蓮實重彦の「見るレッスン 映画史特別講義」を読んだ! | とんとん・にっき

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蓮實重彦の「見るレッスン 映画史特別講義」(光文社新書:2020年12月30日第1刷発行)を読みました。

 

ウィキペディアによると、蓮實重彦は以下のようにあります。

蓮實 重彥(はすみ しげひこ、1936年(昭和11年)4月29日 - )は、日本の文芸・映画評論家、フランス文学者、小説家。専攻は表象文化論。東京大学文学部仏語仏文科を卒業後、同大学院を経て、パリ大学で博士号を得る。第26代東京大学総長(1997年-2001年)。父は美術史学者・蓮實重康。身長182cm。

 

他人の好みは

気にするな、

勝手に見やがれ!
誰よりも映画を愛する教授が初めて新書で授業

映画史におののく必要はない、

ただし見るからには本気で見よ
まず読者の皆様にお伝えしたいのは、世間で評判になっている映画だけを見るのではなく、評判であろうとなかろうと、自分にふさわしいものを自分で見つけてほしいということです。とにかく、ごく普通に映画を見ていただきたい。蓮實個人の視点など学ばれるにはおよびません。もっぱら自分の好きな作品だけを見つけるために、映画を見てほしい。(「はじめに」より)

見る上で重要なのは、

異質なものに晒され、葛藤すること
映画は自分の好きなものを、他人の視点など気にせず自由に見ればいい。ただし優れた映画には必ずハッとする瞬間があり、それを逃してはならない。映画が分かるということは安心感をもたらすが、そこで満足するのではなく、その安心を崩す一瞬にまずは驚かなければならない。そして、驚きだけを求めてはいけないし、安心ばかりしているのも否。その塩梅は、画面と向き合う孤独というものを体験することのみで得られる。どのような瞬間に目を見開き、驚くべきかは実際にある程度分かるものであり、その会得のために見ることのレッスンは存在する。サイレント、ドキュメンタリー、ヌーベル・バーグ、そして現代まで120年を超える歴史を、シネマの生き字引が初めて新書で案内。

 

ジャン=リュック・ゴダール監督とジャン=ポール・ベルモンド主演の「勝手にしやがれ」を観たときに、以下のように書きました。

たまたま購入したばかりの蓮實重彦の「見るレッスン 映画史特別講義」(光文社新書:2020年12月30日初版)には、以下のようにありました。

「勝手にしやがれ」はとにかくわたくしは笑い転げました。当時、フランス留学の準備のために通っていた日仏学院で夕方の授業を受けた後、最終回の上映に東大の先輩と一緒に行き、他の観客は誰も笑ってないのに、彼とわたくしだけで異様に盛り上がった記憶があります。これはまさしく自分と同じことを考えている男が作った映画だ、といううぬぼれもありました。まず、ハンフリー・ボガードのポスターの前でジャン・ポール・ベルモンドがポーズを決めているシーンから、ゴダールはアメリカ映画が大好きな人だとすぐに分かった。ハリウッドが持っている作法を十分心得たうえで、それを意図的に壊していく人だとも感じました。

 

目次

はじめに 安心と驚き

第一講 現代ハリウッドの希望

第二講 日本映画 第三の黄金期

第三講 映画の誕生

第四講 映画はドキュメンタリーから始まった

‎第5回 ‎ヌーベル・バーグとは何だったか?

第六講 映画の裏方たち

第七講 映画とはなにか

あとがき

 

かなりの変人らしく、「伯爵夫人」が三島賞に選ばれた時には、ひと悶着あり、大きく新聞を賑わしました。下のその時の様子を挙げておきます。

またこの本の「あとがき」で「新書」というものだけは書くまいと、長らく思っていた。大学院時代にふと買ってしまった丸山真男の「日本の思想」があまりの趣味の悪さに嫌気がさしたことが、トラウマになっていたという。新書と言えば岩波の「日本の思想」でしょう。にもかかわらず、「見るレッスン」を新書で出版することになってしまった。事情はいくつかあるが、しかし、もう二度と新書を書くまいという姿勢だけは変わることがない。と、述べています。この人がフローベルを訳して日本に紹介したり、東大総長だったというから、ホント面白いですね。

 


蓮實重彥:
1936年東京生れ。映画評論家、フランス文学者。'60、東京大学文学部仏文学科卒業。'65年パリ大学大学院より博士号取得。東京大学教養学部教授を経て、東京大学第26代総長。映画雑誌「リュミエール」の創刊編集長も務める。'77年『反=日本語論』で読売文学賞、'83年『監督 小津安二郎』(仏訳)で映画書翻訳最高賞、'89年『凡庸な芸術家の肖像』で芸術選奨文部大臣賞、'16年『伯爵夫人』で三島由紀夫賞をそれぞれ受賞。'99年、フランス政府「芸術文化勲章」を受章。著書は『夏目漱石論』『表層批評宣言』『映画論講義』『「ボヴァリー夫人」論』など。

 

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