さて、今年は丑年です。
牛にまつわる展示がたくさん出ていました。
展覧会の構成は、以下の通りです。
第1章 牛にまつわる信仰史
第2章 牛と共同した暮らし
第3章 牛車と王朝の様式美
第4章 描写された牛の姿形
*以下の画像は順不同です。
もう一つの目玉
本館2階 7室 屏風と襖絵―安土桃山・江戸
伊藤若冲「松梅群鶏図屏風」
18世紀に京都で活躍した伊藤若冲は、自分の庭で飼っていた鶏をつぶさに写生し、多くの鶏図を描いたことで知られています。松や梅とともに、鶏を描いたおめでたい画題である本作でも、正面向きや後ろ向き、立ったり座ったりなど、さまざまな姿態の鶏を表情豊かに描き分けています。左隻には小さなひよこも描かれています。色彩も多少入れていますが、墨の濃淡や滲み、ぼかし、擦れといったバリエーションにとんだ表現を使い分けているのがわかります。工房作も含めての検討がなされていますが、ここでは、さまざまな鶏の表現をお楽しみください。
本館2階 10室 浮世絵と衣装―江戸
「博物館に初もうで」
ウシにひかれてトーハクまいり
あけましておめでとうございます。令和3年は丑年です。牛は古くから人の生活を支え続けてきた身近な存在でした。本特集展示にならぶ多彩な<描写された牛の姿形>には、そんな牛に対する人びとのさまざまな想いが反映されています。
牛に聖性をみる古代インドの信仰は、東アジアにまで広がり、ときには神の乗り物や、仏教における悟りの象徴ともみなされました。ここように<牛にまつわる信仰史>は多様ですが、その背景には、日常における<牛と共同した暮らし>がありました。力強く従順な牛は、重要な労働力として輸送や農耕に活躍していたのです。さらに平安時代には、貴族の乗り物、牛車が登場します。華やかな<牛車と王朝の様式美>は、現代にいたるまで長く憧憬の対象となりました。
なお本展のタイトルは、「牛に引かれて善光寺参り」という諺をもとにしたもの。「身近に起こった出来事に導かれて、思いがけない縁が結ばれること」のたとえです。新型ウイルス感染拡大防止のため、さまざまな対策をとらなければならない今だからこそ、展示作品との思いがけない出会いを通して、改めてトーハク(東京国立博物館)と縁を結んでいただきたい。そんな想いを込めました。本展が、今後の新たな日常を支えていく、ささやかなきっかけとなれば幸いです。
東京国立博物館ホームページ