ポリオ不活化ワクチン接種を始めて考えること(1) | ワクチン広場

ポリオ不活化ワクチン接種を始めて考えること(1)

平成23年7月28日、私はMONZENという会社を代理人にしてサノフィーパスツールという会社が製造しているポリオ不活化ワクチンIMOVAX POLIOというワクチンを購入して希望者に対して接種を開始始めました。ワクチンを接種し始めてみて、色々考えさせられることもありました。

ポリオという病気はポリオウイルスの感染で発病します。ポリオウイルスはエンテロウイルスの仲間です。今では、エンテロウイルスといえば、手足口病、ヘンルパンギーナという病気の病原体であることは、多くの方がご存知です。エンテロウイルスには型が全部で71あり、ポリオウイルスは1,2,3型の三つの型がありますので、エンテロウイルス71の型の内の3つがポリオウイルスです。ポリオウイルスは糞⇒口、口⇒口感染で咽頭、消化管に感染します。ウイルスは咽頭や消化管で増殖し、ウイルスは血液中に入ります。血液中に入った状態をウイルス血症と言いますが、脊髄の前角細胞や脳の中の脳幹の運動神経細胞に感染をして、手足の弛緩性麻痺をおこしたり、球麻痺といって重篤な呼吸麻痺などを起こします。エンテロウイルス感染症の特徴は感染しても症状が出ない『不顕性感染』が多いのですが、ポリオも感染した人の90~95%は不顕性感染です。4~8%に感染して1~2日後に発熱、咽頭痛、悪心、嘔吐、下痢などの症状が出ます。1~5%にそのあとに髄膜炎が起こります。典型的なポリオを発病するのはポリオウイルス感染症の0,1~0.2%なのです。だから、ポリオの患者さんが多発するということは、感染者はその数百倍いるということで、本当に大流行だということを示唆しています。

目下、世界で流行しているのは、1型と3型で2型の流行はないとされています。日本では1971年に3型、1980年に1型の患者発生を最後にして以後患者発生をみていません。日本では1960年に北海道をはじめとしてポリオの流行を経験しました。流行を抑えるために、外国から生ワクチンを緊急輸入をして流行を抑える経験をしています。1964年から国産の生ワクチンが製造されて投与されて今日に至っています。当初から、生ワクチンの使用では少数ながらワクチンウイルスによるポリオ麻痺患者の発生は懸念されていましたし、実際に発生が報告されました。患者発生数が多い時代には、流行阻止、抑制効果の大きいことにメリットがありました。次第に、流行が局地化されてきましたし、その規模も小さくなったいるのはワクチンによるところが大なのです。でも、現在でもインド及び周辺国、中央アフリカなどで流行がみられています。このような国からの人や物の移動はありますので、若し、集団として免疫を持っていないとそのような地域での流行が起こっていることは、最近ではタジスキタンで流行をみていることからも明らかです。患者発生がない国や地域でもワクチン接種がやめられないのです。日本も同様で、ワクチン接種が継続されているのです。ワクチンにはウイルスを弱毒した生ワクチンとウイルスを殺した不活化ワクチンとがあります。ワクチン接種で接種された人に免疫をつくるのですが、免疫には感染する局所に免疫を持たせる、局所免疫と言いますが、局所でウイルスの増殖を抑える効果と、よしんばウイルスが増えて血液中に入った場合に抗体があればウイルスの働きを抑えることができて麻痺は起こりません。この双方の効果を持っているのが生ワクチンです。ウイルスを殺した不活化ワクチンには血液中のウイルスを殺す抗体を作らせることはできますが、局所免疫を誘導する効果は弱いのです。平時は病気を起こすウイルスが殆どなくなり、生ワクチンウイルスもなくなった地域では不活化ワクチンで血液中に抗体を持っていれば好いだろうと考えられます。病毒性の強いウイルスがまだ存在する地域では生ワクチンの方がメリットがあると考えられます。日本は、前者に属するであろうことは明白です。少し書きましたが、生ワクチンにはワクチン自体に問題があり、患者発生がなくなるとワクチンの持っている問題がよりクローズアップしてくるのです。この文章は少し長くなりすぎたので、改めて別項にして書こうと思います。