答として『定期接種のポリオ接種は生ワクチンを2回接種することである。不活化ポリオワクチンを実施した者に対する対応について国から示されていない。よって、現時点において、日本国内において輸入の不活化ポリオワクチンを実施した者に対して、生ポリオワクチンを定期接種として実施できるとは判断できない』というものでした。今回、市民のかたから同様のお問い合わせがあった際にも、埼玉県からの回答に基づきお答えしたところでしたが、市民の方からのお問い合わせや先生のご助言を受けて、平成23年12月21日に再度、埼玉県疾病対策課へ照会したところ、12月22日に県より
『日本国内において輸入不活化ポリオワクチンを実施した者に対して、生ポリオワクチンを定期接種として実施できるとは判断できない」と回答していたが、再度通知文等を読み込んだ結論は「日本国内において輸入の不活化ワクチンを実施した者に対して、生ポリオワクチンを定期として実施できる」と判断する。不活化ワクチンの実施については、あくまでも保護者が任意に実施するものであり行政としては関与する部分ではない。定期のポリオ接種は生ポリオワクチンを2回接種すること。これに該当していれば、定期扱いとなる」という回答を受けた経緯がございました。御理解いただきたく存じます。

これから察するところ、国からの文章があり、それを県の担当官が誤解して深谷市に対して誤った指導をしていて、今回、再度確認したら、訂正されたということになります。国の行うことに反対して云々については、何もコメントは無しでした。埼玉県内では、同様の解釈でよいということになりますし、日本全国も同様ということになりましょう。

行く年来る年のワクチン事情

平成23年も余すところ僅かとなりました。インフルエンザは香港型の流行が予測されています。ここ埼玉県では例年は1月中旬以後に流行することが多いので、ワクチンは12月中に接種を受けられることがお薦めです。会計年度は、3月31日までです。今年はヒトパピローマウイルスワクチン(所謂 子宮頸がん予防ワクチン)、肺炎球菌、ヒブが公費助成の対象になりました。ヒトパピローマウイルスワクチンは、中一から高一が対象になっています。サーバリックスは0,1,6ヶ月で、ガーダシルは0,2,6ヶ月と3回の接種です。今なら、0または1~2ヶ月の2回は公費助成の対象になります。来年度は中一のみになりそうです。今、中一~高一の方は、対象外になります。まだ接種をうけていない方は、是非、接種を開始されることをお薦めします。同じように肺炎球菌、ヒブは0~1歳になりそうです。現在1歳以上の方は、これまた年度内の接種をお薦めします。ロタウイルスワクチンはロタリックスが11月から接種を開始していますが、年明けにロタテックが発売になります。これは3回接種です。ロタリックスは2回接種なので、医療機関がどちらを採用しているかで異なることになります。先日、小宮山厚労大臣が日本独自の生ワクチンウイルスを不活化したワクチンを加えて、三種混合をポリオ不活化ワクチン、百日咳ワクチン、ジフテリアと破傷風のトキソイドを加えて四種混合ワクチンとしたものを導入することを明言していました。スケジュールは現在の三種混合と同じになると考えられます。現在任意接種になっている、A型肝炎、B型肝炎、ムンプス、水痘 ワクチンを定期接種に入れるかどうかなどの検討は今後も続けられるでしょうが、それには予防接種法の改定が必要になり、予算も必要になります。それがどうなるかは、見守りたいと思います。乳児で必要なワクチンが多くなりましたので、同時接種が基本になると思います。
医師もワクチンを受けられる方々も、同時接種を必要な医療行為と認識されて常識になることを願います。

私が行っている同時接種の実際

私は、予防接種では同時接種は必要な方法であり、積極的に行うべきだと考えています。
実際に行っている実例をお示しします。
生後2ヶ月では
ロタウイルス先ず経口接種、同時に注射で B型肝炎ワクチン、不活化ポリオ、肺炎球菌、ヒブワクチンを接種しています。この方達は、3ヶ月では更に三種混合を加えます。6種類同時接種になることもあります。
インフルエンザの予防接種と同時に、麻疹、風疹混合ワクチン、日本脳炎、不活化ポリオ、B型肝炎ワクチン、などを同時接種で行っています。
海外に行かれる方には、狂犬病やA型肝炎ワクチンなども同時に行っています。1歳の麻疹風疹混合と同時に水痘やムンプスを同時にも行っています。

同時接種を怖がらないで(2)同時接種の安全性については世界に学ぼう!

はて、さて、同時接種なくしてスケジュールの立て方が難しいことはお解かりいただけたでしょうか?
私共は、ワクチンについては新しいワクチンが加わってきた今、ワクチンについて学ぼうとすると、どうしても先進国である外国の情報に学ぶ必要があります。小児科学や内科学の教科書にも記載がありますが、それも、以下のものからの引用が多いので、実際には私は下記の3冊の本と、新しい情報は学会雑誌などに頼っています。
1;アメリカ小児科学会が出している感染症と予防接種の勧告を本にした レッドブック の最新版
2;アメリカの感染症予防局が出している予防接種の実際を書いている本(ネットでも無料で読める)ピンクブック12版
3;世界で最も情報が纏められている本である、プロトキン編集のワクチンと言う本の5版です。
国内のことについては、近代出版からでている、予防接種の手引き 13版が参考になります。
このような情報源からの情報をまとめると、同時接種は予防接種には今や不可欠の方法であり、決して怖くない方法であることが理解できます。ワクチンを接種することを職業にしている医師はプロであるべきです。自分が行う方法の安全性やリスクについては学んでおくべきです。同時接種はなんとなく怖い、だから単独で接種を行うとする医師が少なくないのは私はよく承知しています。同時接種で怖いワクチンを単独で行えば怖くないとされるにも根拠が必要です。つまり、学ぶ必要があります。医師には。学んでいただければ,おのずと、同時接種賛成派になられるだろうと思います。
●日本で接種できるワクチンならば、同時接種を行っても安全性、効果の上では問題はない
●同時接種を行っても、どのワクチンに対しても、十分、免疫はできることが証明されている
●同時接種を行っても、あるワクチンが他のワクチンの免疫反応を妨げることはない。
●同時接種を行っても、免疫反応が低下したり、副反応の頻度が増加することはない
●同時接種を行っても、乳児急死症候群が増加することはない、
 といえると思います。同時接種を行えば、同時に多数の疾病の予防能力を高めることができる、予防効果を速く得ることができる、予防接種に行く回数が少なくて済む、注射の回数は同じでも嫌な不愉快な日は数が減る、スケジュールが建てやすい、などのメリットが得られます。
注意をすべきは、ワクチン同士を混合しない、不活化ワクチンは筋肉注射を基本にする、ワクチンの接種部位を2,5cm以上離して行う、必要があります。
日本小児科学会も同時接種は推奨していますし、同時接種が禁忌となるワクチンは認めていません。

どうか怖がらないで積極的に同時接種を行って効率よく子どもを守ろうではありませんか。